居住用財産を譲渡した場合の3000万円特別控除は生活実態で決まる 東京地裁判決から学ぶ居住用財産の判断基準

税理士
水色 シンプル イラスト ビジネス 解説 はてなブログアイキャッチのコピー - 1

マイホームを売却したときに利用できる「居住用財産を譲渡した場合の3000万円特別控除」は、不動産譲渡に関する代表的な特例です。適用されれば譲渡所得から最高3000万円を控除できるため、税負担を大きく軽減できます。

しかし、この特例は「自宅を所有していた」というだけでは適用されません。本当にその家が生活の拠点だったのかという実態が重要になります。

2026年7月、東京地裁は、この点について実務上非常に参考となる判決を示しました。

特例の適用要件は居住用財産であること

3000万円特別控除は、自分が居住していた住宅を譲渡した場合に適用される制度です。

ここでいう「居住」とは、単に住民票が置かれていることではなく、日常生活の本拠として実際に生活していたことを意味します。

そのため、別荘や投資用不動産はもちろん、形式上は所有していても実際には生活していない住宅は対象になりません。

裁判で争われた内容

今回の事案では、納税者は石垣市の住宅について3000万円特別控除を適用して確定申告を行いました。

しかし、税務署は、その住宅は譲渡前の要件を満たす居住用財産には当たらないとして、更正処分を行いました。

これに対し納税者は、基準日時点までは居住していたとして処分の取消しを求めました。

裁判所が重視したのは生活実態

東京地裁は、住民票だけではなく、生活実態を示すさまざまな客観的資料を検討しました。

具体的には、

・水道使用量

・電気使用量

・銀行ATMの利用場所

・住民登録の異動時期

などを総合的に判断しています。

その結果、納税者は実際には那覇市のマンションを生活の拠点としており、石垣市の住宅は居住用財産には該当しないと判断しました。

形式ではなく実態を重視した典型的な判決といえます。

税務調査では生活の痕跡が確認される

この判決から分かるのは、税務調査では生活実態が幅広く確認されるということです。

例えば、

・公共料金の利用状況

・金融機関の利用履歴

・郵便物の送付先

・医療機関の受診先

・日常の買い物状況

など、生活の中心がどこにあったかを示す資料が確認されることがあります。

住民票だけでは判断されないことを理解しておく必要があります。

家族信託を利用していても判定は変わらない

本件では住宅が家族信託の対象となっていました。

しかし、裁判所が問題にしたのは信託そのものではなく、その住宅が居住用財産に該当するかどうかでした。

近年は認知症対策や相続対策として家族信託の利用が増えていますが、税制上の特例の適用要件まで緩和されるわけではありません。

信託を利用していても、居住の実態については通常どおり厳格に判断されます。

実務上の注意点

高齢者が子どもの家へ転居した場合や、介護施設へ入所した場合、あるいは二地域居住をしている場合などは、生活の本拠がどこにあったのかが問題になることがあります。

将来、自宅を売却する可能性がある場合には、生活実態を客観的に説明できる資料を残しておくことも重要です。

税務では形式よりも実態が重視されるという基本原則は、不動産譲渡においても変わりません。

結論

3000万円特別控除は非常に有利な制度ですが、その適用には「実際に生活の本拠として利用していた住宅」であることが不可欠です。

今回の東京地裁判決では、水道・電気の使用量やATM利用履歴などの客観的事実から生活実態が認定され、特例の適用は認められませんでした。

マイホームの売却を予定している人や家族信託を活用している人は、住民票だけではなく、生活実態を客観的に示せるかという視点を持って準備しておくことが、税務上のトラブル防止につながるでしょう。

参考

税のしるべ(2026年7月27日)
居住用財産を譲渡した場合の特別控除の適用巡り判決、地裁も特別控除を適用した家屋を生活の拠点と認めず

国税庁
マイホームを売ったときの特例(居住用財産を譲渡した場合の3000万円特別控除)

所得税法

タイトルとURLをコピーしました