住宅手当はなぜ減少しているのか ジョブ型雇用時代の福利厚生編

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住宅手当は、かつて多くの企業で当たり前のように支給されていた福利厚生の一つです。しかし近年は、住宅手当を廃止したり、縮小したりする企業が増えています。

背景には、働き方や賃金制度の変化があります。年功序列から成果重視へ、メンバーシップ型雇用からジョブ型雇用へと人事制度が変わる中で、住まいに対する補助よりも、仕事内容や成果に応じた報酬を重視する企業が増えているためです。

今回は、住宅手当が減少している理由を、社宅制度との違いや人材確保との関係も交えながら解説します。

住宅手当とは何か

住宅手当とは、従業員の住居費負担を軽減するために会社が支給する手当です。

家賃の一部を補助する方式や、持ち家・賃貸を問わず一定額を支給する方式など、制度の内容は企業によって異なります。

高度経済成長期には都市部への人口集中が進み、住宅費が家計を大きく圧迫していました。そのため、多くの企業が福利厚生の一環として住宅手当を導入しました。

生活を支えることを目的とした手当は、日本独特の賃金制度の特徴でもあります。参考資料でも、日本では職務や習熟度とは直接関係しない要素を手当として支給することが特徴的な賃金体系であると説明されています。

社宅制度との違い

住宅支援には、住宅手当だけでなく社宅制度もあります。

住宅手当は現金で支給されるのに対し、社宅制度は会社が住宅を用意し、従業員が比較的安い負担で入居できる制度です。

企業にとっては、社宅制度の方が人材確保や転勤対応を進めやすいというメリットがあります。一方で、社宅の維持管理には多くのコストがかかるため、近年では借り上げ社宅制度へ移行する企業も増えています。

企業ごとに制度設計は異なりますが、住宅支援の方法は時代とともに変化しています。

基本給へ組み込む企業が増えている

住宅手当が減少している大きな理由の一つが、基本給への組み込みです。

従来は住宅手当や家族手当など複数の手当で給与を構成する企業が一般的でした。しかし現在は、シンプルで分かりやすい賃金制度へ見直す企業が増えています。

参考資料でも、かつて支給されていた物価手当は、その後基本給へ取り込まれていったことが紹介されています。手当は永続的な制度ではなく、役割を終えると基本給へ統合されることがあるのです。

住宅手当についても同様に、基本給へ一本化する企業が増えています。

ジョブ型雇用との関係

ジョブ型雇用では、仕事内容や責任の大きさに応じて給与を決めます。

そのため、住居費や家族構成など、個人の事情によって給与が変わる制度は、ジョブ型の考え方とは必ずしも一致しません。

同じ仕事をしている二人の社員でも、住宅手当の有無によって給与総額が異なると、「仕事ではなく生活事情によって賃金が決まる」という状況になります。

このため、職務給を重視する企業では住宅手当を縮小し、基本給で処遇する方向へ移行するケースが増えています。

人材確保のために住宅手当を維持する企業もある

一方で、住宅手当が完全になくなるわけではありません。

地方企業では都市部からの転職者を呼び込むため、また都市部では家賃負担の大きさを考慮して、住宅手当を採用競争力の一つとして維持している企業もあります。

特に若手社員は住居費の負担割合が高いため、住宅手当は実質的な賃上げとして評価されることがあります。

このように、住宅手当は単なる福利厚生ではなく、人材採用や定着を支える制度としても重要な役割を果たしています。

結論

住宅手当は、従業員の生活を支える代表的な福利厚生として発展してきました。

しかし、ジョブ型雇用の普及や賃金制度の見直しが進む中で、住宅手当を基本給へ組み込む企業が増えています。仕事内容を重視する賃金体系では、生活事情による給与差を小さくする考え方が広がっているためです。

その一方で、人材確保や若手支援の観点から住宅手当を維持・充実させる企業も少なくありません。今後は一律の制度ではなく、企業の経営戦略や人材戦略に応じて住宅支援の形がさらに多様化していくでしょう。

参考

企業実務 2026年8月号

「手当」を手当てするとき

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