令和10年1月1日に非上場株式評価が変わる可能性はあるのか 施行時期をめぐる議論編

税理士
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非上場株式の評価方法について、国税庁では60年以上続いてきた評価体系の抜本的な見直しが議論されています。

中小企業オーナーにとって気になるのは、新しい評価方法がいつから適用されるのかという点です。

今回のインタビューで高橋達也税理士は、国税庁が見直し後の評価方法について、令和10年1月1日の施行を考えているのではないかとの見方を示しています。

ただし、これは高橋氏が示した見通しであり、令和10年1月1日の施行が正式に決定されたという意味ではありません。

評価方式そのものだけでなく、還元率などの具体的な数値、経過措置、周知期間など、まだ確認すべき事項があります。

事業承継を予定している企業にとっては、施行日の数字だけを見るのではなく、そこに至るまでの制度決定の流れを確認することが重要です。

令和10年1月1日は正式決定ではない

まず最も重要なのは、令和10年1月1日という日付の位置付けです。

今回の記事で高橋氏は、国税庁が新しい評価方法について令和10年1月1日の施行を考えているのではないかとの見方を示しています。

したがって、現段階では確定した施行日として扱うべきではありません。

今後の議論や税制改正の内容によって、施行時期が変わる可能性もあります。

経営者が事業承継計画を考える場合には、令和10年1月1日を確定した期限と決めつけるのではなく、一つの注目時期として見ておく必要があります。

なぜ令和10年という時期が注目されるのか

今回の評価見直しは、令和8年4月に国税庁の有識者会議が始まり、同年8月の第5回会議では評価方法の見直し案となるたたき台が提示されました。

一方、高橋氏は、事務局が令和9年度税制改正大綱への記載を意識して議論を進めているのではないかと指摘しています。

仮に令和9年度税制改正の中で新しい評価方法の方向性が示され、その後に具体的な通達改正や周知を行うのであれば、その次の段階として令和10年からの適用が想定されるという見方が出てくるわけです。

