生成AIは、質問や指示の与え方によって回答の質が大きく変わります。同じAIを使っても、曖昧な指示では期待した結果は得られず、具体的で分かりやすい指示を与えることで、実務でそのまま活用できるレベルの成果物を得ることができます。
この「生成AIへ適切な指示を与える技術」がプロンプトエンジニアリングです。
近年では経理、総務、人事などのバックオフィス業務でも生成AIの利用が進んでいます。しかし、生成AIを十分に活用できるかどうかは、AIの性能だけでなく、利用者がどのようなプロンプトを作成できるかに大きく左右されます。
本記事では、プロンプトエンジニアリングの基本から、実務で役立つ4つの要素、よくある失敗例まで解説します。
プロンプトエンジニアリングとは
プロンプトとは、生成AIへ入力する「指示文」のことです。
そしてプロンプトエンジニアリングとは、生成AIから目的に合った回答を引き出すために、指示内容を工夫・設計する技術を指します。
難しいプログラミングや専門知識は必ずしも必要ではありません。
重要なのは、人へ仕事を依頼するときと同じように、「何を」「なぜ」「どのように」してほしいのかを具体的に伝えることです。
生成AIは曖昧な指示には曖昧な回答を返しやすく、具体的な指示には具体的な回答を返す傾向があります。
良いプロンプトの基本
良いプロンプトには共通点があります。
まず、目的が明確であることです。
例えば、
「経費精算を確認してください」
という指示よりも、
「金額が突出している経費や休日に利用された経費を抽出してください」
と指示した方が、生成AIは求められている内容を理解しやすくなります。
また、出力結果も指定すると効果的です。
例えば、
- 表形式
- 箇条書き
- Excelへ貼り付けられる形式
などを指定すると、そのまま実務で利用しやすい回答になります。
プロンプトを構成する4つの要素
資料では、最低限次の4項目を盛り込むことが推奨されています。
依頼事項
生成AIへ何をしてほしいのかを明確に記載します。
例えば、
- 異常なデータを抽出する
- 集計する
- 分類する
- コメントを作成する
などです。
目的が曖昧だと回答も曖昧になります。
背景
なぜその作業を行うのかを説明します。
例えば、
「月次決算レビューに利用する」
「締切遅延を減らしたい」
など背景を説明することで、生成AIは利用場面を理解しやすくなります。
制約条件
回答に守ってほしいルールを指定します。
例えば、
- 丁寧な文章
- 堅すぎない表現
- 判断できないものは「要確認」
などを指定できます。
出力形式
最後に結果の形式を指定します。
例えば、
- 表形式
- 箇条書き
- Excelファイル
などを指定すれば、そのまま業務へ利用しやすい回答になります。
マークダウン形式を活用する
資料では、プロンプトをマークダウン形式で整理することも推奨しています。
見出しや箇条書きを使って整理すると、生成AIが情報を認識しやすくなります。
例えば、
- 依頼事項
- 背景
- 制約条件
- 出力形式
という見出しを付けるだけでも、回答の質が安定しやすくなります。
プロンプトは対話しながら改善する
プロンプトは最初から完璧である必要はありません。
資料でも、一度で理想的な回答を得ることは難しく、AIと何度か対話しながら改善していくことが紹介されています。
例えば、
- もっと詳しく説明してください
- この条件を追加してください
- 表形式にしてください
- この部分は除外してください
と追加で指示することで、徐々に目的に近づけることができます。
これは、人へ仕事を依頼するときに追加説明を行うこととよく似ています。
よくある失敗例
生成AIを十分に活用できないケースには共通点があります。
一つ目は、指示が短すぎることです。
「まとめてください」
だけでは、何を、どの程度、誰向けにまとめるのかが分かりません。
二つ目は、背景を伝えていないことです。
利用目的が分からなければ、生成AIは最適な回答を選びにくくなります。
三つ目は、出力形式を指定しないことです。
文章なのか表なのかが決まっていないため、後から手作業で修正する必要が生じます。
このような失敗を避けるためにも、4つの要素を意識したプロンプト作成が重要になります。
プロンプト作成は今後の重要スキル
生成AIの性能は今後さらに向上していきます。
しかし、高性能なAIであっても、曖昧な指示では十分な成果を得ることはできません。
そのため、生成AIを使いこなす能力として、プロンプトエンジニアリングは今後ますます重要になるでしょう。
特に経理業務では、
- 経費精算チェック
- 月次決算
- 増減分析
- データ分類
- コメント作成
など、多くの業務で活用できる可能性があります。
結論
プロンプトエンジニアリングとは、生成AIから目的に合った回答を引き出すための指示文を設計する技術です。
実務では、「依頼事項」「背景」「制約条件」「出力形式」の4つを明確にすることで、回答の精度を大きく向上させることができます。
また、一度で完璧な回答を求めるのではなく、対話を重ねながら改善していく姿勢も重要です。
生成AI時代には、AIそのものを学ぶだけではなく、「AIへ適切に仕事を依頼する力」が、経理担当者をはじめとするビジネスパーソンの重要なスキルになっていくでしょう。
参考
- 『企業実務』2026年8月号「セミナーレポート すぐに使える!経理担当者のための『生成AI×Excel』最強時短術」