企業が保有する棚卸資産は、決算時に適切な価額で評価しなければなりません。その評価方法として代表的なのが「原価法」と「低価法」です。
特に低価法は、在庫の価値が下落した場合に早期に損失を反映できる方法として広く知られていますが、会計と税務では考え方や適用方法に違いがあります。
今回は、低価法の基本的な仕組みや原価法との違い、税務上の届出、適用する際のメリットと注意点について解説します。
低価法とは
低価法とは、取得原価と時価を比較し、いずれか低い金額で棚卸資産を評価する方法です。
例えば、取得原価が100万円の商品でも、決算時点で販売価格が下落し、時価が80万円となっている場合には、80万円で評価します。
このように、将来回収できない可能性がある価値の下落を決算に反映することで、財務諸表の信頼性を高めることができます。
原価法との違い
原価法は、棚卸資産を取得したときの原価で評価する方法です。
一方、低価法では、決算時に価値が下落していれば時価まで評価額を引き下げます。
つまり、
- 原価法は取得原価を基本とする評価方法
- 低価法は価値の下落を決算に反映する評価方法
という違いがあります。
会計では収益性の低下が認められた場合には簿価の切下げが求められますが、税務では原価法と低価法のいずれかを選択する制度となっています。
税務上の届出が必要になる
税務上で低価法を採用する場合には、事前に税務署へ届出を行う必要があります。
届出を行わない場合には、法定評価方法である原価法が適用されます。
また、一度採用した評価方法を変更する場合にも、所定の手続きが必要となります。
決算時だけ低価法を使って節税しようとしても認められないため、継続適用が前提となる制度です。
低価法を採用するメリット
低価法には次のようなメリットがあります。
第一に、在庫価値の下落を早期に財務諸表へ反映できることです。
第二に、実際の資産価値に近い金額で棚卸資産を表示できるため、決算書の信頼性が高まります。
第三に、価格変動が大きい商品を取り扱う企業では、経営実態をより適切に表現できる点もメリットです。
市場環境の変化が激しい業種ほど、低価法の有効性は高くなります。
低価法を適用する際の注意点
低価法は便利な制度ですが、自由に評価損を計上できるわけではありません。
税務上は、「単に売れない」「在庫が動かない」という理由だけでは評価損は認められません。
災害による損傷や陳腐化、品質低下など、一定の事実が客観的に認められることが必要です。
また、評価額の算定根拠となる販売価格や市場価格、処分見込価額などの資料を保存しておくことも重要になります。
会計と税務の違いを理解する
実務では、会計上は評価損を計上していても、税務上は損金として認められないケースがあります。
会計は企業の財政状態を適正に表示することを目的としていますが、税務は課税所得を公平に計算することが目的です。
この違いを理解しないまま処理すると、税務調査で修正を求められる可能性があります。
経理担当者は、会計処理だけでなく税務上の要件についても十分理解しておくことが重要です。
結論
低価法は、棚卸資産の価値下落を適切に決算へ反映するための重要な評価方法です。
一方で、税務上は事前の届出や継続適用が必要であり、評価損を認めてもらうためには客観的な根拠も求められます。
会計と税務の違いを正しく理解し、適切な評価方法を継続的に運用することで、信頼性の高い決算書の作成と税務リスクの低減につなげることができるでしょう。
参考
企業実務 2026年8月号
「問題在庫を洗い出す!中間決算棚卸から始める『棚卸資産評価損』の実務」 大野貴史氏