日本株はなぜ米国株より最低投資額が高いのか 100株単位と1株単位の違い編

経営

日本株と米国株では、同じような株価の企業でも投資を始めるために必要な金額が大きく違うことがあります。

その最大の理由の一つが、株式の売買単位です。

日本の上場株式は原則として100株を1単元として取引します。

一方、米国株では1株単位で取引することが一般的です。

たとえば株価が5000円の日本企業なら、通常の最低投資額は約50万円です。

これに対して1株単位なら、同じ株価であれば約5000円から投資できます。

つまり問題は株価そのものだけではありません。

株価に何株を掛けなければ投資できないのかという市場の仕組みが、最低投資額を大きく左右しています。

日本株には単元株制度がある

日本の上場株式では、100株を1単元とする仕組みが基本になっています。

単元とは、株式を一定数まとめて扱う単位です。

100株を1単元とする会社なら、通常の市場取引では100株、200株、300株という単位で売買します。

そのため最低投資額は、

株価掛ける100株

で考えることになります。

株価1000円なら約10万円です。

株価5000円なら約50万円です。

株価1万円なら約100万円です。

株価が高くなるほど、個人投資家が準備しなければならない金額も大きくなります。

米国株は1株単位で買える

米国市場では、1株単位で株式を取引することが一般的です。

そのため株価が200ドルなら、基本的には200ドル程度から1株を購入できます。

日本株のように、

200ドル掛ける100株

として2万ドルを準備する必要はありません。

元の記事では、米国市場ではエヌビディアの株式でも200ドル台、日本円にして約3万2000円から取引できる例が紹介されています。

世界的な巨大企業であっても、数万円程度から株主になれるわけです。

同じ株価でも必要資金は100倍違う

日本と米国の違いを分かりやすくするため、同じ株価だと仮定して考えてみます。

1株5000円相当の株式があるとします。

日本の100株単位なら、

5000円掛ける100株

で約50万円です。

1株単位なら約5000円です。

企業そのものの価値が違うから100倍の差が生じているわけではありません。

売買単位が、

100株なのか

1株なのか

という違いだけで、最低投資額に100倍の差が生まれます。

株価と最低投資額は同じではない

日本株を見るときに注意したいのが、株価と最低投資額を混同しないことです。

ニュースなどで株価1万円と表示されていても、通常の市場取引で1万円だけ用意すればその会社の株主になれるわけではありません。

100株単位なら約100万円必要です。

つまり日本株では、

株価は1株の値段

最低投資額は原則として株価掛ける100株

です。

一方、1株単位で取引する市場なら株価と最低投資額がほぼ一致します。

この分かりやすさも1株取引の特徴です。

日本にも単元未満株サービスはある

もっとも、日本でも証券会社によっては1株など100株未満から株式を購入できる単元未満株サービスがあります。

そのため、現在でも個人投資家が必ず100株分の資金を準備しなければ日本企業へ投資できないわけではありません。

ただし、これは市場全体の標準的な売買単位が1株になっていることとは違います。

取引方法や注文方法、手数料体系、約定の仕組みなどが通常の100株取引と異なる場合があります。

単元株制度を撤廃する議論は、一部の証券会社が1株投資サービスを提供するという話ではありません。

日本株市場そのものを1株から投資しやすい仕組みに変えるという議論です。

日本企業は株式分割で対応してきた

100株単位を維持したまま最低投資額を下げる方法として、日本企業は株式分割を利用できます。

たとえば株価1万円の会社なら、最低投資額は約100万円です。

この会社が1株を10株に分割すれば、理論上の株価は約1000円になります。

100株購入するための金額は約10万円です。

100株制度そのものは変えていません。

1株あたりの株価を下げることで最低投資額を引き下げています。

NTTでは大規模な株式分割が行われた

個人投資家が購入しやすい価格にするため、大規模な株式分割を行う企業もあります。

NTTは2023年7月に1株を25株に分割しました。

これによって最低投資額が大幅に低下しました。

2026年3月末時点の個人株主は295万人となり、3年前から4倍超に増えています。

個人株主の増加にはさまざまな要因がありますが、最低投資額を引き下げることが投資家の裾野を広げる重要な手段であることが分かります。

それでも最低投資額が高い企業は残る

すべての企業が十分な株式分割を行っているわけではありません。

元の記事では、キーエンスの最低投資額が800万円台、ファーストリテイリングが700万円台にあると紹介されています。

