株式投資には、1つの銘柄に資金を集中させるより、複数の銘柄へ分散したほうが特定企業の影響を抑えやすいという考え方があります。
これが分散投資です。
ところが現在の日本株では、個別株で分散投資をしようとするとまとまった資金が必要になる場合があります。
原則として100株単位で売買するからです。
株価1万円なら、1銘柄を買うだけで約100万円必要です。
同じような株価の5社へ投資しようとすれば、単純計算では約500万円になります。
単元株制度が撤廃され、1株から通常の市場で購入できるようになれば、この状況は大きく変わります。
数万円、数10万円といった資金でも、複数の企業へ少しずつ投資しやすくなるからです。
少額分散投資とは何か
少額分散投資とは、限られた投資資金を1つの投資先へ集中させず、複数の資産や銘柄へ少しずつ振り分ける考え方です。
たとえば10万円の投資資金があるとします。
10万円を1社だけに投資するのではなく、
2万円ずつ5社
1万円ずつ10社
といった形で分散します。
実際には株価が異なるため、きれいに同じ金額へ分けられるとは限りません。
重要なのは、少ない資金でも複数の投資先を持つという考え方です。
なぜ分散投資をするのか
個別企業の株価は、その会社固有の事情によって大きく動くことがあります。
業績悪化
不祥事
主力商品の販売不振
競争環境の変化
災害
経営戦略の失敗
などです。
1社だけに投資していれば、その会社の株価が大幅に下落したとき、投資資産全体が大きな影響を受けます。
複数の企業へ投資していれば、1社の値下がりが資産全体に与える影響を小さくできます。
もちろん分散すれば損失がなくなるわけではありません。
市場全体が下落すれば、複数の銘柄が同時に値下がりすることもあります。
それでも特定企業だけに依存するリスクを抑えることには意味があります。
100株投資では資金が集中しやすい
現在の日本株で個別株を分散しようとすると、100株単位という壁があります。
株価5000円の会社なら最低投資額は、
5000円掛ける100株
で約50万円です。
投資資金が100万円なら、この会社を1単元購入するだけで資金の半分を使います。
同じ程度の株価の会社なら2社程度しか購入できません。
株価1万円なら約100万円必要なので、投資資金100万円をほぼ1社へ投入することになります。
投資家が分散したくても、売買単位が大きいため結果的に資金が一部の銘柄へ集中しやすくなるわけです。
1株からなら複数企業を買いやすい
単元株制度が撤廃され、1株から通常の市場で購入できるようになった場合を考えてみます。
株価5000円なら約5000円から投資できます。
10万円の資金があれば、単純計算では株価5000円の異なる企業を20社、1株ずつ購入することも可能になります。
現在なら同じ株価の会社を100株買うだけで約50万円必要です。
1株単位になれば、投資資金を非常に細かく配分できます。
少額投資と分散投資を同時に実現しやすくなることが、1株投資の大きな特徴です。
100万円を5社へ分散するとどう違うのか
具体的に考えてみましょう。
株価がそれぞれ、
A社 1万円
B社 8000円
C社 5000円
D社 3000円
E社 2000円
だったとします。
現在の100株単位なら最低投資額は、
A社 約100万円
B社 約80万円
C社 約50万円
D社 約30万円
E社 約20万円
です。
5社すべてを100株ずつ購入するには約280万円必要です。
投資資金が100万円なら、5社すべてを通常の単元で購入することはできません。
ところが1株単位なら、5社を1株ずつ購入するために必要な資金は合計約2万8000円です。
残りの資金を使って、それぞれの企業を少しずつ買い増すこともできます。
投資金額の調整もしやすくなる
1株投資のメリットは、単に多くの銘柄を買えることだけではありません。
銘柄ごとの投資金額を細かく調整できます。
たとえば100株単位では、株価5000円の会社への投資額は約50万円ずつ増えていきます。
100株なら約50万円です。
200株なら約100万円です。
300株なら約150万円です。
50万円刻みでしか投資額を増やせません。
1株単位なら約5000円刻みで調整できます。
将来性を高く評価する会社には10株、少しだけ投資したい会社には1株というような配分もしやすくなります。
業種を分けることもできる
分散投資では、単に銘柄数を増やせばよいわけではありません。
同じ業種の企業ばかり持っていれば、共通する要因によって一斉に株価が下がる可能性があります。
