根本原因分析とは何か 不正をした社員を処分するだけでは同じ問題が繰り返される理由編

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企業で不正が発覚すると、最初に注目されるのは、

誰がやったのか。

という問題です。

品質データを改ざんした社員がいた。

顧客に無断で材料を変更した管理職がいた。

必要な検査を省略した担当者がいた。

事実関係を確認し、必要に応じて関係者を処分することは重要です。

しかし、それだけで問題を解決したことになるのでしょうか。

もし同じ職場に、

達成困難な業績目標。

品質保証部門の人員不足。

問題を報告しにくい企業風土。

数字だけを重視する人事評価。

不十分な内部監査。

が残っていれば、担当者が代わった後にも同じ問題が起きる可能性があります。

そこで重要になるのが根本原因分析です。

不正をした人だけを見るのではなく、

なぜその人が不正をする状況が生まれたのか。

なぜ周囲が止められなかったのか。

なぜ長期間発見できなかったのか。

というところまで掘り下げて考えます。

根本原因分析とは何か

根本原因分析とは、問題の表面的な原因だけではなく、その問題を生み出したより深い原因を明らかにする考え方です。

例えば工場で不良品が発生したとします。

直接的な原因は、

作業員が部品を間違えた。

ということかもしれません。

しかし、そこで調査を終えてしまうと、

作業員に注意する。

研修をする。

という対策だけになります。

さらに調べると、

二つの部品の形が非常に似ていた。

保管場所が隣だった。

部品番号が見えにくかった。

確認工程がなかった。

作業員が長時間勤務していた。

といった背景が見つかるかもしれません。

ここまで調べれば、より効果的な再発防止策を考えることができます。

直接原因と根本原因は違う

問題が起きた直前の原因を直接原因と考えることができます。

例えば品質データが改ざんされていた場合、

担当者が数値を書き換えた。

というのが直接原因です。

しかし、

なぜ書き換えたのか。

を考えると別の原因が見えてきます。

基準値を満たさなければ出荷できなかった。

出荷できなければ納期目標を達成できなかった。

納期未達になると管理職から厳しく責任を追及された。

品質問題を報告しても十分に対応してもらえなかった。

こうした背景があったかもしれません。

直接原因だけでは、組織全体の問題は見えてきません。

なぜを繰り返して考える

根本原因を探る方法の一つに、なぜを繰り返して考える方法があります。

例えば、

顧客の承認を得ず材料を変更した。

という問題が起きたとします。

なぜ無断で変更したのでしょうか。

原価を下げる必要があったから。

では、なぜ短期間で原価を下げる必要があったのでしょうか。

利益目標を達成する必要があったから。

では、なぜ正式な承認手続きを取らなかったのでしょうか。

顧客承認に時間がかかり、今月の目標に間に合わなかったから。

では、なぜ目標に間に合わない場合に変更を延期しなかったのでしょうか。

目標未達が認められない雰囲気があったから。

このように問いを重ねることで、最初は担当者の判断に見えた問題の背景に、業績管理や企業風土の問題が存在する可能性が見えてきます。

なぜを5回繰り返せばよいとは限らない

なぜを繰り返す方法は分かりやすいものですが、必ず5回質問すれば正しい根本原因に到達するわけではありません。

問題によっては3回で重要な原因が見つかることもあります。

反対に、さらに深く調査する必要がある場合もあります。

重要なのは回数ではなく、

なぜこの問題が起きたのか。

なぜ防げなかったのか。

なぜ発見できなかったのか。

という複数の視点から考えることです。

不正には複数の原因がある

企業不祥事では、一つだけの原因を探そうとすると実態を見誤ることがあります。

例えば品質不正が起きた背景に、

達成困難な業績目標があった。

品質保証部門の人員が不足していた。

管理職が不適切な処理を黙認していた。

内部監査が十分に行われていなかった。

問題を報告すると責任を追及される企業風土があった。

M&A後の管理体制が十分整っていなかった。

といった複数の要因が重なっていることがあります。

どれか一つだけを改善しても、再発を完全には防げない可能性があります。

なぜ不正をしたのかだけでは不十分

不正をした本人に、

なぜやったのですか。

と聞くことは重要です。

しかし、それだけでは十分ではありません。

本人が、

納期に間に合わせるためでした。

と答えたとします。

そこで、

納期を守ろうとしたことが原因だった。

と結論づけるのは早すぎます。

なぜ納期と品質が衝突したのか。

納期に遅れる場合の報告制度はあったのか。

上司は相談を受けていたのか。

品質保証部門は止められなかったのか。

同じ対応をしている社員はいなかったのか。

組織側の仕組みまで調べる必要があります。

なぜ上司が止められなかったのか

担当者が不適切な処理をしていても、通常は上司や管理職による確認があります。

それでも不正が続いたのであれば、

上司は知らなかったのか。

知っていたが黙認したのか。

むしろ上司が指示したのか。

確認する仕組みそのものがなかったのか。

を調べる必要があります。

上司自身も強い業績プレッシャーを受けていた可能性があります。

担当者だけを処分して管理職側の問題を調べなければ、同じ構造が残ります。

なぜ品質保証部門が止められなかったのか

製造業であれば品質保証部門も重要です。

本来、製造部門が納期や原価を優先しすぎた場合に、品質の立場から止める役割があります。

それでも品質不正が発生したのであれば、

品質保証部門に十分な権限があったのか。

人員は足りていたのか。

製造部門から独立していたのか。

品質保証部門自身が業績目標の影響を受けていなかったか。

確認する必要があります。

制度上は品質保証部門が存在していても、実際には止められない状態だった可能性があります。

