会社では、売上や利益について予算を立て、実績との差を確認する予実管理が行われています。
一方、業務改善の方法としてよく知られているのがPDCAです。
予実管理とPDCAは別々の仕組みに見えますが、実際には密接につながっています。
予算を立てる。
日々の営業や製造活動を行う。
予算と実績の差を確認して原因を分析する。
そして、次に何をするのかを決める。
参考記事では、この一連の予実管理の流れをPDCAサイクルそのものと説明しています。
つまり、予実管理は数字を管理する仕組みであり、その数字を具体的な改善行動へつなげていくことでPDCAが回っていくと考えることができます。
予実管理の役割
予実管理とは、あらかじめ設定した予算と実際の業績を比較し、その差異を把握して経営改善につなげる仕組みです。
たとえば、月間売上1000万円という予算を立てたとします。
実績が960万円であれば、40万円の未達です。
しかし、予実管理は40万円の差を確認して終わるものではありません。
なぜ40万円の未達になったのかを調べます。
参考記事では、売上未達を掘り下げた結果、主力製品の販売数量が減少しており、さらに主要得意先への訪問回数が繁忙を理由に半分に減っていたという例が示されています。
つまり、
売上が予算を下回った
販売数量が減った
主要得意先への訪問回数が減った
というように原因を掘り下げています。
ここまで分析すると、次に何を変えればよいのかが見えてきます。
PDCAの基本
参考記事では、予実管理の一連の流れについて、Plan、Do、Check、Actionという形で整理しています。
Planでは予算を立てます。
Doでは日々の商売を実行します。
Checkでは予実分析によって差異を把握し、その原因を掘り下げます。
Actionでは具体的なアクションを決めて実行します。
この四つを繰り返していくのがPDCAです。
重要なのは、一度実行して終わるのではなく、その結果を確認して次の行動へつなげることです。
予実管理も同じです。
予算を作成して実績と比較するだけでは、サイクルは途中で止まってしまいます。
差異の原因を分析し、具体的な行動を決め、その結果を翌月に確認することで初めて循環する仕組みになります。
予算とPlanの関係
予実管理における予算は、PDCAのPlanに当たります。
会社が将来について計画を立て、それを数字にしたものが予算です。
たとえば、
年間売上1億2000万円
月間売上1000万円
主力製品1000個販売
といった目標を設定します。
予算があるからこそ、実績が良かったのか悪かったのかを判断できます。
月間売上が960万円だったとしても、比較する基準がなければ、その数字が十分なのか不足しているのか判断できません。
1000万円という予算があることで、40万円の未達だったと分かります。
Planは単なる目標設定ではありません。
後から実績を評価し、改善につなげるための基準にもなっているのです。
Doは日々の商売そのもの
予算を作った後は、それを実現するために日々の業務を行います。
これがDoです。
営業担当者が顧客を訪問します。
商談を行います。
見積もりを提出します。
受注した商品を製造して顧客へ納品します。
こうした会社の日常的な活動によって実績の数字が作られていきます。
参考記事ではDoを日々の商売を実行することと表現しています。
予算だけを作っても売上は生まれません。
実際に行動することによって、売上や利益という実績が生まれます。
そして一定期間が経過したところで、当初のPlanと実際のDoによって生まれた結果を比較します。
差異分析がCheckになる
予実管理で非常に重要なのがCheckです。
予算と実績を比較して、どのような差が発生したのかを確認します。
ただし、参考記事が示しているCheckは、単に数字を見ることではありません。
差異を把握し、その原因を掘り下げるところまで含んでいます。
売上予算1000万円に対して実績960万円だった。
これだけでは、差異を確認したにすぎません。
なぜ40万円不足したのか。
販売数量が減ったのか。
販売単価が下がったのか。
販売数量が減ったのであれば、なぜ減ったのか。
このように原因を掘り下げることで、Checkが次のActionにつながります。
原因分析だけではPDCAは回らない
予実管理で起こりやすい問題が、Checkで止まってしまうことです。
参考記事では、原因までたどり着いたこと自体は大きな前進だとしながらも、翌月の行動が変わらなければ未来の数字も変わらず、分析で終わる予実管理は手間のかかった反省会でしかないと説明しています。
たとえば、
売上が40万円不足した
販売数量が減っていた
顧客訪問が減っていた
というところまで分析したとします。
ここで「なるほど。訪問不足が原因だった」と確認して会議を終えてしまえば、翌月も同じことが起こる可能性があります。
原因を理解するだけでは行動は変わらないからです。
そこで必要になるのがActionです。
Actionは頑張りますではない
参考記事で特に強調されているのが、アクションの具体性です。
「営業を強化する」
「もっと意識する」
「来月は頑張る」
こうした言葉は、一見すると改善策のように見えます。
しかし、実際には具体的な行動が決まっていません。
参考記事では、「頑張ります」はアクションではないと説明しています。
必要なのは、
何をするのか
誰がするのか
いつまでにするのか
を具体化することです。
たとえば顧客訪問が減っていたのであれば、参考記事では上位10社への訪問を月2回に戻すというアクションが示されています。
担当者は営業部長です。
今月中に訪問予定を組み直します。
そして来月の予実会議で数量の推移を確認します。
ここまで具体化して初めてActionになります。
翌月のCheckが次のActionを生む
PDCAがサイクルと呼ばれるのは、Actionで終わらないからです。
実行した結果を次のCheckで確認します。
参考記事では、翌月の予実会議について、数字を見る前に先月決めたアクションを検証することから始めるよう説明しています。
訪問回数は戻ったのか。
戻ったのであれば、販売数量は回復したのか。
アクションが効いているのであれば、そのまま続けます。
効いていないのであれば、別の手を打ちます。
ここが重要です。
最初に考えた改善策が必ず正しいとは限りません。
訪問回数を増やしても販売数量が戻らなければ、数量減少には別の原因がある可能性があります。
そこで原因をもう一度考え、新しいアクションを実行します。
こうして検証と改善を繰り返していくことがPDCAです。
予実管理とPDCAは何が違うのか
予実管理では、予算と実績という数字が重要な出発点になります。
予算に対して実績がどうだったのかを把握し、差異の原因を分析します。
PDCAは、計画、実行、検証、改善という一連の流れを繰り返す考え方です。
参考記事では、予算を立て、日々の商売を実行し、予実分析で差異を把握して原因を掘り下げ、アクションを決めて実行する流れをPDCAサイクルそのものとしています。
したがって、両者を完全に切り離して考える必要はありません。
予実管理を数字の確認だけで終わらせず、改善行動までつなげることで、予実管理の中でPDCAが回っていくのです。
結論
予実管理は、予算と実績を比較して差異を把握し、その原因を分析する経営管理の仕組みです。
PDCAは、Plan、Do、Check、Actionを繰り返しながら改善を続けていく考え方です。
予実管理に当てはめると、予算を立てることがPlan、日々の商売を実行することがDo、差異を把握して原因を掘り下げることがCheck、具体的な改善行動を決めて実行することがActionになります。
問題は、Checkで終わってしまうことです。
原因が分かっても、「来月は頑張ります」で会議を終えれば行動は変わりません。
何を、誰が、いつまでに行うのかを決め、翌月にその効果を確認する必要があります。
予実管理は数字を振り返るだけの仕組みではありません。
数字を手掛かりとして行動を変え、その結果をもう一度数字で確認する。
この循環を作ることで、予実管理がPDCAとして機能するようになるのです。
参考
企業実務 2026年9月号 猫と学ぶ経理力の磨き方 第9話 頑張りますで終わらせたら予実管理ちゃうで