円建てステーブルコインとドル建てステーブルコインは何が違うのか デジタル通貨でも為替が生じる仕組み編

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ステーブルコインは価格が安定したデジタル通貨と説明されることがあります。

しかし、何に対して価格が安定しているのかを見ることが重要です。

円建てステーブルコインであれば、基本的に1コインを1円相当の価値に連動させることを目指します。

一方、ドル建てステーブルコインであれば、1コインを1ドル相当の価値に連動させることを目指します。

どちらもステーブルコインですが、日本円で生活する人から見れば同じように価格が安定しているわけではありません。

ドル建てステーブルコインはドルに対して安定していても、円とドルの為替相場が動けば円換算した価値は変動します。

ステーブルコインを理解するときには、デジタル通貨であっても為替リスクがなくなるわけではないことを理解する必要があります。

円連動型とは何か

円連動型ステーブルコインとは、日本円の価値に連動するように設計されたステーブルコインです。

例えば1コインが1円相当になる仕組みを考えます。

100万円をステーブルコインへ交換すれば、100万コインを受け取ります。

その100万コインを所定の条件で償還すれば、100万円相当の円へ戻せる仕組みです。

円で給与を受け取り、円で商品を購入し、円で税金を支払う日本国内の利用者にとっては分かりやすい仕組みです。

500万円の自動車なら500万コイン、5000万円の住宅なら5000万コインというように、円建て価格と対応させることができます。

そのため日本国内の決済では、円連動型ステーブルコインとの相性がよいと考えられます。

ドル連動型とは何か

ドル連動型ステーブルコインは、米ドルの価値に連動するよう設計されたステーブルコインです。

代表的なものとしてUSDTやUSDCがあります。

基本的には1コインを1ドル相当の価値に近づけることを目指しています。

例えば1万ドルをステーブルコインへ交換すれば、1万コイン相当を受け取るという考え方です。

利用者から見れば、紙幣としてのドルや銀行預金としてのドルとは異なる形で、デジタル上にドル相当の価値を持つことができます。

世界のステーブルコイン市場ではドル連動型が大きな存在感を持っています。

暗号資産の売買だけでなく、国際的な資金移動や決済などにも利用されています。

USDTとは何か

USDTは、米ドルとの価値の連動を目指す代表的なステーブルコインです。

一般にテザーとも呼ばれます。

1USDTを1ドル付近の価値に維持することを目指しています。

世界の暗号資産市場では、ビットコインなどを売買するときの決済手段として広く利用されてきました。

例えばビットコインを売却した後、すぐに銀行口座のドルへ戻すのではなく、USDTとして保有するという使い方があります。

これによって暗号資産市場の中にいながら、価格変動の大きい暗号資産からドル相当の価値へ資金を移すことができます。

現在では暗号資産取引だけでなく、国際送金などへの利用も注目されています。

USDCとは何か

USDCも米ドルとの価値の連動を目指す代表的なステーブルコインです。

USDTと同じように、基本的には1USDCを1ドル付近で維持することを目指します。

USDTとUSDCはどちらもドル建てステーブルコインですが、発行主体や裏付け資産の管理方法、利用するサービスなどには違いがあります。

したがって、

どちらも1ドルだから同じ

と考えるのではなく、発行者、裏付け資産、償還方法、規制などを確認することが重要です。

これは円建てステーブルコインでも同じです。

どの法定通貨に連動しているかだけでなく、どのような仕組みでその価値を支えているのかを見る必要があります。

円とドルの為替相場はそのまま残る

ステーブルコインになっても、円とドルの関係がなくなるわけではありません。

例えば1ドル150円だとします。

1ドルに連動するステーブルコインを1万コイン持っているとします。

ドルベースでは1万ドル相当です。

円換算すると、

1万ドルに150円を掛けて150万円

となります。

その後、円安が進んで1ドル160円になったとします。

保有しているステーブルコインは同じ1万コインです。

ドルベースでも1万ドル相当のままです。

しかし円換算すると160万円になります。

ステーブルコイン自体がドルに対して値上がりしたわけではありません。

円とドルの為替相場が変化したため、円換算額が増えたのです。

円高になると円換算額は減る

反対に円高になった場合を考えてみます。

1ドル150円のときに1万ドル相当のステーブルコインを保有していれば、円換算では150万円です。

その後1ドル130円になったとします。

1万コインを保有していることは変わりません。

ドルベースでは1万ドル相当です。

しかし円換算すると130万円になります。

20万円減ったことになります。

つまりドル建てステーブルコインは、ドルに対して価格が安定していても、日本円で見れば為替変動商品になります。

1コイン1ドルが維持されていることと、円で見た元本が維持されることは別の問題なのです。

円建てなら為替リスクがないのか

日本円で生活する人が円建てステーブルコインを保有する場合、円との関係ではドル建てのような為替変動は基本的にありません。

1コインが1円相当で安定していれば、100万コインは100万円相当です。

しかし、だからといってあらゆるリスクがないわけではありません。

