連結決算で生成AIはどこまで使えるのか 丸投げではなくシステムと人間を使い分ける理由編

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生成AIの進化によって、経理業務の自動化は新しい段階に入っています。

仕訳の作成や文章の要約だけでなく、連結決算のような専門性の高い業務でも、生成AIを活用できる可能性が見えてきました。

実際、試算表や内部取引データ、勘定科目マスタなど必要な情報を与えれば、生成AIが連結修正仕訳や資本連結を反映した連結精算表をExcelで作成することも可能になっています。資料で紹介された実演では、約52分でデータを処理し、連結精算表を新規作成しています。さらに、期首データが不足しているため連結キャッシュフロー計算書を正確に作成できないことまで生成AIが指摘しています。 セミナーレポート/連結決算の生成AI活用─人間とシステムの役割…

しかし、ここで重要なのは、生成AIが連結決算を「できる」ことと、企業が毎期安全に連結決算を「運用できる」ことは別だという点です。

連結決算には3つの仕事がある

連結決算というと、連結精算表を作る仕事をイメージしがちです。

しかし、実際の業務は大きく分けると、情報を「集める」、財務諸表を「つくる」、経営やIRなどに「届ける」という3つの工程があります。

まず親会社が子会社から試算表や内部取引などの情報を収集します。

次に内部取引の消去や資本連結などの連結修正仕訳を行い、連結財務諸表を作成します。

そして完成した数字を管理会計部門や財務部門、IR部門などに提供し、経営判断や投資家への情報提供につなげます。 セミナーレポート/連結決算の生成AI活用─人間とシステムの役割…

生成AIを考える場合にも、この一連の仕事をひとまとめにするのではなく、それぞれの工程を分解する必要があります。

Excelによる連結決算には属人化の問題がある

成長過程にある企業などでは、連結決算をExcelで処理しているケースがあります。

Excelは柔軟性が高く便利ですが、連結決算が複雑になるほど問題も大きくなります。

関数のエラー、転記ミス、バージョン管理の不備などが発生しやすくなり、複雑なシートを継ぎ足していくうちに、作成した担当者しかメンテナンスできなくなることがあります。 セミナーレポート/連結決算の生成AI活用─人間とシステムの役割…

いわゆる「Excel職人」に業務が依存する状態です。

担当者が異動や退職をすると、なぜその数式になっているのか分からず、連結決算そのものが止まってしまう可能性があります。

そこで生成AIを使えば、この問題を解決できるようにも思えます。

ところが、単純にExcel職人を生成AIへ置き換えるだけでは、別の属人化を生み出してしまいます。

生成AIへの丸投げでも属人化はなくならない

生成AIに連結決算を丸投げした場合、生成AIを高度に使いこなせる担当者に業務が集中する可能性があります。

どのような指示を出したのか。

なぜその数値になったのか。

どのような過程で連結修正仕訳が作成されたのか。

こうした内容をほかの担当者が追えなければ、担当者が退職した瞬間に業務が回らなくなるかもしれません。

さらに、生成AIにはモデル変更などAI特有の問題があります。

「一度作成できた」ことと「毎期誰でも安全に再現できる」ことはまったく違います。資料でも、生成AIへの丸投げによって新たな属人化が起きる危険性が指摘されています。 セミナーレポート/連結決算の生成AI活用─人間とシステムの役割…

生成AIを導入する目的は、Excel職人をAI職人に置き換えることではありません。

定型業務はシステムに任せる

では、どのように役割分担すればよいのでしょうか。

基本となるのは「システム」「生成AI」「人間」の3つを使い分ける考え方です。

まず、形式や入力方法が決まっていて反復性の高い業務は、専用システムに任せることが適しています。

数式やルールによって計算できる業務、照合できる業務、権限承認や変更履歴、監査証跡など内部統制が求められる領域です。 セミナーレポート/連結決算の生成AI活用─人間とシステムの役割…

連結会計システムには、同じ条件で処理すれば同じ結果が得られる再現性があります。

連結決算の土台になる部分では、この再現性が非常に重要になります。

毎期内容が変わる仕事では生成AIが力を発揮する

一方、毎期同じ答えになるとは限らない業務があります。

代表例が増減分析です。

売上高や利益が前期から変化した理由を分析するとき、単純な計算だけでは十分ではありません。

子会社から提出された資料を読み、異常な動きを探し、その理由を考え、必要であれば子会社へ質問する必要があります。

こうした人間の判断や分析を一部代替できる領域では、生成AIが活躍します。

資料でも、毎期内容が異なる増減分析や子会社への質問案の作成などが、生成AIの活用領域として挙げられています。 セミナーレポート/連結決算の生成AI活用─人間とシステムの役割…

また、開示資料のチェックなどでも生成AIを一次チェックとして利用できます。

人間がゼロからすべて確認するのではなく、生成AIに「たたき台」を作らせ、人間が重要な部分に集中するという使い方です。

最後の判断は人間が担う

そして、最終的に残るのが人間の役割です。

生成AIやシステムが数字を作ることができても、その数字が正しいかどうかを判断する責任まで自動化できるわけではありません。

重要性の判断や会計上の判断を行い、役員や監査法人などに説明する仕事は人間が担います。

ここは、これからの経理人材を考えるうえで非常に重要なポイントです。

これまで価値が高かったのは、複雑なExcelを使いこなし、自分で集計できる人だったかもしれません。

しかし、単純な集計作業は今後、システムや生成AIによって代替される範囲が広がっていくでしょう。

その一方で、システムや生成AIが出した結果を検証し、「この数字は本当に正しいのか」「この会計処理でよいのか」と判断できる専門知識の価値はむしろ高まります。

生成AI導入より先に業務を標準化する

生成AIを導入するとき、最新のAIサービスを選ぶことに目が向きがちです。

しかし、その前に必要なのが業務の標準化です。

誰が何を担当するのか。

どの業務をシステムに任せるのか。

どこで生成AIを使うのか。

どの段階で人間がレビューするのか。

これらを整理しなければ、生成AIを導入しても業務プロセスそのものは改善されません。

むしろ、複雑なExcel業務の上に生成AIを追加するだけになり、新しい属人化を生む可能性があります。

生成AI活用の出発点はAIではなく、業務そのものを整理することなのです。

結論

連結決算に生成AIを活用する可能性は、すでにかなり広がっています。

試算表や内部取引データなどを読み込み、連結修正仕訳を反映した連結精算表を作成するところまで生成AIが対応できる例も出てきました。

しかし、それは連結決算をすべて生成AIに任せればよいという意味ではありません。

反復性と再現性が必要な仕事はシステム。

毎期内容が変化し、分析や文章作成が必要な仕事は生成AI。

重要性や会計処理を判断し、結果に責任を持つ仕事は人間。

この3者の役割を明確に分けることが重要です。

生成AI時代に経理部門で求められる人材も変わっていきます。

数字を集める人から、数字を検証する人へ。

Excelを操作する人から、システムや生成AIが出した結果を理解し、説明できる人へ。

生成AIによって経理の専門性が不要になるのではなく、むしろ「最後に正しい判断を下せる専門性」の重要性が高まっていくと考えられます。

参考

企業実務 2026年10月号 セミナーレポート「連結決算の生成AI活用─人間とシステムの役割とは─」

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