第二次納税義務はどこまで負うのか 現に存する利益の考え方編

税理士
水色 シンプル イラスト ビジネス 解説 はてなブログアイキャッチのコピー - 1

第二次納税義務は、本来の納税者ではない人や法人に納税義務を負わせる制度です。そのため、適用範囲は厳格に解釈されなければなりません。

特に重要なのが、国税徴収法第39条に規定される「現に存する利益」という考え方です。

利益を受けたと形式的に見えても、その利益が現実には存在しなければ第二次納税義務は成立しません。この考え方は近年の公表裁決でも改めて確認されており、実務上も重要な論点となっています。

第二次納税義務の目的

第二次納税義務は、本来の納税義務者が財産を第三者へ移転した結果、税金を徴収できなくなることを防ぐ制度です。

例えば、滞納者が財産を無償で譲渡したり、債務を免除したりすると、財産だけが第三者へ移転し、国は税金を回収できなくなる可能性があります。

そこで、利益を受けた第三者にも一定の範囲で納税義務を負わせ、公平な徴税を実現しています。

「現に存する利益」とは何か

しかし、法律は第三者に無制限の責任を負わせているわけではありません。

国税徴収法第39条では、「現に存する利益」の限度で第二次納税義務を負うと定めています。

つまり、名目上いくら利益を受けたように見えても、その利益が現在存在しなければ納税義務は生じません。

この「現に存する利益」が制度全体の歯止めになっています。

名目上の利益と実際の利益は異なる

例えば、1億円の債務免除を受けたとしても、その免除された債権が実際には回収不能で価値がないものであれば、経済的利益は生じていないとも考えられます。

反対に、価値のある財産を無償で取得したのであれば、その利益は現実に存在すると評価されます。

税務では契約書や帳簿だけでなく、実際の経済的価値を重視する場面が少なくありません。

裁決が示した実質判断

近年の公表裁決では、求償債権の額面ではなく、その回収可能性を詳細に検討しました。

債務者には返済能力がほとんどなく、資産を換価しても弁済できない状況にあったため、求償債権そのものの価値はゼロ円と判断されました。

その結果、債務免除による利益も存在しないとして、第二次納税義務による納付告知処分は取り消されています。

形式ではなく実態を重視する姿勢が明確に示された判断といえます。

実務で注意したいポイント

第二次納税義務が問題となる案件では、まず利益の有無だけを見るのではなく、その利益の価値を客観的に評価することが重要です。

債権であれば回収可能性、不動産であれば時価、株式であれば市場価値など、実際に経済的価値があるかどうかを検討する必要があります。

また、その評価を裏付ける資料を残しておくことも重要です。

資産評価資料、決算書、財産目録、不動産鑑定書などは、後日の税務調査や審査請求でも重要な証拠になります。

税務調査でも争点になりやすい

税務調査では、形式的な契約内容だけではなく、実際に利益が存在したかどうかが確認されます。

納税者としては、「利益がなかった」と主張するだけでは足りません。

なぜ利益が存在しなかったのかを、客観的資料によって説明できることが重要になります。

特にグループ会社間の債務整理や事業再生では、この点が大きな争点になることがあります。

結論

第二次納税義務は、滞納処分を補完する重要な制度ですが、その適用には「現に存する利益」が存在することが前提になります。

利益の有無は契約書や帳簿上の金額だけで決まるものではなく、実際に経済的価値が存在するかどうかが重要です。

今回の公表裁決は、税務判断において形式よりも実質を重視する姿勢を改めて示したものであり、債務免除や債権評価を検討する実務に大きな示唆を与える裁決といえるでしょう。

参考

税のしるべ
2026年7月27日
「【公表裁決】求償債権の回収不可能な特別な事情認められ、納付告知処分は違法」

国税徴収法第39条(無償又は著しい低額の譲受人等の第二次納税義務)

タイトルとURLをコピーしました