これほどの金額になると、一般的な個人投資家が1銘柄へ投資するには大きな資金が必要です。

仮に投資資金が1000万円あっても、800万円を1社へ投資すれば資金の大部分がその企業に集中します。

最低投資額の高さは、株を買えるかどうかだけでなく、分散投資のしやすさにも影響します。

東証は50万円未満を求めてきた

東京証券取引所は、上場企業に対して最低投資額を50万円未満にするよう求めてきました。

さらに2025年4月には、個人投資家の間で10万円程度への引き下げを期待する声が多いとして、企業に対応を促しました。

背景には、個人が日本株へ投資しやすい市場をつくる狙いがあります。

NISAなどによって個人の資産形成を促しても、1銘柄を購入するために数100万円必要であれば投資できる人は限られます。

税制だけでなく、市場の投資単位も小さくする必要があります。

株式分割だけでは限界がある

株式分割は最低投資額を下げる有効な方法ですが、企業ごとの判断が必要です。

最低投資額が高くなった企業が必ず株式分割を行うとは限りません。

また、分割後に株価が上昇すれば最低投資額は再び高くなります。

企業はそのたびに株式分割を検討しなければなりません。

そこで、より根本的な方法として単元株制度そのものを撤廃する考え方が出てきます。

1株単位なら企業が分割しなくても買いやすい

仮に1株単位で通常の市場取引ができるようになれば、企業が株式分割をしなくても最低投資額を小さくできます。

株価1万円なら約1万円です。

株価5万円なら約5万円です。

株価10万円でも約10万円です。

株価が高くても100株をまとめて買う必要がありません。

企業が株式分割を繰り返さなくても、個人投資家は株価に近い金額から投資できるようになります。

米国株が身近になるほど日本株との違いが目立つ

個人投資家は日本株だけを投資対象にしているわけではありません。

証券会社を通じて米国株を購入することも一般的になっています。

さらに米国市場では取引時間を拡大する動きも進んでいます。

日本の個人投資家にとって米国株が買いやすくなれば、

米国企業には数万円で投資できる

日本企業には数10万円や数100万円必要

という違いがより意識されるようになります。

投資家にとって国境を越えた投資が容易になるほど、日本市場の制度も海外市場と比較されます。

日本市場の競争力にも関係する

単元株制度の問題は、個人投資家の利便性だけではありません。

日本株市場そのものの競争力にも関係します。

投資家にとって、

少額から投資できる

複数銘柄へ分散しやすい

投資金額を細かく調整できる

という市場は利用しやすい市場です。

海外株式へのアクセスが容易になるなか、日本市場だけ高い最低投資額が残れば、個人投資家の資金が海外へ向かう一因になる可能性があります。

単元株制度の見直しが市場改革として議論される理由です。

ただし1株取引には企業側の課題もある

1株単位にすれば、投資家にとっては便利になります。

しかし企業側には新しい負担が生じます。

少額で投資できれば株主数が大幅に増える可能性があるからです。

株主が増えれば、

株主名簿の管理

株主総会への対応

議決権の管理

配当関係の事務

株主への情報提供

などの負担も増えます。

だからこそ株主総会資料の電子化などによって、株主1人あたりの管理コストを下げる改革が同時に必要になります。

結論

日本株が米国株より最低投資額が高くなりやすい大きな理由は、株価そのものではなく売買単位の違いにあります。

日本の上場株式は原則として100株を1単元として取引します。

株価5000円なら約50万円、株価1万円なら約100万円必要です。

一方、米国株では1株単位の取引が一般的です。

同じ5000円相当の株価なら、1株単位では約5000円から投資できます。

日本企業は株式分割によって最低投資額を下げることができますが、企業ごとの対応には限界があります。

単元株制度そのものを撤廃すれば、企業が株式分割をしなくても1株から投資できる市場に近づきます。

海外株式を簡単に購入できる時代には、日本株だけを国内の制度の中で考えることはできません。

日本企業へ投資するために数100万円必要なのに、世界的な米国企業には数万円から投資できる。

この差が大きくなれば、個人投資家の資金がどの市場へ向かうかにも影響します。

100株単位から1株単位への見直しは、日本株を安く買えるようにするだけの改革ではありません。

世界の株式市場の中で、日本市場を個人投資家に選ばれる市場にできるかという競争力の問題でもあるのです。

参考

日本経済新聞 2026年8月25日 朝刊 総会資料の書面交付を廃止 企業の負担軽く

日本経済新聞 2026年8月25日 朝刊 総会デジタル化、少額投資後押し

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