国際送金が24時間365日、ほぼ即時にできるようになると聞くと、単に海外への振り込みが速くなるだけだと思うかもしれません。
しかし、企業にとってはそれ以上の意味があります。
現在の国際送金では、着金までに数日かかることがあります。そのため企業は、支払期限に間に合うように早めに資金を準備し、送金しなければなりません。
この時間差によって生まれるのが待機資金です。
国際送金が即時化すれば、企業がお金を準備するタイミングそのものを変えられる可能性があります。
待機資金とは何か
企業は事業を続けるために一定の現金を保有しています。
従業員への給与、仕入れ代金、税金、借入金の返済など、さまざまな支払いがあるからです。
海外企業への支払いも同じです。
問題は、支払う瞬間だけお金があればよいわけではないことです。
現在の国際送金では着金までに時間がかかる可能性があるため、企業は余裕を持って資金を準備する必要があります。
すぐには事業や投資に回せず、支払いのために確保している資金を広い意味で待機資金と考えることができます。
なぜ早めに送金する必要があるのか
例えば、日本企業が海外企業へ金曜日までに代金を支払う契約を結んでいるとします。
送金に数日かかる可能性があるなら、金曜日に送金したのでは間に合いません。
火曜日や水曜日などに送金する必要があります。
さらに途中に祝日があれば、もっと早く手続きをする必要があるかもしれません。
国際送金では送金元の国だけでなく、送金先の国や途中で経由する銀行の営業日も影響する場合があります。
企業はこうした不確実性を考え、余裕を持って資金を動かしています。
休日が資金繰りに影響する
企業活動は世界中で行われていますが、銀行の決済システムは必ずしも24時間365日動いているわけではありません。
土曜日や日曜日、祝日には処理が進まない場合があります。
例えば月曜日が支払期限の場合、実際には前週の木曜日や金曜日に送金しておく必要が生じることがあります。
つまり、契約上の支払日より何日も前に企業の手元から資金が離れる可能性があります。
企業にとって、お金が動かせない時間もコストです。
金額が大きくなるほど、その影響も無視できなくなります。
即時送金なら必要な瞬間まで資金を使える
国際送金がほぼ即時に完了するようになれば、この状況が変わります。
月曜日が支払期限なら、月曜日に送金しても間に合う世界に近づきます。
企業は支払期限の直前まで資金を自社で保有できます。
その資金を短期的な運用や別の支払い、事業活動などに利用する余地が生まれます。
お金そのものが増えるわけではありません。
しかし、同じお金をより長い時間、自社で利用できるようになります。
これが資金効率の改善です。
資金繰りへの影響
企業経営では、利益だけでなく資金繰りが重要です。
帳簿上では利益が出ていても、支払いに必要な現金が不足すれば経営は行き詰まります。
そのため企業は、将来の入金と出金を予測しながら一定の現金を確保しています。
国際送金に何日かかるのか分からなければ、その分だけ余裕資金を多めに持つ必要があります。
反対に、送金時間が短くなり、いつ相手に届くのか予測しやすくなれば、必要以上に現金を抱える必要が減ります。
国際送金の即時化は、企業の資金管理をより精密にする可能性があります。
資金調達コストも変わる
企業が手元資金を十分に持っていなければ、銀行から短期的に借り入れることがあります。
送金に時間がかかるために早めに資金を準備する必要があれば、その期間について借入金が必要になる場合もあります。
当然、借入金には金利がかかります。
国際送金が即時化し、資金を用意する期間を短くできれば、短期借入金を減らせる可能性があります。
その結果、企業の資金調達コストを抑える効果も期待できます。
大企業ほど影響額が大きくなる
海外との取引が少ない企業であれば、数日の送金時間はそれほど大きな問題にならないかもしれません。
しかし、世界中で毎日大量の取引をしている企業では事情が違います。
数億円、数十億円、さらに大きな資金を世界各地へ動かす企業では、数日間の時間差だけでも大きな金額の資金が動かせない状態になります。
世界各地の子会社がそれぞれ余分な現金を保有している場合もあります。
国際送金を即時化できれば、グループ全体の資金をより効率的に管理できる可能性があります。
企業の資金管理がリアルタイム化する
企業の資金管理では、必要な場所へ必要な金額を必要なときに配置することが理想です。
しかし、現在の国際送金には時間差があるため、完全なリアルタイム管理は簡単ではありません。
トークン化預金などによって24時間365日の即時送金が実現すれば、海外子会社で資金が不足した瞬間に本社から送金するといったこともしやすくなります。
反対に、海外子会社に余っている資金を本社などへ素早く集約することも考えられます。
国際送金の高速化は、企業の財務部門の仕事そのものを変える可能性があります。
送金手数料だけを見てはいけない
国際送金の改革というと、手数料がいくら安くなるのかに注目しがちです。
もちろん、送金手数料の削減は重要です。
しかし企業にとっては、資金が何日拘束されるのかも重要なコストです。
送金に3日かかる世界と数秒で完了する世界では、企業が保有しなければならない現金の量や資金管理の方法が変わる可能性があります。
つまり、国際送金の即時化は決済コストだけではなく、企業の運転資金そのものに影響する問題なのです。
結論
国際送金が24時間365日、ほぼ即時に実行できるようになれば、企業は支払日の何日も前から資金を準備する必要が減ります。
その結果、支払いのために確保していた待機資金を減らせる可能性があります。
企業は必要な瞬間まで資金を利用できるようになり、資金繰りをより精密に管理できます。
さらに短期借入金などを減らせれば、資金調達コストの低下にもつながります。
国際送金の即時化というと、振り込みが数日から数秒になるという時間の変化に目が向きます。
しかし企業経営の視点から見ると、本当に大きな変化はお金を寝かせておく時間を減らせることにあります。
トークン化預金による国際送金の改革は、送金サービスの改善にとどまらず、企業のお金の持ち方そのものを変える可能性があるのです。
参考
日本経済新聞 2026年9月15日 朝刊 トークン化預金、国際送金即時に