海外へお金を送ると、国内の銀行振込に比べて高い手数料がかかることがあります。
インターネットを使えば情報は一瞬で海外へ届くのに、なぜお金を送るだけで高い費用が必要なのでしょうか。
大きな理由は、国際送金では送金する銀行と受け取る銀行だけで処理が完結するとは限らないからです。
複数の銀行を経由し、外国為替取引や本人確認などのさまざまな手続きが行われます。
この複雑な仕組みを理解すると、トークン化預金が国際送金を変える可能性も見えてきます。
コルレス銀行とは何か
国際送金を理解するときに重要なのが、コルレス銀行です。
世界には非常に多くの銀行があります。
それぞれの銀行が世界中のすべての銀行と直接取引関係を持つことは現実的ではありません。
そこで銀行は、海外の銀行と口座を持ち合うなどして国際的な資金決済を行います。
こうした銀行間の関係をコルレス関係といいます。
海外送金をするときには、このネットワークを利用して資金を目的地まで届けます。
なぜ中継銀行が必要なのか
例えば、日本のA銀行から海外のB銀行へ送金するとします。
A銀行とB銀行に直接の取引関係があれば、比較的単純です。
しかし、直接の関係がない場合があります。
そのときA銀行とB銀行の双方と取引関係を持つ別の銀行を経由します。
これが中継銀行です。
場合によっては1行だけではなく、複数の銀行が間に入ることもあります。
送金元から送金先まで1本の道でつながっているとは限らず、銀行から銀行へ資金を受け渡していくわけです。
銀行を経由するたびにコストが発生する
中継銀行が入れば、その銀行でも送金を処理する必要があります。
送金情報を確認し、必要な決済処理を行います。
マネーロンダリングやテロ資金供与、経済制裁などに関する確認も欠かせません。
こうした処理にはシステムや人員が必要です。
そのため、送金に関係する金融機関が増えるほど、全体としてコストが積み上がりやすくなります。
国際送金の手数料が国内振込のように単純ではない理由の1つです。
為替手数料もかかる
国際送金では、通貨の交換が必要になる場合があります。
日本から米国へ送金する場合、円をドルに交換して送るケースが代表的です。
このとき利用者が負担するのは、目に見える送金手数料だけではありません。
銀行が利用者に提示する為替レートと市場の為替レートとの間に差が設けられていることがあります。
この差も実質的なコストになります。
そのため、国際送金の費用を比較するときには、送金手数料だけを見るのでは十分ではありません。
最終的に相手がいくら受け取れるのかを見る必要があります。
少額送金ほど負担感が大きい
国際送金では一定額の手数料が発生する場合があります。
そのため、送金額が小さいほど手数料の割合が高くなりやすくなります。
例えば、企業が数千万円を送る場合と、個人が数万円を送る場合では、同じ数千円の手数料でも負担感は大きく違います。
海外で働く人が母国の家族へ生活費を送るような個人間送金では、この問題が特に重要になります。
送金額の一部が手数料として消えてしまえば、家族が受け取れる金額が減ってしまうからです。
手数料が分かりにくい問題もある
国際送金には、単に手数料が高いだけではなく、最終的な費用が分かりにくいという問題があります。
送金を依頼した銀行の手数料だけを見ても、途中の中継銀行で費用が差し引かれる場合があります。
受取銀行で費用が発生することもあります。
さらに為替レートにもコストが含まれる場合があります。
利用者から見ると、送金した金額と相手が受け取る金額に差があるのに、その差がどこで発生したのか分かりにくいことがあります。
こうした不透明さも、従来型の国際送金が抱えてきた課題です。
フィンテック企業が成長した理由
国際送金の高い手数料や分かりにくさは、新しい金融サービスが成長するきっかけにもなりました。
代表的な存在の1つがWiseです。
従来の銀行送金とは異なる仕組みを使い、国境を越える資金移動を効率化することで、個人や中小企業などの利用を広げてきました。
利用者にとって重要なのは、金融機関がどのような仕組みを使っているかだけではありません。
いくら送れば、相手にいくら届くのか。
そして、いつ届くのか。
この2つが分かりやすいサービスへの需要が高まっています。
トークン化預金で何が変わるのか
Swiftが試験運用を進めているトークン化預金には、この複雑な国際送金を効率化する可能性があります。
現在の仕組みでは、銀行から銀行へ順番に送金処理を進めます。
これに対して、異なる銀行のトークン化預金を共通のデジタル基盤で接続できれば、価値の移転をより直接的に処理できる可能性があります。
処理する銀行や手続きを減らすことができれば、その分だけコストを抑えられる可能性があります。
さらに24時間365日処理できれば、休日を挟んで資金が途中で止まる時間も減ります。
安くなるだけではない
トークン化による国際送金の効率化には、手数料以外のメリットもあります。
企業が海外へ支払う場合、現在は着金までの時間を考えて早めに資金を準備する必要があります。
その間、企業のお金は待機資金になります。
国際送金がほぼ即時に完了するようになれば、必要なときに送金できるため、余分な資金を抱える必要が減ります。
企業にとっては、送金手数料の削減だけではなく、資金効率の改善にもつながります。
国際送金の改革は、単なる振込手数料の問題ではないのです。
結論
国際送金の手数料が高くなりやすい大きな理由は、送金元の銀行から受取銀行まで複数の金融機関や決済の仕組みを経由することにあります。
中継銀行での処理、本人確認やマネーロンダリング対策、外国為替取引など、さまざまなコストが積み上がります。
さらに送金手数料だけでなく、為替レートに含まれるコストなども考える必要があります。
この複雑な仕組みを、トークン化預金とブロックチェーンによって簡素化しようとする動きが始まっています。
異なる銀行のトークン化預金を直接的につなぐことができれば、国際送金は現在より速く、安く、分かりやすくなる可能性があります。
国際送金のデジタル化で本当に重要なのは、新しい技術を使うこと自体ではありません。
お金が相手に届くまでに存在する多くの中間処理を、どこまで減らせるかにあるといえるでしょう。
参考
日本経済新聞 2026年9月15日 朝刊 トークン化預金、国際送金即時に