インターネット通販やカタログ販売では、商品を注文した日と実際に商品が発送される日が同じとは限りません。
2027年4月から軽減税率の対象となる飲食料品の消費税率が8パーセントから1パーセントへ引き下げられると、この時間差が重要になります。
2027年3月に注文した食品が4月に発送された場合、税率は8パーセントなのでしょうか。それとも1パーセントなのでしょうか。
さらに、税率変更前からカタログなどで価格を表示し、注文を受け付けていた通信販売については経過措置も検討されています。
通信販売では、注文日だけを見ても適用税率を判断できない場合があります。
通信販売にはいくつもの日付がある
店舗で商品を購入する場合は、その場で商品を受け取り、代金を支払うことが一般的です。
一方、通信販売では取引の各段階が別の日になります。
事業者がカタログやウェブサイトなどで販売条件を提示する日があります。
消費者が注文する日があります。
クレジットカードなどで決済する日があります。
事業者が商品を発送する日があります。
そして購入者が商品を受け取る日があります。
税率が変わらない時期であれば、この日付の違いを強く意識する場面は少ないかもしれません。
しかし税率変更をまたぐと、どの時点を基準にするのかが重要になります。
原則は商品の譲渡を行った時点で考える
消費税では、原則として商品の譲渡などを行った時点に適用される税率によって税額を計算します。
そのため、単に注文を受けた日だけで適用税率が確定するとは限りません。
例えば2027年3月31日に注文を受け、税率変更後に商品の譲渡が行われる取引であれば、原則として新税率の適用を検討することになります。
つまり、税率変更前に注文ボタンを押したという事実だけで、必ず旧税率8パーセントになるわけではありません。
反対に、一定の経過措置の要件を満たせば、税率変更後の取引であっても旧税率が適用される場合があります。
ここが通信販売の税率変更を複雑にするところです。
カタログ販売では事前に価格を決めている
通信販売の中でも、特に問題になりやすいのがカタログ販売です。
紙のカタログは、作成してから数カ月にわたって利用されることがあります。
例えば2026年中に2027年春まで使用する食品カタログを作成したとします。
そこには8パーセントの消費税を前提とした価格が掲載されています。
ところがカタログの有効期間中である2027年4月1日に、飲食料品の税率が1パーセントへ変わります。
すでに大量のカタログを配布していれば、税率変更日にすべて回収して作り直すことは容易ではありません。
こうした取引事情を踏まえ、通信販売についても経過措置が必要になります。
2027年1月1日の指定日が重要になる
今回示されている案では、税率変更日の3カ月前となる2027年1月1日が指定日として重要になります。
一定の通信販売について、指定日前から販売条件を提示していることなど、所定の要件を満たす取引について経過措置を設ける考え方です。
これにより、2027年4月1日以降に商品を販売する場合でも、一定の取引について旧税率8パーセントを適用できる可能性があります。
したがって通信販売事業者は、税率変更日の4月1日だけでなく、指定日の1月1日も意識して販売管理を行う必要があります。
注文日だけでは判断できない
例えば2027年3月に食品を注文し、4月に発送される取引を考えてみます。
注文が3月だから8パーセントと単純に判断することはできません。
一方、発送が4月だから必ず1パーセントと判断できるとも限りません。
その取引が経過措置の対象となる通信販売なのか。
いつ販売条件が提示されたのか。
いつ注文を受けたのか。
代金をいつ受領したのか。
商品の譲渡がいつ行われたのか。
こうした事情を確認したうえで適用税率を判定する必要があります。
税率変更をまたぐ通信販売では、一つの日付だけを見るのでは不十分なのです。
ネット通販では価格変更が比較的容易でも問題は残る
インターネット通販は、紙のカタログと比べれば価格表示を変更しやすいという特徴があります。
税率変更日の午前0時にシステム上の税率を切り替えることも技術的には可能です。
しかし、実務はそれだけでは終わりません。
税率変更前に受け付けた注文が未発送で残っている場合があります。
予約商品もあります。
定期購入もあります。
決済済みの商品もあれば、発送時に決済する商品もあります。
そのため、ウェブサイト上の表示税率を1パーセントに変更するだけではなく、変更日前後の注文データをどの税率で処理するのかを決めておく必要があります。
予約商品ではさらに期間が長くなる
通信販売では、発売前の商品を予約するケースもあります。
例えば2026年中に注文と代金の支払いを済ませ、商品が2027年5月に発送されるケースです。
契約と商品の引渡しの間が半年近く空くことになります。
このような取引に税率変更が重なると、通常の税率適用だけではなく、予約販売などに関する経過措置の対象になるかどうかも確認する必要があります。
税率変更前に代金を受け取ったという事実だけで判断するのではなく、制度上の要件を確認することが重要です。
販売システムでは旧税率と新税率を併存させる
通信販売事業者のシステム対応で難しいのは、2027年4月1日に8パーセントを削除して1パーセントへ置き換えれば終わりではないことです。
経過措置が適用される取引が残るため、一定期間は8パーセントと1パーセントを併存させる必要があります。
さらに店内飲食など標準税率の対象取引があれば、別の税率も管理しなければなりません。
商品だけで税率を設定するのではなく、契約や注文の時期によって税率が異なるケースにも対応する必要があります。
販売管理と会計処理をどのように連携させるかが重要になります。
返品やキャンセルへの対応も必要になる
税率変更をまたぐ通信販売では、返品やキャンセルも注意点になります。
旧税率で販売した商品が税率変更後に返品される場合があります。
反対に、新税率で処理した注文について後日価格を訂正することも考えられます。
こうした処理では、返品や値引きを行った時点の税率だけを見るのではなく、元となった取引がどの税率で処理されていたのかを確認することが重要です。
そのためにも、注文番号などから元の適用税率を追跡できる仕組みが必要になります。
顧客への説明も重要になる
2027年4月以降、消費者は飲食料品の税率が1パーセントになったと認識するようになります。
その時期に通信販売の商品へ8パーセントが適用されていれば、なぜ税率が違うのか疑問を持つ人もいるでしょう。
経過措置によって旧税率が適用される取引については、事業者側が適切に説明できるようにしておくことも重要です。
税率を正しく計算するだけでなく、顧客が混乱しないようにすることも税率変更時の実務対応になります。
結論
通信販売では、注文日、決済日、発送日、商品を譲渡する日などが異なるため、消費税率の変更をまたぐと適用税率の判定が複雑になります。
2027年3月に注文した食品が4月に発送されたからといって、注文日だけを見て8パーセントと判断することはできません。
原則的な税率の判定に加えて、その取引が経過措置の対象になるかを確認する必要があります。
今回の税率引下げでは、2027年1月1日を指定日として、一定の通信販売について旧税率8パーセントを適用する経過措置が検討されています。
そのため2027年4月以降も、通信販売では1パーセントと8パーセントの取引が併存する可能性があります。
事業者に求められるのは、単にシステムの税率を8パーセントから1パーセントへ変更することではありません。
販売条件を提示した時期、注文日、決済日、商品の譲渡時期、経過措置の適用関係を記録し、取引単位で正しい税率を判定できる仕組みを整えておくことが重要です。
参考
税のしるべ 2026年8月28日 令和8年8月31日号 自民税調が消費税率引下げに伴う税制上の課題対応を議論、中間申告制度の特例案など示す
税のしるべ 2026年9月4日 令和8年9月7日号 自民税調で消費税率引下げ時の特例案を提示、簡易課税制度の特例など3案