日本株は現在、上場株式について100株を1単元とするのが基本です。
そのため、100株未満しか持っていない株主は株主ではないように感じるかもしれません。
しかし、1株しか保有していなくても株主であることに変わりはありません。
重要なのは、株主が持つ権利には種類があり、すべての権利が100株を基準にしているわけではないということです。
代表的なのが配当を受け取る権利と株主総会で議決権を行使する権利です。
単元未満株主は原則として株主総会で議決権を行使できません。
一方、配当については原則として保有株数に応じて受け取れます。
この違いを理解すると、単元株制度が撤廃されて1株投資が広がった場合に何が変わるのかも見えてきます。
配当金とは何か
配当金とは、企業が得た利益などの一部を株主へ分配するものです。
たとえば企業が1株あたり年間100円の配当を実施するとします。
100株持っている株主なら、
100円掛ける100株
で1万円です。
1000株なら10万円です。
そして1株だけ持っている株主なら100円です。
基本的には保有する株式数に応じて受け取る金額が決まります。
1株株主でも配当を受け取れる
100株未満の株式を単元未満株といいます。
たとえば100株を1単元とする会社の株式を1株、10株、99株保有している場合です。
単元未満株であっても、その株式そのものがなくなるわけではありません。
株主として保有している株式です。
そのため会社が配当を実施すれば、原則として保有株数に応じた配当を受け取れます。
1株あたり50円の配当なら、
1株なら50円
10株なら500円
99株なら4950円
となります。
100株に到達しなければ配当がゼロになるという仕組みではありません。
なぜ議決権は使えないのか
一方、議決権については扱いが異なります。
現在の単元株制度では、100株を1単元とする会社なら原則として1単元につき1個の議決権があります。
そのため99株しか持っていない株主は1単元に達していません。
原則として株主総会で議決権を行使できません。
100株になれば1個の議決権です。
200株なら2個です。
300株なら3個です。
つまり現在は、
配当は1株単位
議決権は原則として1単元単位
という違いがあります。
配当権と議決権は別の権利
株主になると複数の権利を持ちます。
その中でも配当を受け取る権利は経済的な利益に関する権利です。
一方、議決権は会社経営に関する意思決定へ参加する権利です。
たとえば取締役の選任議案について賛成か反対かを示すのが議決権です。
同じ株式から生じる権利でも、制度上の扱いは同じではありません。
単元未満株主が配当を受け取れる一方、原則として議決権を行使できないのはこのためです。
99株と100株では何が違うのか
100株を1単元とする会社を考えてみます。
1株あたり年間100円の配当があるとします。
99株保有していれば配当は9900円です。
100株保有していれば配当は1万円です。
配当については、1株増えた分だけ100円増えるという連続的な関係です。
ところが議決権では大きな違いが生じます。
99株では原則として議決権はありません。
100株になると1個の議決権を持ちます。
99株から100株へ1株増えただけですが、株主総会での権利には大きな変化が生じるわけです。
これが単元株制度の特徴です。
株主優待とも扱いが違う
配当と混同しやすいものに株主優待があります。
株主優待では企業が独自に、
100株以上
500株以上
1000株以上
などの条件を設定している場合があります。
そのため1株株主が配当を受け取れても、株主優待は受けられないことがあります。
たとえば1株あたり100円の配当を出し、100株以上の株主に1000円分の優待券を提供する会社なら、1株株主は100円の配当を受け取れます。
しかし100株に達していないため、株主優待の対象にはならないということが起こります。
配当、議決権、株主優待はそれぞれ別に考える必要があります。
単元株制度がなくなると何が変わるのか
今後、単元株制度が撤廃された場合、最も大きな変化の一つは議決権の制度です。
現在は100株を1単元として議決権を付与しています。
単元株制度をなくすのであれば、議決権をどの単位で認めるのかを改めて設計する必要があります。
仮に1株につき1個の議決権を認める仕組みになれば、1株株主も株主総会で議決権を行使できることになります。
現在は、
1株保有では配当を受け取れるが原則として議決権はない
という株主が存在します。
制度変更後は、
1株保有で配当を受け取り議決権も持つ
という形になる可能性があります。
ただし、実際の制度設計は今後の議論によります。
1株株主が増えても配当額は株数に比例する
単元株制度が撤廃されれば、1株や数株だけ持つ株主が大幅に増える可能性があります。
ここで企業が支払う配当総額について考えてみます。
100株を1人が持っている場合と、1株ずつ100人が持っている場合を比べます。
1株あたり100円の配当なら、どちらも会社が支払う配当総額は1万円です。
100株掛ける100円だからです。
株主数が増えたからといって、同じ100株に対する配当総額が増えるわけではありません。
この点は株主優待と大きく異なります。
配当は1株投資と相性がよい
株主優待では、株主1人につき1000円の商品券を提供するといった制度があります。
100株を1人が持つ場合なら優待は1人分です。
ところが1株ずつ100人が持ち、その全員を優待対象にすれば100人分の優待費用が必要になります。
一方、配当は保有株数に応じて支払われます。
株主が細分化されても、発行済み株式数が同じなら配当総額が株主数だけを理由に増えるわけではありません。
そのため1株投資が広がる時代には、株主数に左右されやすい株主優待よりも、株数に比例する配当のほうが制度上扱いやすい面があります。
ただし株主管理の負担は増える
配当総額が変わらなくても、企業側の事務負担まで同じとは限りません。
100株を1人が保有する場合と、1株ずつ100人が保有する場合では株主数が違います。
株主名簿の管理や配当関係の事務などでは、株主数の増加による負担が生じます。
そのため単元株制度を撤廃するには、配当の仕組みだけでなく株主管理全体をデジタル化して効率化することが重要になります。
株主総会資料の電子化が単元株制度の見直しと一緒に議論される理由の一つです。
少額でも企業の利益還元を受けられる
1株から投資できることの意味は、株式を安く買えることだけではありません。
1株でも企業の利益還元に参加できます。
たとえば1株5000円、年間配当200円の会社なら、5000円程度の投資から年間200円の配当を受け取ることができます。
もちろん配当は保証されておらず、企業の業績や経営判断によって減配や無配になることもあります。
それでも、まとまった資金がなければ企業の株主になれない仕組みから、少額でも企業の利益還元を受けられる仕組みへ変わることには大きな意味があります。
結論
配当金は、原則として1株しか持っていない株主でも受け取ることができます。
現在の日本株では100株を1単元とするのが基本ですが、100株未満の単元未満株であっても株式であることに変わりはありません。
会社が配当を実施すれば、保有株数に応じて配当を受け取れます。
一方、議決権については扱いが異なります。
100株を1単元とする会社なら、99株を持っていても原則として株主総会で議決権を行使できません。
100株になって初めて1個の議決権を持つことになります。
つまり現在は、配当は1株単位、議決権は原則として1単元単位という違いがあります。
単元株制度が撤廃されれば、1株株主にも議決権をどのように認めるのかという新しい制度設計が必要になります。
1株投資が広がることは、単に少ない資金で株価の値上がりを狙えるようになることではありません。
少額の資金でも企業の株主となり、その企業が生み出した利益の分配を受けられる人が増えることでもあるのです。
参考
日本経済新聞 2026年8月25日 朝刊 総会資料の書面交付を廃止 企業の負担軽く
日本経済新聞 2026年8月25日 朝刊 総会デジタル化、少額投資後押し