会社が予算と実績を比較すると、さまざまな差異が発生します。
売上が予算を下回ることもあれば、原材料費が予算を上回り、利益が計画より少なくなることもあります。
こうしたときに重要なのは、すべての差異を同じように扱わないことです。
たとえば、営業担当者が忙しくて主要顧客への訪問回数を減らした結果、販売数量が落ちたのであれば、会社側の行動によって改善できる余地があります。
一方、天候不順そのものを会社の努力で変えることはできません。
予算と実績の差異を分析するときには、自分たちの行動によって変えられる要因なのか、それとも変えられない要因なのかを分けて考える必要があります。
この考え方が、管理可能差異を理解するうえで重要になります。
管理可能差異の意味
予算差異の原因には、会社や担当者の行動によって変えられるものと、自分たちでは直接変えられないものがあります。
管理可能差異を考えるときに重要なのは、自分たちの手で動かせる要因に注目することです。
参考記事でも、アクションは自分たちの手で動かせる要因に絞り、管理できない要因に会議の時間を使わないことが重要だと説明されています。
たとえば、売上が予算より100万円少なかったとします。
原因を調べると、販売数量が減っていました。
さらに調べると、主要得意先への訪問回数が減っていたことが分かりました。
顧客への訪問回数であれば、営業活動の組み方を変えることで増やすことができます。
このように、自社の行動によって改善できる原因を見つけることが、予実管理では重要になります。
営業活動などの内部要因
会社が比較的管理しやすいのが、社内の活動に関係する要因です。
たとえば営業活動であれば、顧客への訪問回数があります。
訪問回数が減っているのであれば、営業担当者の予定を見直すことができます。
商談件数が少ないのであれば、新規顧客へのアプローチを増やす方法もあります。
見積もりを提出してから顧客へのフォローが不足しているのであれば、フォローの方法を変えることもできます。
参考記事では、売上40万円の未達について原因を掘り下げた結果、主力製品の販売数量が減少し、さらに主要得意先への訪問回数が繁忙を理由に半分に減っていたという例が示されています。
この場合、天候や景気のような外部環境ではなく、自社の営業活動に改善できる原因が見つかったことになります。
だからこそ、次の具体的な行動を決めることができます。
内部要因なら具体的な行動に変えられる
自社で変えられる原因を見つけるメリットは、具体的なアクションへ落とし込めることです。
参考記事では、主要得意先への訪問回数が減っていたという原因に対して、上位10社への訪問を月2回に戻すという行動が示されています。
さらに、誰が実行するのかも決めています。
営業部長です。
いつまでに行うのかについては、今月中に訪問予定を組み直すとしています。
そして翌月の予実会議で販売数量の推移を確認します。
このように、
何をするのか
誰がするのか
いつまでにするのか
どう確認するのか
まで具体化すれば、原因分析を実際の経営改善へつなげることができます。
「営業を強化する」「来月は頑張る」といった言葉との違いはここにあります。
天候や原材料高などの外部要因
一方、会社では直接管理できない要因もあります。
参考記事では、原料の高騰や天候不順といった外部要因が例として挙げられています。
たとえば、猛暑を前提に夏物商品の販売予算を作ったのに、実際には気温が上がらなかったとします。
その結果、販売数量が予算を下回ったとしても、会社が天候そのものを変えることはできません。
原材料の市場価格が急騰した場合も同じです。
会社が努力したからといって、市場価格そのものを自由に下げることはできません。
こうした外部要因について、予実会議で「なぜ天候が悪かったのか」「なぜ原材料価格が上がったのか」と長時間議論しても、その原因そのものを会社が変えることはできません。
参考記事でも、管理できない要因を嘆くことに会議時間を使っても翌月の数字は良くならないと指摘されています。
外部要因なら何もしなくてよいわけではない
ただし、管理できない要因については何もしなくてよい、という意味ではありません。
ここは区別が必要です。
会社は天候を変えることはできません。
しかし、天候によって需要が変わることを想定して在庫を調整することはできます。
原材料の市場価格を変えることはできません。
しかし、仕入先を見直したり、販売価格を変更したりすることはできます。
つまり、外部要因そのものは管理できなくても、それに対して会社がどう対応するのかは管理できる場合があります。
参考記事でも、外部要因について対応の余地は残されているとしたうえで、管理できない要因については来期予算の前提を見直す材料として記録しておけばよいとしています。
外部要因を無視するのではなく、自分たちが変えられる部分と変えられない部分を切り分けることが重要なのです。
予算そのものを見直す材料にもなる
管理できない外部環境が一時的なものではなく、長期間続く場合には、当初の予算の前提そのものが現実と合わなくなることがあります。
たとえば、予算を作成した時点では原材料価格が100だったのに、その後150まで上昇し、その水準が続いているとします。
この場合、「予算では100だったから100まで下げなければならない」と現場に求めても、実現できない可能性があります。
問題は現場の努力ではなく、予算を作ったときの前提と現在の経営環境が変わっていることにあります。
このような情報は、今後の予算を作る際の重要な材料になります。
予実管理は、現場を評価するためだけではありません。
当初設定した予算の前提が妥当だったのかを検証する役割も持っています。
責任追及ではなく改善に使う理由
管理可能差異という考え方は、誰かの責任を追及するためだけに使うものではありません。
むしろ重要なのは、改善できる場所を見つけることです。
売上が予算を下回ったときに、営業担当者へ「なぜ達成できなかったのか」と問い続けても、原因が外部環境にあるのであれば改善にはつながりません。
反対に、外部環境を理由にして、自社で改善できる営業活動まで放置してしまうのも問題です。
そこで差異の原因を掘り下げ、
自分たちで変えられるのか
自分たちでは変えられないのか
を考えます。
自分たちで変えられるのであれば、具体的なアクションを決めます。
変えられないのであれば、それを前提として自社が取れる対応策を考えます。
この切り分けによって、予実会議を責任追及の場ではなく、改善策を考える場にすることができます。
会議時間を変えられることに使う
予実会議で使える時間には限りがあります。
だからこそ、何について議論するのかが重要です。
参考記事では、管理できない要因について会議時間を使うのではなく、自分たちの手で動かせる要因にアクションを絞ることが示されています。
たとえば、天候不順によって売上が減ったことが分かったのであれば、「天候が悪かった」という説明を何度も繰り返しても数字は変わりません。
それよりも、
在庫をどう調整するのか
別の商品をどう販売するのか
営業活動をどう変えるのか
次回の予算ではどのような前提を置くのか
といった、自社が実際に動かせる部分について議論する方が経営改善につながります。
予実管理では、原因を知ることだけでなく、変えられる原因に経営資源を集中させることが重要なのです。
結論
管理可能差異を考えるうえで重要なのは、予算と実績の差が生じた原因を、自分たちで変えられるものと変えられないものに分けることです。
営業担当者の訪問回数など、自社の行動によって変えられる要因であれば、具体的な改善策を決めることができます。
一方、天候不順や原材料価格の高騰など、会社では直接変えられない外部要因もあります。
ただし、外部要因だから何もしなくてよいわけではありません。
原因そのものを変えられなくても、それに対して自社がどのように対応するのかは考えることができます。
重要なのは、予算未達について誰かを責めることではありません。
差異の原因を掘り下げ、自分たちが変えられる部分を見つけ、そこに具体的なアクションを設定することです。
予実会議の時間を、変えられない過去を説明するためではなく、変えられる未来について話し合うために使う。
それが管理可能差異を考える大きな意味なのです。
参考
企業実務 2026年9月号 猫と学ぶ経理力の磨き方 第9話 頑張りますで終わらせたら予実管理ちゃうで