求償債権の価額がゼロと判断された理由 第二次納税義務と債務免除の公表裁決編

税理士
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債務免除を受けた場合、税務上は「利益を受けた」と考えられることがあります。しかし、債務免除された債権に実際の価値がなければ、その利益も存在しないと評価される場合があります。

国税不服審判所の令和7年10月1日付公表裁決では、連帯保証人が取得した求償債権を免除した事案について、「求償債権の価額はゼロ」であり、第二次納税義務による納付告知処分は違法として取り消されました。

この裁決は、「債権額」ではなく「債権の実際の価値」を重視した判断として、実務上非常に参考になるものです。

第二次納税義務とは何か

国税徴収法には、本来の納税義務者以外にも納税義務を負わせる制度として「第二次納税義務」があります。

その代表例が、滞納者が財産を無償で譲渡したり、債務を免除したりして第三者に利益を与えた場合です。

もし、その行為によって国税の徴収が困難になれば、その利益を受けた者は、現に受けた利益の範囲内で納税義務を負います。

つまり、課税対象になるのは「利益そのもの」であり、形式的な債務免除の金額ではありません。

求償債権とは何か

連帯保証人が主たる債務者の代わりに返済すると、その保証人は債務者に対して支払った金額を請求できます。

この請求権を求償債権といいます。

例えば、保証人が1億円を返済した場合、その保証人は債務者に対して1億円の求償権を取得します。

もっとも、その債務者に返済能力がなければ、求償権は存在していても実際には回収できません。

法律上存在する権利と、経済的価値がある権利は必ずしも一致しないのです。

本件で問題となった経緯

本件では、不動産会社が金融機関から多額の借入れを行い、代表者らが連帯保証人となっていました。

担保不動産の競売などにより、保証人は債権者へ弁済し、その結果として会社に対する求償債権を取得しました。

その後、保証人は会社に対して求償債権を放棄し、債務免除を行いました。

しかし保証人自身には国税滞納があり、死亡後に税務署は、この債務免除によって会社が利益を受けたとして第二次納税義務を課しました。

その会社を後に吸収合併した法人が納付義務を承継したため、この法人が審査請求を行いました。

審判所が重視した「回収可能性」

税務署は、求償債権の額面どおりに利益が存在すると主張しました。

これに対し審判所は、債権の評価は金額だけで決まるものではなく、債務者の資産状況や支払能力を踏まえるべきだと判断しました。

確かに会社は破産手続などには入っていませんでした。

しかし、多額の債務を抱え、資産を換価しても求償債権を返済する余力はなく、実際の回収は極めて困難な状況でした。

そのため、求償債権そのものの経済的価値はゼロ円と評価されました。

利益が現に存在しないという考え方

国税徴収法第39条では、「現に存する利益」が第二次納税義務の上限になります。

本件では、形式上は債務免除が存在していても、免除された求償債権自体に価値がありませんでした。

つまり、ゼロ円の価値しかない権利を免除されても、新たな利益は発生していないということです。

このため、第二次納税義務の前提となる利益は存在せず、納付告知処分は違法と判断されました。

実務で参考になるポイント

この裁決は、債権評価では帳簿価額や契約金額だけではなく、実際の回収可能性が極めて重要であることを示しています。

特に、保証債務や求償権が関係する事案では、形式的な債権額だけを見て判断すると実態を見誤る可能性があります。

企業再編や事業承継、法人の清算などでは、債権の経済的価値を客観的資料に基づいて検討することが、税務上の重要な論点になります。

また、第二次納税義務の適用では、「利益を受けた」という形式だけでなく、その利益が現実に存在するかどうかが重要な判断基準になることも、この裁決は明確に示しています。

結論

今回の公表裁決は、「債務免除があれば必ず利益が生じる」という形式的な考え方を採らず、求償債権の実際の価値に着目した点に大きな意義があります。

税務では、法律上の権利の存在だけではなく、その権利が経済的にどれだけ価値を持つかが重要になる場面があります。

第二次納税義務や債務免除を検討する際には、債務者の資産状況や回収可能性を丁寧に分析し、「現に存する利益」が本当に存在するのかを実態に即して判断することが重要といえるでしょう。

参考

税のしるべ
2026年7月27日
「【公表裁決】求償債権の回収不可能な特別な事情認められ、納付告知処分は違法」

国税徴収法第39条(無償又は著しい低額の譲受人等の第二次納税義務)

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