就職氷河期世代の住宅危機 持ち家を持てないまま迎える老後

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就職氷河期世代が40代から50代となり、老後の生活設計を考える時期を迎えています。

1993年から2004年ごろに社会に出た世代は、企業の採用抑制や非正規雇用の拡大など、厳しい雇用環境に直面しました。

その影響は、就職活動の苦労だけにとどまりません。所得や貯蓄、結婚、住宅取得、そして老後の年金にまで及んでいます。

特に深刻なのが、持ち家を取得できないまま高齢期を迎える単身者の住宅問題です。

住宅価格が高騰する一方、賃貸住宅に住み続けることにも不安があります。

人生100年時代において、住宅問題は単なる住まいの選択ではなく、老後の生活基盤を左右する重要な課題となっています。

就職氷河期世代の持ち家率が低下している

総務省の住宅・土地統計調査によると、2023年の40代と50代の持ち家率は6割前後となっています。

30年前の同じ年代と比較すると、持ち家率は約10ポイント低下しています。

背景には、雇用環境の変化があります。

従来の日本社会では、学校を卒業して正社員として就職し、結婚して住宅ローンを組み、定年退職までに完済するという生活設計が一般的でした。

しかし、就職氷河期世代では、このような生活設計を実現できなかった人が少なくありません。

非正規雇用や転職を繰り返すことで所得が安定せず、住宅ローンの審査を受けること自体が難しい場合もあります。

また、結婚しない人や離婚する人が増えたことも、持ち家率の低下につながっています。

日本では、結婚や子どもの誕生を契機として住宅を購入する人が多いためです。

つまり、就職氷河期世代の住宅問題は、雇用問題と家族構成の変化が重なって生じているのです。

賃貸住宅に住み続ける場合の老後負担

持ち家と賃貸住宅の大きな違いは、高齢期の住居費です。

持ち家で住宅ローンを完済すれば、固定資産税や修繕費などは必要ですが、毎月の住宅ローン返済はなくなります。

一方、賃貸住宅では、何歳になっても家賃を支払い続ける必要があります。

例えば、65歳から95歳までの30年間、毎月7万円の家賃を支払う場合を考えてみましょう。

年間家賃は84万円です。

30年間では2,520万円になります。

これは家賃が変わらないと仮定した単純計算であり、更新料や引っ越し費用、家賃上昇などは含んでいません。

仮に毎月の家賃が10万円であれば、30年間の支払総額は3,600万円となります。

老後の住居費だけで、数千万円の支出が発生する可能性があるのです。

もちろん、持ち家にも購入費用や維持管理費がかかるため、賃貸住宅が必ず不利というわけではありません。

重要なのは、生涯にわたる住居費を比較することです。

年金収入だけで家賃を支払えるのか

さらに重要なのが、老後の年金収入との関係です。

就職氷河期世代には、非正規雇用や失業期間が長かった人もいます。

厚生年金の加入期間が短い場合、老後の年金額が十分でない可能性があります。

例えば、65歳以降の年金収入が月12万円で、家賃が月7万円の場合を考えます。

家賃を支払った後に残る金額は月5万円です。

この5万円から食費、光熱費、通信費、医療費、日用品費などを支払わなければなりません。

家賃が月8万円なら、残りは4万円になります。

年金収入だけで生活を維持することは、相当難しくなるでしょう。

不足分を貯蓄から取り崩す場合も、長生きするほど資金が減少します。

老後資金を考える際には、生活費だけでなく、住居費を独立した項目として計算する必要があります。

住宅を購入すれば安心というわけでもない

それでは、賃貸住宅に住む人は、できるだけ早く住宅を購入すべきなのでしょうか。

必ずしもそうとは限りません。

50代から住宅ローンを組む場合、完済時の年齢が重要になります。

例えば、55歳で25年間の住宅ローンを組めば、完済予定年齢は80歳です。

60歳や65歳で退職する場合、年金生活に入ってからも返済が続く可能性があります。

住宅ローンの返済額が現役時代には無理のない水準でも、年金生活では大きな負担になることがあります。

また、マンションであれば管理費や修繕積立金、戸建てであれば屋根や外壁などの修繕費が必要です。

高齢になってから住宅を売却しようとしても、立地や建物の状態によっては希望する価格で売れない場合があります。

住宅を購入する際には、購入価格だけでなく、老後の維持費と売却可能性まで考えることが重要です。

単身者には住宅取得以外の問題もある

就職氷河期世代の単身者が直面する問題は、住宅費だけではありません。

高齢になったとき、賃貸住宅を借りられるかどうかという問題があります。

家賃保証会社を利用できても、緊急連絡先を求められることがあります。

親が亡くなり、兄弟姉妹も高齢になれば、頼れる親族がいなくなる可能性があります。

また、病気で入院した場合や介護施設へ入居する場合にも、身元保証や緊急時の連絡体制が問題になります。

持ち家があっても、認知症などで判断能力が低下した場合には、不動産の管理や売却が難しくなることがあります。

さらに、亡くなった後の家財整理や財産の承継についても考えておく必要があります。

単身者の住宅問題は、住む場所を確保するだけでは解決できないのです。

50代から考えておきたい住宅と老後の設計

就職氷河期世代が今から取り組むべきことは、自分の老後の収支を具体的に把握することです。

まず、65歳以降に受け取れる年金額を確認します。

次に、食費や光熱費などの生活費と、家賃や住宅維持費を分けて見積もります。

そのうえで、90歳や100歳まで生活した場合の資金収支を計算します。

例えば、年金収入が月12万円、生活費が月8万円、家賃が月7万円であれば、毎月3万円の赤字になります。

年間では36万円、30年間では1,080万円の不足です。

この金額には、医療費や介護費の増加、物価上昇などは含まれていません。

一方、65歳以降も働いて収入を得ることができれば、資金不足を軽減できる可能性があります。

ただし、健康状態や雇用環境によっては働き続けられないこともあります。

そのため、就労継続を前提とした計画だけでなく、働けなくなった場合の計画も必要です。

結論

就職氷河期世代の住宅問題は、若いころの雇用環境が老後の生活にまで影響するという、日本社会の構造的な課題です。

持ち家を取得できなかった人が、必ずしも不幸になるわけではありません。

賃貸住宅には、住み替えやすさや住宅修繕の負担を直接負わなくてよいという利点があります。

一方で、高齢期にも家賃を支払い続ける必要があり、入居審査や緊急連絡先などの問題も残ります。

大切なのは、持ち家か賃貸かという二者択一ではなく、年金、貯蓄、就労、健康、家族関係を含めて住まいを考えることです。

人生100年時代の住宅政策も、従来の夫婦と子どもを中心とした世帯モデルから、単身者が安心して暮らせる仕組みへ転換していく必要があります。

就職氷河期世代の住宅危機は、これからの日本社会全体が向き合うべき問題なのです。

参考

日本経済新聞 2026年9月14日 就職氷河期おひとり様「家借りるのも大変」 見えぬワンルーム8畳の先

日本経済新聞 2026年9月18日 高齢者賃貸、孤独死懸念で厳しく おひとり様「住宅政策の蚊帳の外」

総務省 2023年住宅・土地統計調査

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