介護保険サービスを利用するためには、市区町村による要介護認定を受ける必要があります。しかし現実には、申請から認定までに長い時間がかかり、利用者や家族が不安を抱えるケースも少なくありません。
厚生労働省は2028年度までに要介護認定手続きを大幅にデジタル化する方針を示しました。郵送やファクス中心だった手続きをオンライン化し、認定期間の短縮や利用者の利便性向上を目指しています。
今回は、介護認定のデジタル化がもたらす変化について考えてみます。
要介護認定はなぜ時間がかかるのか
介護保険を利用するためには、市区町村へ申請を行い、訪問調査や主治医意見書の提出を経て認定審査会で審査されます。
法律上は原則30日以内に認定結果を通知することになっています。しかし実際には30日以内に終わるケースは少なく、多くの自治体では40日以上かかることも珍しくありません。
その大きな原因の一つが、紙による手続きです。
主治医意見書は医療機関から郵送されることが多く、厚生労働省の調査では依頼から到着まで平均17.9日を要しています。また、認定審査会の委員への資料送付も郵送が中心であり、手続き全体の長期化につながっていました。
デジタル化で認定期間は短縮される
新たなシステムでは、医療機関、市区町村、介護事業者などがオンラインで情報を共有できるようになります。
主治医意見書の提出を電子化することで、郵送にかかる日数を削減できます。また、認定審査会の資料配布や情報共有もオンラインで行えるため、審査までの時間も短縮されます。
厚生労働省は、全体で最大6日から8日程度の短縮効果を見込んでいます。
一見すると数日の短縮に見えますが、介護サービスの利用を待つ本人や家族にとっては非常に大きな意味があります。
家族の不安軽減にもつながる
介護認定の申請後、多くの家族が気にするのは「今どこまで進んでいるのか」という点です。
しかし現在は電話で問い合わせるしかなく、市区町村の担当者も対応に追われています。
新システムでは利用者や家族が進捗状況を確認できるようになります。
宅配便の配送状況を確認するように、認定手続きの進み具合が見える化されれば、不安の軽減につながります。
行政側にとっても問い合わせ対応の負担が減り、本来業務に集中しやすくなるでしょう。
ケアマネジャーの業務も効率化される
介護サービスは認定後に終わりではありません。
ケアマネジャーは認定結果や主治医意見書を基にケアプランを作成します。しかし現在は市区町村窓口への開示請求や郵送依頼が必要な場合もあります。
デジタル化により必要な情報をオンラインで確認できるようになれば、ケアプラン作成までの時間も短縮されます。
結果として利用者が必要なサービスをより早く受けられるようになります。
介護現場の人手不足が深刻化する中、こうした事務作業の効率化は重要な課題です。
マイナンバーカード活用で本人管理の時代へ
今回の仕組みではマイナンバーカードも活用されます。
利用者はマイナポータルを通じて、自身のケアプランや過去の介護サービス利用履歴を確認できるようになります。
医療分野では既に診療情報や薬剤情報のデジタル化が進みつつあります。介護分野も同様に、自分自身の情報を本人が管理する方向へ進んでいます。
今後は介護、医療、福祉のデータ連携が進むことで、より質の高い支援が期待されます。
超高齢社会に必要な介護DX
日本では高齢化が進み、介護認定件数も今後さらに増加することが予想されています。
一方で自治体職員や介護人材は不足しています。
従来と同じ紙中心の仕組みでは、増え続ける需要に対応することが難しくなります。
介護DXは単なる業務効率化ではありません。
限られた人材で持続可能な介護制度を維持するための重要な社会基盤整備といえます。
結論
要介護認定のデジタル化は、単なる手続きの電子化ではありません。
認定期間の短縮、家族の不安軽減、自治体職員の負担軽減、ケアマネジャーの業務効率化など、多くの効果が期待されています。
人生100年時代を迎えた日本において、介護は誰にとっても身近な問題です。介護DXの推進は、高齢者本人だけでなく家族や介護現場を支える重要な改革となるでしょう。
参考
日本経済新聞 2026年6月22日 朝刊
「介護認定をデジタル化 28年度までに 郵送やめ手続き短縮」