生成AIの活用は、民間企業だけでなく行政機関にも急速に広がっています。しかし、行政では個人情報や機密情報を扱うことが多いため、一般向けの生成AIサービスをそのまま利用することはできません。
そこでデジタル庁が整備を進めているのが、政府職員向けの生成AI利用環境「ガバメントAI源内(げんない)」です。国税庁も、この「源内」を基に税務業務に適した独自の生成AI環境を構築する方針を示しています。
今回は、ガバメントAI源内とはどのような仕組みなのか、その役割や特徴について解説します。
デジタル庁の取り組み
デジタル庁は、行政DX(デジタルトランスフォーメーション)の推進を担う組織として、行政サービスの効率化や利便性向上を進めています。
その一環として整備されているのが、政府職員が安全に生成AIを利用できる共通基盤である「ガバメントAI源内」です。
各省庁が個別に生成AI環境を構築すると、
- 開発コストが増える
- セキュリティ基準が統一されない
- 運用方法がばらつく
といった課題が生じます。
共通基盤を整備することで、政府全体で一定水準の安全性や利便性を確保しながら生成AIを活用できるようになります。
このような政府共通基盤の整備は、行政全体のデジタル化を効率的に進めるうえで重要な取り組みといえます。
利用対象
ガバメントAI源内は、一般の利用者向けサービスではありません。
利用対象は政府職員であり、行政業務を支援するためのツールとして整備されています。
例えば、
- 文書の要約
- 資料作成の補助
- 情報整理
- 法令や通知の検索支援
- 業務マニュアルの活用
など、日常業務の効率化が期待されています。
一方で、国税庁のように高度な機密情報を扱う組織では、共通基盤だけでは十分ではありません。
税務情報には厳格な管理が求められるため、国税庁はガバメントAI源内を基に、税務業務専用の独自環境を整備し、安全性をさらに高めたうえで利用する予定です。
このように、政府共通基盤と各省庁独自の環境を組み合わせることで、それぞれの業務に適したAI活用が進められています。
セキュリティ対策
行政が生成AIを利用するうえで最も重要なのが情報セキュリティです。
行政機関では、
- 個人情報
- 税務情報
- 企業情報
- 国家機密
など、多くの重要情報を扱っています。
そのため、一般向けの生成AIサービスのように入力データが学習に利用されたり、外部へ送信されたりする仕組みでは、大きなリスクが生じます。
ガバメントAI源内では、政府が求めるセキュリティ基準を満たした環境で運用されることを前提としており、安全性を確保しながら生成AIを利用できるよう設計されています。
また、各省庁では利用ルールの整備や職員への教育も進められており、AIを適切に活用するためのガバナンス体制も重視されています。
行政サービスへの活用も期待される
現在の主な利用対象は政府職員ですが、将来的には行政サービスへの活用も期待されています。
例えば、
- 国民からの問い合わせ対応
- 制度案内
- 手続きのサポート
- 行政情報の検索支援
などに生成AIを活用することで、より分かりやすく迅速な情報提供が可能になるでしょう。
国税庁でも、ホームページの情報を基に回答する生成AIチャットボットの導入を検討しています。
これにより、日常的な言葉や曖昧な表現でも質問しやすくなり、従来より利用しやすい税務相談環境の実現が期待されています。
行政に求められるAI活用とは
行政におけるAI活用では、効率化だけでなく、公平性や説明責任も欠かせません。
AIが作成した文章や回答をそのまま採用するのではなく、内容を職員が確認し、必要に応じて修正することが重要です。
また、AIには誤った情報を生成する可能性もあるため、最終的な責任は人が負うという考え方が基本となります。
今後、行政で生成AIの活用が広がるにつれて、技術の進歩と適切な運用ルールの整備を両立させることが、国民から信頼される行政サービスにつながるでしょう。
結論
ガバメントAI源内は、デジタル庁が整備を進める政府職員向けの共通生成AI基盤です。各省庁が安全な環境で生成AIを利用できるようにすることで、文書作成や情報整理などの業務効率化を支える役割を担っています。
国税庁では、この共通基盤を基に税務業務専用の独自環境を構築し、AIの活用を進める方針です。行政における生成AIは、効率化だけでなく、情報セキュリティや説明責任を確保しながら活用することが重要であり、今後の行政DXを支える重要な技術となるでしょう。
参考
税のしるべ「国税庁におけるAIの活用を公表、9月にKSK2の導入で予測モデルの精度が向上へ」2026年8月3日
国税庁「国税庁におけるAIの活用」2026年7月27日
デジタル庁 ガバメントAIに関する公表資料