たとえば銀行株だけを10社持っていても、金利や金融規制などの影響を同時に受ける場合があります。
そこで、
製造業
金融
通信
小売り
医薬品
情報通信
など異なる業種へ資金を振り分ける方法があります。
1株から購入できれば、少ない資金でも複数の業種へ投資しやすくなります。
毎月少しずつ分散する方法も取りやすい
1株投資は積み立てとの相性も良い仕組みです。
毎月3万円を個別株へ投資するとします。
100株単位では、最低投資額が30万円の会社なら10カ月分の資金を貯めなければ1単元購入できません。
1株単位なら、毎月の3万円を使って複数企業の株式を少しずつ購入できます。
今月はA社とB社、翌月はC社とD社という方法もあります。
あるいは複数銘柄を毎月少しずつ買い増すこともできます。
資金が100株分貯まるまで待つ必要がなくなります。
ETFとの違いは何か
少額で分散投資する方法は、1株投資だけではありません。
代表的なのがETFです。
ETFは株価指数などへの連動を目指す上場投資信託です。
たとえば幅広い日本株を対象とするETFを購入すれば、1つの商品を通じて多数の企業へ間接的に分散投資できます。
これは非常に効率的な方法です。
一方、1株ずつ個別株を買う場合は、自分で投資する企業を選べます。
特定の会社を多めに持つ
投資したくない会社を外す
業種ごとの比率を自分で決める
といったことができます。
ETFは商品そのものに分散を任せる方法、1株投資は自分で分散の中身を設計する方法と考えると分かりやすいでしょう。
1株投資ならETFが不要になるわけではない
1株から個別株を購入できるようになっても、ETFのメリットがなくなるわけではありません。
個別株を数10社選び、それぞれの決算や経営状況を確認するには時間がかかります。
ETFなら1つの商品を保有するだけで、多数の銘柄へ分散できます。
投資初心者にとっても管理しやすい方法です。
一方、自分で企業を研究して投資したい人にとっては、1株投資によって個別株でも分散しやすくなります。
投資家が自分に合った方法を選べるようになることに意味があります。
NISAとの組み合わせでも自由度が高まる
1株投資はNISAとも相性があります。
NISAの成長投資枠で個別株へ投資する場合、100株単位では1銘柄を購入しただけで投資枠の大部分を使うことがあります。
1株単位なら、投資枠を細かく複数銘柄へ振り分けられます。
少額で複数企業へ投資し、長期間保有するという方法を取りやすくなります。
NISAが税制面から長期的な資産形成を支援し、1株投資が最低投資額の面から分散投資を支援する関係になります。
単元株撤廃は資産形成の選択肢を増やす
単元株制度の撤廃は、単に高額株を安く買えるようにする改革ではありません。
投資家が資金をどのように配分するかという自由度にも影響します。
100万円を1社へ投資するしかなかった人が、
10社へ10万円程度ずつ
20社へ5万円程度ずつ
といった考え方を取りやすくなります。
実際には株価が異なるため完全に均等にはなりませんが、100株単位よりはるかに細かな調整が可能になります。
個別株投資でも、自分自身で小さなポートフォリオを作りやすくなるわけです。
結論
少額分散投資とは、限られた投資資金を1つの銘柄へ集中させず、複数の企業や資産へ少しずつ振り分ける考え方です。
現在の日本株では原則として100株単位で売買するため、個別株で分散投資をするにはまとまった資金が必要になる場合があります。
株価5000円なら1銘柄約50万円です。
株価1万円なら約100万円です。
投資資金が少なければ、分散したくても1社や2社へ資金が集中することがあります。
単元株制度が撤廃されて1株から購入できるようになれば、株価5000円なら約5000円から投資できます。
少額の資金でも複数企業へ投資し、業種を分けたり、銘柄ごとの投資額を細かく調整したりしやすくなります。
ETFを利用すれば現在でも幅広い分散投資はできます。
しかし1株投資が広がれば、個別株でも自分で企業を選びながら分散する選択肢が広がります。
100株を買えるだけの資金を貯めてから投資する市場から、毎月の余裕資金で1株ずつ複数企業のオーナーになれる市場へ変わる。
単元株制度の撤廃は、日本株における少額投資だけでなく、個人の分散投資のあり方まで変える可能性があるのです。
参考
日本経済新聞 2026年8月25日 朝刊 総会資料の書面交付を廃止 企業の負担軽く
日本経済新聞 2026年8月25日 朝刊 総会デジタル化、少額投資後押し