マンションは長年にわたり「資産」として位置づけられてきました。特に都市部では、値上がりや利便性を背景に、持ち家としての合理性が語られてきた経緯があります。
しかし、老朽化の進行や管理不全の問題が顕在化する中で、その前提は揺らぎつつあります。区分所有という仕組みのもとで、マンションは本当に資産といえるのか。本稿ではその構造を整理します。
資産とされてきた理由
マンションが資産とされてきた理由は大きく三つあります。
第一に、立地価値です。都市部においては土地の希少性が高く、マンションであっても価格が維持または上昇するケースが多く見られました。
第二に、流動性です。戸建てと比較して売買がしやすく、市場での取引が成立しやすいという特徴があります。
第三に、利用価値です。自ら居住するという実需があるため、単なる投資商品とは異なる安定性があると考えられてきました。
これらの要素が重なり、マンションは「持っていれば価値があるもの」として認識されてきました。
見落とされてきたコスト構造
一方で、マンションには継続的なコストが存在します。
・管理費
・修繕積立金
・将来的な大規模修繕費
・建替え時の追加負担
これらは時間とともに増加する傾向があり、特に築年数が進むにつれて負担感は大きくなります。
さらに重要なのは、これらのコストが「自分一人ではコントロールできない」という点です。管理組合の意思決定に依存するため、合理的な判断が必ずしも実現されるとは限りません。
この構造は、一般的な資産とは大きく異なる特徴です。
区分所有という制約
マンションの最大の特徴は、区分所有という仕組みにあります。
専有部分は個人の所有である一方、建物全体や敷地は共有されており、意思決定は多数決に委ねられます。
このため、以下のような問題が生じます。
・修繕や建替えの合意形成が難しい
・少数の反対や無関心が全体の意思決定を止める
・所有者の高齢化により判断が遅れる
つまり、個人の資産でありながら、完全にはコントロールできないという構造を持っています。
老朽化がもたらす転換点
マンションは時間とともに必ず老朽化します。
新築時には資産として機能していたものが、一定の時期を境に性質を変えることがあります。
・修繕費が増加する
・市場価格が下落する
・買い手がつきにくくなる
この段階に入ると、マンションは「価値を生む資産」から「維持コストを伴う存在」へと変化します。
ここで重要なのは、この転換が緩やかに、かつ不可逆的に進む点です。
負債化するメカニズム
マンションが負債的な性質を持つようになる背景には、三つの要因があります。
第一に、出口の制約です。売却が難しくなることで、資産としての流動性が失われます。
第二に、コストの固定化です。管理費や修繕費は所有している限り発生し続けます。
第三に、意思決定の停滞です。必要な対応が遅れることで、さらに価値が低下するという悪循環が生じます。
これらが重なることで、マンションは「持ち続けること自体がリスクになる存在」へと変わる可能性があります。
改正区分所有法との関係
今回の区分所有法改正は、まさにこの問題に対応するものです。
・意思決定の要件緩和
・再生手法の多様化
・行政の関与強化
これらは、マンションが負債化する前に対応を可能にする仕組みといえます。
裏を返せば、制度が整備されなければ対応できないほど、問題が深刻化していることを意味しています。
資産か負債かは「状態」で決まる
結論として、マンションは一律に資産でも負債でもありません。
重要なのは「状態」です。
・立地
・築年数
・管理状況
・所有者構成
これらの要素によって、その性質は大きく変わります。
つまり、購入時点で資産であったとしても、将来にわたって資産であり続ける保証はありません。
結論
マンションは「所有するだけで価値があるもの」ではなく、「管理し続けて初めて価値を維持できるもの」です。
そして、その管理は個人ではなく、共同体として行われるという特性を持っています。
この前提に立たなければ、マンションという資産の本質を見誤ることになります。
今後は、「買うかどうか」だけでなく、「どう維持し、どう手放すか」まで含めて考えることが求められます。
参考
・日本FP協会 Journal of Financial Planning 2026年4月号 区分所有法等の改正の概要
・国土交通省 マンション政策関連資料
・法務省 建物の区分所有等に関する法律 改正資料