特別注意銘柄から上場廃止までの流れ

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ニデックは2025年10月、東京証券取引所から特別注意銘柄に指定されました。そして2026年3月期の有価証券報告書についても、PwCジャパン監査法人は「意見不表明」としました。

こうした報道を見ると、特別注意銘柄に指定された企業はいずれ上場廃止になるのではないかと思うかもしれません。

しかし、特別注意銘柄への指定と上場廃止は同じではありません。

内部管理体制を改善できれば指定が解除される可能性があります。一方、改善が不十分で上場会社として適切な内部管理体制を構築することが困難と判断されれば、上場廃止につながる可能性があります。

特別注意銘柄から上場廃止までは、どのような流れになっているのでしょうか。

最初の問題は内部管理体制

上場企業には、適切な内部管理体制が求められます。

正確な決算を作る。

重要な会社情報を適切に開示する。

不正や誤りを防止する。

子会社を管理する。

内部監査を行う。

こうした仕組みが機能することで、投資家は企業が公表する情報を利用できます。

重大な会計不正などが発覚し、内部管理体制に問題があると判断されれば、上場会社としての適格性が問われます。

そこで改善状況を確認する必要がある場合に、特別注意銘柄への指定が行われます。

特別注意銘柄は改善期間でもある

特別注意銘柄に指定された時点で、上場廃止が決定したわけではありません。

会社には内部管理体制を改善する機会があります。

不正の原因を調査する。

責任の所在を明確にする。

経営体制を変更する。

承認権限を見直す。

内部監査を強化する。

子会社管理を見直す。

内部通報制度を改善する。

監査法人への情報提供体制を整える。

こうした対応を通じて、再び信頼できる財務報告や情報開示を行える会社に変えることが求められます。

原則として指定から1年後が重要になる

ニデックは2025年10月に特別注意銘柄に指定されました。

原則として指定から1年後に、内部管理体制の改善状況について審査を受けることになります。

ニデックの場合、2026年10月末が重要な節目になります。

会社は内部管理体制確認書を提出し、どのような改善を行ったのかを示すことになります。

ただし、1年が経過すれば自動的に指定が解除されるわけではありません。

審査されるのは時間ではなく、内部管理体制の実態です。

最初に「整備」が確認される

内部管理体制を見るうえで重要なのが「整備」と「運用」の違いです。

整備とは、不正や誤りを防止するための仕組みが作られていることです。

例えば重要な会計処理について複数の承認を必要とする。

子会社の決算を本社が確認する。

内部監査部門を強化する。

監査法人からの質問や指摘を一元管理する。

取締役会への報告体制を整える。

こうした仕組みが存在するかが確認されます。

ここで内部管理体制そのものが不十分であれば、問題は重大になります。

次に「運用」が確認される

制度を作っただけでは内部統制が有効とはいえません。

実際にその仕組みが機能している必要があります。

承認者は本当に内容を確認しているのか。

内部監査は問題を発見しているのか。

子会社から正確な情報が報告されているのか。

問題が経営陣や取締役会へ報告されているのか。

監査法人へ必要な情報が提供されているのか。

こうした実際の運用状況が確認されます。

内部統制では、整備と運用の両方が重要です。

整備できても指定が続く場合がある

ここが特別注意銘柄制度を理解するうえで重要です。

内部管理体制が整備されたからといって、すぐに指定が解除されるとは限りません。

例えば新しい内部監査制度を導入したとしても、導入直後では本当に機能するか分かりません。

一定期間運用し、その実効性を確認する必要があります。

そのため、整備はできているものの運用状況をさらに確認する必要がある場合には、特別注意銘柄の指定が継続することがあります。

ニデックを巡る報道では、制度上は最大3年間指定が継続できるとされています。

改善が確認されれば指定解除へ進む

内部管理体制が適切に整備され、さらにその仕組みが実際に機能していると確認されれば、特別注意銘柄の指定解除につながります。

ここで重要なのは、会社自身が「改善した」と判断するだけではないことです。

外部から見ても内部管理体制が機能していることを示す必要があります。

監査法人による監査も重要な材料になります。

決算を適正に作成できる。

監査法人へ必要な情報を提供できる。

監査法人が十分かつ適切な監査証拠を取得できる。

こうした状態を取り戻すことが、財務報告に対する信頼回復につながります。

改善が困難なら監理銘柄の問題が出てくる

反対に、内部管理体制が十分に整備されておらず、今後速やかに改善することも困難と判断されれば、上場廃止の可能性が現実的になります。

そこで登場するのが監理銘柄です。

監理銘柄は、上場廃止基準に該当する可能性がある場合などに、投資家へその状況を知らせるために指定されます。

特別注意銘柄と監理銘柄は意味が違います。

特別注意銘柄は内部管理体制の改善状況を確認する段階です。

監理銘柄は上場廃止の可能性について確認が進められる段階です。

監理銘柄でも上場廃止が確定したわけではない

監理銘柄に指定されたからといって、その時点で必ず上場廃止になるわけではありません。

