介護現場のカスタマーハラスメントとは何か 利用者への配慮と職員保護を両立させる必要がある理由編

人生100年時代
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介護サービスでは、利用者や家族の希望を丁寧に聞き、できる限りその人に合った支援を提供することが求められます。

一方で、利用者だからどのような要求や言動でも許されるわけではありません。

暴言や威圧、長時間にわたる拘束、過剰な要求などによって介護職員が精神的、身体的な負担を受けるカスタマーハラスメントが問題になっています。

介護サービスを長く維持していくためには、利用者への配慮と同時に、サービスを提供する職員を守る視点が欠かせません。

介護現場のカスハラとは何か

カスタマーハラスメントは、一般に顧客や利用者などからの要求や言動のうち、その内容や要求を実現するための手段などが社会通念上不相当で、働く人の就業環境を害するものを指します。

介護の現場では、利用者本人だけでなく、その家族から職員が強い要求を受けることもあります。

例えば、大声で怒鳴る、人格を否定する言葉を繰り返す、長時間にわたって職員を拘束する、契約に含まれていないサービスを執拗に要求するといった行為です。

訪問介護やケアマネジャーの訪問では利用者宅で一対一になることもあり、第三者の目が届きにくいという特徴もあります。

一般的な店舗での接客とは異なる難しさがあります。

正当な苦情までカスハラになるわけではない

ここで重要なのは、利用者や家族からの苦情をすべてカスハラと考えてはいけないことです。

例えば、予定された介護サービスが提供されなかった、職員の説明が不十分だった、ケアプランの内容について疑問があるといった場合、利用者が説明や改善を求めること自体は当然です。

介護サービスを改善するためには、利用者からの意見や苦情を受け止める仕組みが必要です。

問題になるのは、要求の内容やその伝え方が社会的に許容される範囲を超えている場合です。

正当な要望なのか、それとも職員の就業環境を害するハラスメントなのかを区別する必要があります。

暴言や威圧的な言動も大きな負担になる

カスハラというと、身体的な暴力を想像するかもしれません。

しかし、介護現場では精神的な攻撃も深刻です。

怒鳴られる、人格を否定される、何度も同じ要求を繰り返される、長時間帰らせてもらえないといった行為でも、職員に大きな心理的負担がかかります。

一度だけではなく、同じ利用者や家族との関係が長期間続くことも介護サービスの特徴です。

担当者が我慢を続ければ、仕事への意欲が低下したり、離職につながったりする可能性があります。

一人の職員の問題として処理するのではなく、組織として対応することが重要になります。

介護だから我慢するという考え方には限界がある

介護の仕事では、利用者の身体状況や認知機能などを考慮しなければならない場面があります。

利用者の言動だけを切り取って単純に判断できない場合もあります。

だからこそ現場の対応は難しくなります。

しかし、介護の仕事だから職員が何でも我慢しなければならないということにはなりません。

職員が危険を感じた場合には上司へ報告し、必要に応じて複数人で訪問したり、担当者を変更したりする仕組みが必要です。

さらに、暴力や脅迫などがあれば、事業所の中だけで抱え込まず、行政や警察など外部機関との連携を検討することも必要になります。

カスハラ対策は利用者を守ることにもつながる

職員を守る対策は、一見すると利用者へのサービスを制限するもののように見えるかもしれません。

しかし、長期的には逆です。

職員が安心して働けない職場では離職者が増え、人手不足がさらに深刻になります。

担当する職員が頻繁に交代すれば、利用者にとっても安定した介護サービスを受けにくくなります。

介護人材が不足すれば、必要なサービスそのものを提供できなくなる可能性もあります。

職員が安全に働ける環境を整えることは、介護サービスを受ける利用者の利益にもつながるのです。

利用者と職員のどちらかを選ぶ問題ではない

介護現場のカスハラ問題では、利用者の権利と職員の権利を対立させて考えないことが重要です。

利用者には適切な介護サービスを受ける権利があります。

同時に、介護職員にも安全な環境で働く権利があります。

必要なのは、どちらか一方を優先することではありません。

正当な苦情には真摯に対応する一方、社会通念上許容できない暴言や暴力、過剰な要求については明確な線を引くことです。

その判断を現場の職員一人に任せず、事業所として基準を設け、組織で対応する仕組みが求められます。

結論

介護現場のカスタマーハラスメントは、単なる利用者と職員の人間関係の問題ではありません。

暴言や威圧的な言動などによって職員が疲弊し、離職につながれば、介護サービスを支える人材そのものが減ってしまいます。

一方で、利用者や家族による正当な苦情や改善要求までカスハラとして扱うことも適切ではありません。

重要なのは、正当な苦情とハラスメントの境界を明確にし、職員個人ではなく組織として対応することです。

高齢化によって介護需要が増えていくほど、介護を受ける人だけではなく、介護を提供する人を守る仕組みが重要になります。

利用者への配慮と職員の安全確保は対立するものではありません。

双方を守ることによって初めて、持続可能な介護サービスをつくることができるのです。

参考

日本経済新聞 2026年9月10日 朝刊 ケアマネ8割に「カスハラ」

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