会社から支給される通勤手当は、原則として給与の一部ですが、一定額までは所得税が課税されない「非課税制度」が設けられています。
この制度は、通勤に必要な実費相当額まで税負担を求めないという考え方に基づいています。
2026年度税制改正では、「年収178万円の壁」への見直しだけでなく、通勤手当の非課税限度額についても改正が行われました。自動車通勤や駐車場利用者への取扱いも見直されており、企業の給与担当者は実務対応が必要になります。
この記事では、通勤手当の非課税制度の概要や今回の改正内容、給与計算への影響について解説します。
通勤手当の非課税制度とは何か
通勤手当とは、従業員が自宅から勤務先まで通勤するために必要な費用を会社が支給するものです。
所得税では、通勤に必要な費用まで課税すると実質的な負担が重くなることから、一定額までは非課税とされています。
ただし、支給される通勤手当がすべて非課税になるわけではありません。
通勤方法や通勤距離などに応じて非課税となる限度額が定められており、その範囲を超えた部分は給与として課税されます。
非課税限度額の見直し
2026年度税制改正では、自動車や自転車などの交通用具を利用して通勤する人に対する非課税限度額が見直されました。
特に、片道65キロメートル以上の通勤については、1か月当たりの非課税限度額が引き上げられています。
また、公共交通機関を利用する場合については、合理的な運賃等を基準として非課税となる取扱いに変更はありません。
今回の改正は、通勤実態や物価上昇などを踏まえた見直しといえます。
駐車場代の取扱い
今回の改正では、駐車場代についても重要な見直しが行われました。
一定の要件を満たして駐車場を利用している場合には、通勤距離に応じた非課税限度額に加え、月額5,000円を上限として駐車場料金相当額を加算できるようになりました。
これにより、自動車通勤をしている従業員の実際の通勤費用により近い形で非課税措置を受けられるようになります。
一方で、要件を満たさない場合には適用されないため、企業は利用状況を正確に確認する必要があります。
給与計算への影響
通勤手当の非課税限度額は、2026年4月1日以後に支払われる通勤手当から適用されます。
給与計算担当者は、給与システムや通勤手当の設定内容が新制度に対応しているか確認しなければなりません。
特に、4月以降に過去分の通勤手当を追加支給する場合には、新しい非課税限度額を遡って適用することはできないため、支給対象期間を正確に確認する必要があります。
制度の適用時期を誤ると、所得税の計算にも影響するため注意が必要です。
実務担当者が確認すべきポイント
給与担当者は、今回の改正に合わせて次のような点を確認するとよいでしょう。
- 従業員の通勤方法は公共交通機関か、自動車・自転車か
- 通勤距離はどの区分に該当するか
- 駐車場利用の要件を満たしているか
- 給与計算システムが改正内容に対応しているか
- 通勤手当の支給時期と適用時期が一致しているか
これらを事前に確認することで、源泉所得税の計算ミスや年末調整での修正を防ぐことができます。
結論
通勤手当の非課税制度は、従業員の通勤費用に対して一定額まで所得税を課税しない制度です。
2026年度税制改正では、自動車通勤者の非課税限度額の引き上げや、一定要件を満たす駐車場代の非課税措置が新たに設けられました。
企業では、給与計算システムの更新だけでなく、通勤方法や駐車場利用状況の確認、適用時期の管理など、実務面での対応が求められます。
制度の内容を正しく理解し、改正内容を適切に反映することが、正確な給与計算と源泉徴収事務につながるでしょう。
参考
企業実務 2026年8月号(2026年8月)「160万円から178万円へ!『年収の壁』の変化と“源泉所得税”の実務対応」 石井秀治 著