上場廃止基準に該当するかどうかについて確認が行われます。

その結果、上場廃止基準に該当しないと判断されれば、上場を維持できる場合があります。

一方、上場廃止基準に該当すると判断されれば、上場廃止が決定します。

つまり監理銘柄は、上場廃止が確定する前の重要な段階と考えることができます。

上場廃止が決まると整理銘柄へ

上場廃止が決定すると、通常は直ちに株式の売買ができなくなるわけではありません。

投資家が保有株式を売却する機会などを確保するため、一定期間、整理銘柄に指定されます。

整理銘柄は、上場廃止が決まった後の段階です。

ここが監理銘柄との大きな違いです。

監理銘柄は上場廃止になる可能性がある段階。

整理銘柄は上場廃止が決定した段階です。

その後、所定の期間を経て上場廃止となります。

監査意見も重要な意味を持つ

ニデックでは、内部管理体制の問題に加えて監査意見も大きな焦点になっています。

2025年3月期有価証券報告書、2025年4月から9月期の半期報告書、2026年3月期有価証券報告書と3回連続で意見不表明となりました。

意見不表明とは、監査法人が十分かつ適切な監査証拠を入手できず、財務諸表について監査意見を形成できない状態です。

上場企業にとって、財務情報の信頼性を第三者である監査法人が確認できない状態が続くことは重大です。

ニデックにとっては、内部管理体制を改善するとともに、監査法人が必要な監査手続きを実施できる環境を整えることが重要になります。

意見不表明なら自動的に上場廃止ではない

ここも誤解しやすい点です。

監査法人から意見不表明が出たからといって、自動的に上場廃止になるわけではありません。

東証の上場廃止基準では、監査報告書に不適正意見や意見不表明が記載された場合について、市場秩序の維持などの観点から判断する仕組みがあります。

したがって、監査意見の名称だけで結論が決まるわけではありません。

なぜ意見不表明になったのか。

会社はどのような改善を進めているのか。

内部管理体制はどこまで改善したのか。

監査を完了できる見通しがあるのか。

こうした事情も重要になります。

東芝は指定解除まで約2年かかった

過去には東芝が2015年に、当時の特設注意市場銘柄に指定された事例があります。

東芝では米国の原発事業を巡る損失の認識時期などを巡って監査法人との問題も生じました。

2016年4月から12月期の決算では意見不表明となりましたが、その後も監査手続きや内部管理体制の改善が進められました。

2017年3月期については限定付き適正意見を受け、その後、特設注意市場銘柄の指定も約2年ぶりに解除されました。

この事例からも、意見不表明になったから直ちに上場廃止が確定するわけではないことが分かります。

一方で、信頼回復には相当な時間と対応が必要になることも分かります。

流れを整理すると理解しやすい

特別注意銘柄から上場廃止までの流れは、一直線ではありません。

特別注意銘柄に指定された企業が内部管理体制を改善し、その整備と運用が確認されれば指定解除へ進みます。

整備はできたものの運用状況の確認が必要であれば、指定が継続する場合があります。

内部管理体制の改善が不十分で、速やかな改善も難しいと判断されれば、上場廃止の可能性が高まり、監理銘柄への指定など次の段階へ進むことがあります。

そして上場廃止が決定すれば整理銘柄となり、その後上場廃止となります。

重要なのは、特別注意銘柄に指定された時点で結論が決まっているわけではないことです。

投資家は途中経過を見る

特別注意銘柄となった企業を見る場合には、最終的に上場廃止になるかどうかだけに注目するのではなく、その途中経過を見ることが重要です。

第三者委員会の調査は終了したのか。

責任者への対応は行われたのか。

新しい経営体制は機能しているのか。

内部監査は強化されたのか。

監査法人への情報提供は改善したのか。

監査意見は変化したのか。

内部管理体制の審査結果はどうなったのか。

こうした情報を時系列で追うことで、企業の改善状況を判断しやすくなります。

結論

特別注意銘柄への指定は、上場廃止を意味するものではありません。

内部管理体制に重大な問題があり、その改善状況を確認する必要がある状態です。

企業が内部管理体制を整備し、それを実際に運用できれば、指定解除につながる可能性があります。

一方、内部管理体制の改善が不十分で、速やかな改善も困難と判断されれば、監理銘柄への指定などを経て、上場廃止の問題へ進む可能性があります。

そして上場廃止が決定すれば整理銘柄となり、その後、上場市場から退出することになります。

ニデックの場合には、これに3回連続の意見不表明という問題も重なっています。

今後重要なのは、単に新しい規程や組織を作ることではありません。

信頼できる財務情報を作成し、監査法人が十分な監査証拠を取得でき、その仕組みが継続的に機能していることを示せるかです。

上場を維持するために求められるのは、形式的な改善ではありません。

資本市場から再び信頼される内部管理体制を実際に構築できるかどうかなのです。

参考

日本経済新聞 2026年10月1日 朝刊「ニデック監査、再び不表明 前期有報 上場維持厳しさ増す 最終赤字5646億円」

日本経済新聞 2026年10月1日 朝刊「ニデック統治、再構築急ぐ PwC『適切な監査証拠入手できず』 東証報告、月末に迫る」

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