なぜ内部監査で発見できなかったのか

長期間続いた不正では、発生原因だけでなく発見できなかった原因も重要です。

内部監査は行われていたのか。

監査対象に品質管理が含まれていたのか。

書類だけを確認していなかったか。

海外や子会社まで監査できていたか。

指摘事項が経営陣へ報告されていたか。

監査人員は十分だったか。

不正を発生させた仕組みと、不正を見逃した仕組みの両方を分析する必要があります。

なぜ経営陣まで情報が届かなかったのか

経営陣が不正を直接知らなかった場合にも、

知らなかった。

で調査を終えることはできません。

なぜ知らなかったのでしょうか。

報告基準がなかった。

管理職が報告しなかった。

子会社内部で処理されていた。

悪い情報を報告すると責任を追及された。

品質情報をグループ全体で集約する仕組みがなかった。

こうした可能性があります。

経営陣が知らなかったこと自体が、情報伝達や内部統制の問題を示している場合があります。

制度だけでなく企業風土も原因になる

根本原因は規程や組織図だけに存在するとは限りません。

企業風土も重要です。

例えば正式な規程には、

品質問題は速やかに報告する。

と書かれていたとします。

しかし現場では、

悪い情報を出すと叱られる。

問題は自分の部署で処理する。

目標未達は許されない。

という認識が共有されていました。

この場合、規程をさらに追加しても十分な効果は期待できません。

社員が実際にどのような価値観のもとで行動していたのかまで調べる必要があります。

個人処分だけでは再発防止にならない

不正を行った社員を処分することには意味があります。

ルール違反には責任が伴うことを明確にできるからです。

しかし、処分だけで終わると、

悪い社員がいたことが原因だった。

という説明になりやすくなります。

担当者を解雇する。

上司を降格する。

役員が辞任する。

その後、新しい人を同じ部署へ配置します。

ところが業績目標も評価制度も品質管理体制も変わっていなければ、新しい担当者も同じ圧力を受けます。

人を替えることと仕組みを変えることは別です。

再発防止策は原因と対応させる

根本原因分析の目的は、原因を見つけることだけではありません。

再発防止策につなげることです。

例えば原因が品質保証部門の人員不足なら、人員や専門性を強化する必要があります。

原因が権限不足なら、品質保証部門に出荷停止や是正を求める権限を与えます。

原因が過度な業績目標なら、目標設定や評価制度を見直します。

原因が報告しにくい企業風土なら、内部通報制度や管理職の対応を改善します。

原因が子会社管理の不足なら、報告体制や内部監査を強化します。

原因と対策が対応していることが重要です。

研修だけでは解決できない問題もある

不祥事後の再発防止策として、

コンプライアンス研修を強化する。

という対策がよく行われます。

研修は重要です。

しかし、社員がルールを知らなかったことが原因でなければ、研修だけでは問題を解決できません。

社員はルールを知っていた。

しかし目標達成のために守れなかった。

というケースであれば、必要なのは業績管理や評価制度、品質管理体制などの見直しかもしれません。

原因を間違えれば、対策もずれてしまいます。

再発防止策そのものを確認する

対策を決めただけで終わってはいけません。

品質保証人員を増やす。

内部監査を強化する。

評価制度を変更する。

内部通報制度を改善する。

こうした計画を作った後、本当に実施されたかを確認する必要があります。

さらに、

不正が減ったのか。

問題が早く報告されるようになったのか。

品質指標が改善したのか。

社員の意識が変わったのか。

まで確認する必要があります。

再発防止策にも効果検証が必要です。

根本原因分析は犯人探しとは違う

根本原因分析では、個人の責任を否定するわけではありません。

故意に不正を行った社員には適切な責任を求める必要があります。

しかし、

誰が悪かったのか。

だけではなく、

なぜその不正が可能だったのか。

なぜ周囲が止められなかったのか。

なぜ会社が長期間気づかなかったのか。

まで考えます。

個人の責任と組織の責任を分けて検討することが重要です。

結論

根本原因分析とは、問題を起こした直接的な原因だけではなく、その問題を生み出した組織や制度の深い原因まで掘り下げる考え方です。

品質不正が起きた場合、

担当者がデータを改ざんした。

顧客に無断で材料を変更した。

必要な検査を省略した。

という事実だけで調査を終えてはいけません。

なぜその行動をしたのか。

なぜ上司が止められなかったのか。

なぜ品質保証部門が機能しなかったのか。

なぜ内部監査で発見できなかったのか。

なぜ経営陣へ情報が届かなかったのか。

こうして原因を掘り下げていく必要があります。

その結果、

過度な業績プレッシャー。

品質保証部門の人員不足。

数字だけを重視する評価制度。

悪い情報を報告しにくい企業風土。

子会社管理の不足。

など、個人を超えた問題が見つかることがあります。

不正をした社員を処分することは必要な場合があります。

しかし、人を替えただけで同じ制度や企業風土が残っていれば、別の社員が同じ問題を起こす可能性があります。

本当の再発防止とは、問題を起こした人だけを変えることではありません。

同じ行動を生み出した仕組みそのものを変えることです。

表面に現れた不正からさらに深く掘り下げ、なぜを問い続け、原因と再発防止策を結び付ける。

それが根本原因分析の重要な役割なのです。

参考

日本経済新聞 2026年9月5日朝刊 ニデック、品質不正850件

日本経済新聞 2026年9月5日朝刊 ニデックの品質不正「業績圧力が原因」 コスト低減、強く要求

日本経済新聞 2026年9月5日朝刊 ニデック社長「顧客の信頼失った」 一問一答

日本経済新聞 2026年9月5日朝刊 調査報告書要旨

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