ただし、評価方法の詳細が確定していなければ、企業側も具体的な対応はできません。

税制改正大綱と施行日は別のもの

ここで整理しておきたいのが、税制改正大綱と実際の施行日の違いです。

税制改正大綱に制度の方向性が記載されたとしても、その日から新制度が適用されるとは限りません。

大綱では、今後どのような制度変更を行うのかという基本方針が示されます。

その後、法律改正が必要なものについては法案が作られます。

今回のような財産評価基本通達の変更であれば、国税庁による具体的な通達改正などが必要になります。

さらに、実務への周知やシステム対応、税理士への説明なども必要になります。

つまり、方向性が決まる時期と、実際に新しい評価方法が適用される時期は別に考える必要があります。

評価方式が決まっても数値が決まらなければ動けない

今回の見直しでは、残余利益方式が重要な論点となっています。

しかし、残余利益方式という名称だけでは、実際の自社株評価額は計算できません。

特に重要なのが還元率です。

還元率を何%とするのか。

どの利益を使うのか。

純資産をどのように評価するのか。

一時的な利益変動をどう扱うのか。

こうした具体的な数字や計算ルールが決まらなければ、自社株評価への影響を正確に試算することはできません。

したがって、企業にとって本当に重要なのは、施行日だけではありません。

まず見るべきは評価額の比較試算

新制度の内容が示された場合、最初に確認したいのが現行方式との比較です。

現在の評価方法ではいくらになるのか。

新しい評価方法ではいくらになるのか。

その差はいくらなのか。

評価額は何%増減するのか。

こうした比較を会社ごとに行う必要があります。

例えば、現行評価で1億円だった自社株が、新制度では1億1,000万円になる会社と、2億円になる会社では、対応の必要性がまったく違います。

制度名だけを見るのではなく、自社への具体的な影響を見ることが重要です。

施行前に何を準備すべきなのか

新しい評価方式が正式に決まる前でも、企業側で準備できることがあります。

まず、自社株の現在の評価額を確認します。

次に、過去数年間の利益と純資産の推移を整理します。

経営者が何%の株式を持っているのかも確認します。

後継者が決まっているのか。

株式をすでに一部移転しているのか。

事業承継税制を利用しているのか。

こうした基本情報を整理しておけば、新制度の内容が公表されたときに影響を比較しやすくなります。

制度が確定する前に株式を移せばよいのか

ここで注意したいのが、改正前の駆け込みです。

新しい制度では評価額が上昇する可能性があると聞けば、今のうちに後継者へ株式を贈与した方がよいと考える人もいるでしょう。

しかし、現段階では最終的な評価方法や還元率、施行日が正式に確定しているわけではありません。

しかも、株式の贈与には税金以外の問題があります。

議決権が移ります。

会社の支配関係が変わります。

他の相続人との関係にも影響します。

一度移した株式を簡単に元へ戻せるとは限りません。

したがって、改正への不安だけを理由に株式移転を急ぐことは慎重に考える必要があります。

令和10年まで時間があるとは限らない

仮に令和10年1月1日が施行時期になったとしても、「まだ1年以上あるから何もしなくてよい」と考えるのも注意が必要です。

事業承継の準備には時間がかかります。

自社株評価を行う。

後継者と話し合う。

家族と調整する。

事業承継税制の利用を検討する。

必要であれば金融機関とも相談する。

株式移転の方法を決める。

こうした作業を進めていると、時間はすぐに経過します。

特に自社株の評価額が大きい会社ほど、早めに現状を確認しておく意味があります。

一方で結論を急ぎすぎない

準備を早く始めることと、株式移転そのものを急ぐことは違います。

今できるのは、現状を把握することです。

自社株評価を確認し、後継者や承継方針を整理する。

そして新制度が公表されたら、すぐに現行制度と比較できる状態にしておく。

この準備であれば、制度が最終的にどのような内容になっても無駄になりにくいでしょう。

一方、制度が確定する前に大きな取引を実行すれば、後から制度内容が想定と違っていたということもあり得ます。

経過措置の有無で対応は大きく変わる

もう一つ重要なのが経過措置です。

仮に令和10年1月1日から新制度になるとしても、すべての案件についてその日から一律に新方式へ切り替えるとは限りません。

すでに事業承継を進めている企業には旧制度を一定期間認める可能性もあります。

段階的に新制度へ移行する仕組みが設けられる可能性もあります。

逆に、経過措置がほとんど設けられない可能性もあります。

この違いによって、施行日前に取るべき対応は大きく変わります。

周知期間も確認する必要がある

制度が正式に決まってから施行まで、どの程度の期間があるのかも重要です。

評価方法を大きく変更する場合、税理士が制度を理解し、企業ごとに評価額を計算し直す時間が必要です。

企業側も事業承継計画を見直す必要があります。

数カ月程度の周知期間で十分なのか。

1年以上必要なのか。

今回のような大規模な見直しでは、制度内容だけでなく準備期間の長さも実務に大きく影響します。

税理士への相談は制度確定後だけでよいのか

今回のテーマでは、制度が確定してから初めて税理士へ相談するのでは遅くなる可能性があります。

制度の詳細が決まっていなくても、現在の自社株評価を確認することはできます。

既存の事業承継計画を整理することもできます。

事業承継税制の適用状況を確認することもできます。

こうした準備をしておけば、新制度が公表されたときに、変更前後の影響を迅速に比較できます。

今回の改正では議論のスピードも論点になっている

高橋氏は、今回の有識者会議について、60余年ぶりの大改正にもかかわらず短期間で決着を急いでいるように見えると問題提起しています。

特に、令和9年度税制改正大綱への記載を優先することで、十分な議論ができなくなるのではないかとの懸念を示しています。

これは高橋氏の見解ですが、制度変更の内容だけでなく、どれだけ時間をかけて検討するのかという問題も重要です。

大幅な評価制度変更であれば、企業への影響を具体的に試算したうえで議論する必要があります。

施行時期より重要なのは制度の完成度

経営者にとっては、いつ制度が変わるのかが気になるところです。

しかし、本質的には施行を早くすることが目的ではありません。

公平で分かりやすい評価制度になっているのか。

企業ごとの影響が検証されているのか。

事業承継への影響が考慮されているのか。

十分な経過措置があるのか。

こうした制度の完成度の方が重要です。

施行時期だけを先に決め、詳細を急いで決めるような形になれば、実務上の混乱を招く可能性があります。

令和9年度税制改正大綱が重要な節目になる

今後の流れを見るうえでは、令和9年度税制改正大綱が一つの重要な節目になります。

そこに非上場株式の評価見直しがどのように記載されるのか。

具体的な評価方式まで示されるのか。

施行時期が示されるのか。

経過措置について触れられるのか。

事業承継税制との関係がどう整理されるのか。

これらを確認することで、制度の方向性がより明確になる可能性があります。

中小企業オーナーが見るべき5つのポイント

今後の制度発表では、少なくとも5つの点を確認する必要があります。

まず、正式な施行日です。

次に、具体的な評価方式です。

さらに、還元率などの具体的な数値です。

そして、経過措置です。

最後に、事業承継税制との関係です。

この5つが分からなければ、自社への影響を正確に判断することはできません。

今は改正前後を比較できる準備をする

制度が確定していない現在の段階では、未来の評価額を断定することはできません。

しかし、現在の評価額を知っておけば、制度決定後に比較できます。

例えば、

現在の自社株評価額

年間利益

純資産

経営者の保有株数

後継者への移転済み株式

今後の承継予定

を整理しておくことです。

新制度が示されたら、同じ会社について新方式で計算し、差を確認します。

その差が初めて具体的な判断材料になります。

結論

令和10年1月1日は、今回の非上場株式評価見直しを考えるうえで注目される時期の一つです。

ただし、現段階で正式な施行日として確定しているわけではなく、高橋達也税理士がインタビューで示した見通しとして捉える必要があります。

重要なのは、日付だけではありません。

新しい評価方法が具体的にどうなるのか。

還元率はどう設定されるのか。

現行方式から評価額がどの程度変わるのか。

経過措置は設けられるのか。

事業承継税制との関係はどう整理されるのか。

これらがそろって初めて、自社への影響を判断できます。

中小企業オーナーが今行うべきなのは、制度が確定していない段階で慌てて株式を動かすことではなく、現在の自社株評価と事業承継計画を整理しておくことです。

そうすれば、新制度が明らかになったときに、現行制度と比較しながら冷静に対応できます。

次回は、評価改正前に自社株対策を急いだ方がよいのかという問題を取り上げます。

改正前の生前贈与や株式移転にはどのようなメリットとリスクがあるのか。

いわゆる駆け込み対策を考えるときに注意したいポイントを整理します。

参考

税のしるべ 2026年9月14日 財務省主税局で相続税・贈与税等の企画・立案に従事した高橋達也氏に取引相場のない株式の評価見直しについて聞く

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