相続土地は負動産から資産へ変わるのか 国庫帰属制度改革編

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相続した土地をどうするか――。これは今後、多くの高齢者やその家族が直面する課題です。

人口減少や地方の過疎化が進むなか、相続したものの利用予定がなく、売却も難しい土地が全国で増えています。こうした問題に対応するため、2023年に「相続土地国庫帰属制度」が始まりました。しかし、国が引き取った土地の多くは買い手が見つからず、制度の運営にも課題が生じています。

今回、財務省は国が引き取った相続土地について、評価額を最大9割以上引き下げて売却できる仕組みを検討しています。この見直しは、今後の相続対策や土地活用の考え方に大きな影響を与える可能性があります。

相続土地問題が深刻化している理由

日本では高齢化と人口減少が進み、地方を中心に土地需要が減少しています。

かつては「土地は持っていれば価値が上がる資産」と考えられていました。しかし現在では、利用予定もなく、買い手も見つからず、固定資産税や草刈り費用だけが発生する土地が増えています。

特に地方の山林や農地、住宅地では相続人が土地を受け継ぐことを望まないケースが珍しくありません。

その結果として所有者不明土地が増加し、公共事業や災害復旧の妨げになるなど、社会問題へと発展しています。

相続土地国庫帰属制度とは何か

こうした問題を解決するため、2023年に相続土地国庫帰属制度が創設されました。

この制度では、一定の要件を満たした土地について、相続人が国へ引き渡すことができます。

これまで相続放棄をしても土地だけ放棄することはできず、相続人が管理責任を負い続けるケースもありました。

制度の創設により、不要な土地を国が引き受ける道が開かれましたが、国が引き取った後の処分が大きな課題となっています。

なぜ売却実績がゼロだったのか

財務省によれば、国が引き取った土地について一般競争入札による売却を進めてきましたが、実績はゼロでした。

理由は単純です。

需要が乏しい土地を市場価格で売ろうとしても、買い手が現れないからです。

また、測量や境界確認、地下埋設物の調査などが必要となり、購入希望者にとっては追加コストやリスクが大きくなります。

結果として、国が土地を保有し続けることになり、維持管理費用だけが増えていく状況となっていました。

評価額最大93%引き下げの意味

今回の見直し案では、まず価格を3割下げ、それでも売れない場合には3カ月ごとに1割ずつ減額し、最終的には最大93%まで価格を引き下げられるようになります。

さらに随意契約を認めることで、一般競争入札より柔軟な売却が可能になります。

これは単なる値下げではありません。

国が抱える土地を市場に戻し、再活用を促進する政策転換とも言えます。

これまで「売れない土地」とされていた場所にも、新たな利用価値を見いだす民間事業者や地域住民が現れる可能性があります。

現状有姿売買がもたらす変化

今回の見直しでは「現状有姿売買」の導入も検討されています。

これは測量や地下埋設物調査などを行わず、現在の状態のまま売却する方法です。

不動産業界では一般的な取引手法ですが、国有地売却で本格的に導入される意義は大きいと言えます。

調査費用や売却手続きの負担が軽減されるため、処分までの期間短縮につながります。

一方で購入者側にはリスクもあるため、価格設定や情報開示のあり方が重要になります。

人生100年時代の相続対策は土地選別の時代へ

人生100年時代において、相続対策は「財産を増やす」だけでは不十分です。

これからは「残して困る財産をどう整理するか」が重要になります。

現金や金融資産は分割しやすい一方で、利用価値の低い土地は相続人の負担になることがあります。

特に地方の空き家や山林、耕作されていない農地を保有している家庭では、生前から出口戦略を考える必要があります。

相続人が困らないよう、売却や活用、国庫帰属制度の利用可能性まで含めて検討することが求められるでしょう。

税理士や専門家の役割も変わる

これまで相続対策といえば節税が中心でした。

しかし今後は「管理できない資産をどう整理するか」という視点が重要になります。

税理士、司法書士、不動産会社などの専門家には、単なる税額計算だけでなく、資産の出口戦略を提案する役割が期待されます。

相続人が受け継いで困る土地を減らすことは、家族だけでなく社会全体の利益にもつながるからです。

結論

相続土地国庫帰属制度の見直しは、単なる土地価格の引き下げではありません。

人口減少社会のなかで増え続ける所有者不明土地問題への現実的な対応策であり、「土地は必ず資産になる」という従来の常識を見直す転換点でもあります。

人生100年時代の相続対策では、財産を増やすことと同じくらい、不要な資産を整理する視点が重要になります。

これからは相続税対策だけでなく、「相続後に困らない資産構成」を考えることが、本当の意味での相続対策になるのではないでしょうか。

参考

日本経済新聞 2026年6月18日朝刊
「国の相続土地、評価額下げ実現へ『制度見直しを』 財制審」

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