ケアマネジャーはなぜ不足しているのか 高齢者が増えても担い手が簡単には増えない理由編

人生100年時代
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高齢化が進む日本では、介護を必要とする人が増えるだけではありません。

その人に必要な介護サービスを組み合わせ、事業者や医療機関などとの調整を担うケアマネジャーの需要も増えていきます。

ところが、ケアマネジャーは必要になったからといって、すぐに人数を増やせる職種ではありません。

資格を取得するまでに一定の実務経験が必要であり、資格を取得した後も業務負担の重さなどから、必ずしもすべての資格保有者がケアマネジャーとして働いているわけではないからです。

今後の介護制度を考えるうえでは、介護職員だけではなく、介護サービスを調整する人材の不足にも目を向ける必要があります。

ケアマネジャーは約18万6000人

厚生労働省によると、2024年10月時点でケアマネジャーとして働く介護支援専門員の従事者数は約18万6000人です。

決して少ない人数ではありません。

しかし、日本では高齢化がさらに進みます。

特に2040年ごろには高齢者人口そのものだけではなく、介護を必要とする可能性が高い高齢層の増加が見込まれています。

介護サービスを利用する人が増えれば、それに伴ってケアプランを作成したり、サービス事業者との調整を行ったりするケアマネジャーも必要になります。

日本総合研究所の報告では、2022年度から2040年度にかけて、ケアマネジャーの需要が最大8万3000人増える可能性が示されています。

現在の人数だけを見て十分かどうかを判断するのではなく、将来の需要まで考える必要があります。

資格を取るまでに時間がかかる

ケアマネジャー不足を考えるうえで重要なのが、誰でもすぐになれる仕事ではないということです。

介護支援専門員実務研修受講試験を受けるには、対象となる資格や業務について一定の実務経験が求められます。

試験に合格すれば、その日からケアマネジャーとして働けるわけでもありません。

実務研修を修了するなど、必要な手続きを経ることになります。

つまり、需要が増えたから来年から大量に人材を増やそうとしても難しいのです。

介護現場などで経験を積み、その後ケアマネジャーになるという人材育成には時間がかかります。

将来不足すると分かってから対策を始めるのでは遅いという特徴があります。

資格を持っていても働かない人がいる

もう一つ重要なのが、資格保有者数と実際にケアマネジャーとして働いている人数は同じではないことです。

資格を取得しても、別の介護職として働く人や、ケアマネジャー業務から離れる人がいます。

資格取得者を増やすだけでは、人手不足が解決するとは限りません。

なぜ資格を持つ人がケアマネジャーとして働き続けないのかを考える必要があります。

その背景の一つとして指摘されるのが、業務負担です。

ケアプランをつくるだけが仕事ではない

ケアマネジャーの仕事というと、ケアプランの作成を思い浮かべる人が多いでしょう。

しかし、実際の仕事はそれだけではありません。

利用者や家族との面談、介護サービス事業者との連絡調整、サービス担当者会議、利用者の状態確認、書類作成など、さまざまな業務があります。

さらに、利用者や家族から介護保険の範囲を超えた相談を受けることもあります。

医療、住まい、家族関係、生活上の困り事など、高齢者を取り巻く問題は複雑です。

ケアマネジャーが直接解決する問題ではなくても、相談の窓口になることがあります。

こうした仕事が積み重なることで、一人当たりの負担が重くなりやすいのです。

カスハラも人材不足と無関係ではない

さらに見逃せないのが、利用者や家族からのカスタマーハラスメントです。

東京都介護支援専門員研究協議会がケアマネジャー709人を対象に実施した調査では、約8割がカスハラを受けた経験があると回答しました。

威圧的な言動や精神的な攻撃、長時間の拘束などが問題となっています。

特にケアマネジャーは利用者宅を訪問することがあり、一人で対応するケースもあります。

こうした心理的な負担まで加われば、資格を持っていても別の仕事を選ぶ人が出てきても不思議ではありません。

人材不足を解決するには、入口となる資格取得者を増やすだけでなく、現在働いている人が辞めずに済む環境を整える必要があります。

人手不足がさらに業務負担を重くする

人手不足には悪循環が生じる可能性があります。

ケアマネジャーが不足すると、一人のケアマネジャーが担当する仕事の負担が重くなります。

負担が重くなると、離職する人が増える可能性があります。

すると残った人の負担がさらに重くなります。

カスハラ対策として複数人で利用者宅を訪問することも有効ですが、人員に余裕がなければ二人体制を組むことさえ難しくなります。

人材不足は単なる人数の問題ではなく、安全対策やサービスの質にも影響するのです。

2040年を見据えた対策が必要になる

ケアマネジャー不足への対応では、資格取得者を増やすことと、働き続けられる環境を整えることの両方が必要です。

資格取得や研修のあり方を検討することも一つでしょう。

同時に、書類作成などの事務負担を軽減したり、デジタル化によって業務を効率化したりすることも重要です。

カスハラへの組織的対応や複数人訪問など、安全面の対策も必要になります。

さらに、ケアマネジャーが本来担うべき専門的な業務と、それ以外の業務を整理することも課題です。

限られた人材にあらゆる問題を背負わせる仕組みでは、需要が増える2040年を乗り切ることは難しくなります。

結論

ケアマネジャー不足は、高齢者が増えるから人数が足りなくなるという単純な問題ではありません。

ケアマネジャーになるまでには一定の実務経験や研修が必要であり、短期間で大量に人材を育成することは困難です。

さらに、資格を取得しても実際にはケアマネジャーとして働かない人がいます。

業務負担や利用者、家族との調整、カスハラなど、働き続けるうえでの負担にも目を向ける必要があります。

これから重要になるのは、資格を取る人を増やすという入口の対策と、現在働いている人が辞めないという出口の対策を同時に進めることです。

介護を必要とする人が増えても、そのサービスを組み立てる人がいなければ制度は十分に機能しません。

2040年を見据えれば、ケアマネジャーの確保は日本の介護制度を持続させるための重要な課題なのです。

参考

日本経済新聞 2026年9月10日 朝刊 ケアマネ8割に「カスハラ」

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