発行者に関するリスクがあります。

裏付け資産に関するリスクもあります。

償還できるかどうかという問題もあります。

システムやウォレットのリスクもあります。

つまり円建てステーブルコインでは円ドルの為替リスクを考える必要性は低くなりますが、ステーブルコインそのものが持つ別のリスクは残ります。

円からドル建てステーブルコインへ交換すると為替取引になる

日本の利用者がドル建てステーブルコインを購入する場合を考えてみます。

100万円を持っているとします。

1ドル150円なら、単純化すると約6667ドル相当になります。

これをドル建てステーブルコインへ交換すれば、約6667コインを保有することになります。

ここでは実質的に、

ドル相当の価値

へ資金を移しています。

したがって、ドル建てステーブルコインを購入する行為には為替の影響があります。

後で円へ戻すときの為替相場によって、円換算した金額が変わります。

デジタル通貨を購入しているように見えても、経済的には外貨を保有することに近い側面があるわけです。

国際送金ではドル建てが便利な場合がある

一方、国際的な取引ではドル建てステーブルコインが便利になる場合があります。

例えば日本企業が海外企業へ10万ドルを支払うとします。

相手企業がドル建てステーブルコインを受け取れるのであれば、10万ドル相当のステーブルコインを送る方法が考えられます。

受取企業は、

そのままステーブルコインとして保有する

別の取引先へ送る

ドルへ償還する

現地通貨へ交換する

といった選択ができます。

特に銀行口座を複数経由する国際送金と比較して、ブロックチェーン上で直接価値を移転できることがメリットになる可能性があります。

円建てステーブルコインでも国際送金はできる

国際送金だから必ずドル建てステーブルコインを使わなければならないわけではありません。

海外企業が円を必要としているなら、円建てステーブルコインを送ることも考えられます。

例えば海外企業が日本企業から商品を仕入れ、その代金として1億円を支払うとします。

海外企業が1億円相当の円建てステーブルコインを取得し、日本企業へ送る仕組みです。

この場合、決済そのものは円建てで行われます。

つまりステーブルコインは、通貨の種類と送金ネットワークを分けて考えられる点が重要です。

円だから日本国内だけで使う、ドルだから米国内だけで使うという必要はありません。

デジタルネットワーク上では国境を越えて移転できる可能性があります。

為替交換そのものもデジタル化する可能性がある

さらに将来的には、円建てステーブルコインとドル建てステーブルコインを直接交換する仕組みも考えられます。

例えば、

150万円相当の円建てステーブルコイン

1万ドル相当のドル建てステーブルコイン

を交換します。

両方がデジタル資産であれば、一定の為替レートに基づいてデジタル上で交換することが可能になります。

円から銀行預金のドルへ交換し、そのドルを海外へ送るという従来の流れとは異なる外国為替取引が生まれる可能性があります。

ただし、円とドルの交換レートそのものがなくなるわけではありません。

ステーブルコインになっても、円とドルの需要と供給によって為替相場は存在します。

デジタル化しても通貨の違いは消えない

ステーブルコインが世界的に普及すると、一つのデジタル通貨で世界中の決済が行われるように感じるかもしれません。

しかし現実には、

ドル

ユーロ

など、それぞれの法定通貨に連動したステーブルコインが存在します。

デジタル化によって送金方法は共通化できても、通貨そのものの違いは残ります。

日本企業がドル建てステーブルコインで売上代金を受け取れば、円換算した売上額は為替相場の影響を受けます。

個人がドル建てステーブルコインを保有する場合も同じです。

ステーブルという言葉は、すべての通貨に対して価格が安定しているという意味ではありません。

何に対してステーブルなのかを見ることが重要です。

結論

円建てステーブルコインとドル建てステーブルコインの最大の違いは、価値を連動させる法定通貨です。

円建てであれば1コインを1円相当に、ドル建てであれば1コインを1ドル相当に維持することを目指します。

USDTやUSDCは代表的なドル建てステーブルコインです。

ドルに対して価格が安定していても、日本円で見た価値まで安定しているわけではありません。

例えば1万ドル相当のステーブルコインは、1ドル150円なら150万円ですが、1ドル160円なら160万円、1ドル130円なら130万円になります。

つまりドル建てステーブルコインを日本円から購入する場合には、実質的に為替リスクを負うことになります。

一方、国際送金では、円建てやドル建てのステーブルコインをブロックチェーンなどのネットワーク上で直接移転できる可能性があります。

さらに将来的には、円建てステーブルコインとドル建てステーブルコインをデジタル上で直接交換する市場が発展することも考えられます。

ステーブルコインによってお金の移動方法は大きく変わる可能性があります。

しかしデジタル通貨になっても、円とドルという通貨の違いや為替相場そのものが消えるわけではありません。

ステーブルコインを見るときには、価格が安定しているかどうかだけでなく、何の通貨に対して安定しているのかを確認することが重要なのです。

参考

日本経済新聞 2026年8月25日 朝刊 家・車もステーブルコイン

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