介護の複数人訪問とは何か 一人で利用者宅を訪問しない方がよいケースがある理由編

人生100年時代
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訪問介護やケアマネジャーの仕事では、職員が利用者の自宅を訪ねることがあります。

住み慣れた自宅で介護を受けられることは、利用者にとって大きなメリットです。

一方、職員の立場から見ると、事業所や施設とは違い、第三者の目が届きにくい場所で仕事をすることになります。

利用者や家族から暴言や威圧的な言動を受けた場合でも、一人では対応が難しいことがあります。

そこで安全対策の一つとして注目されているのが、職員が複数人で利用者宅を訪問する仕組みです。

複数人訪問とは何か

複数人訪問とは、一人の利用者宅に職員が一人ではなく、二人以上で訪問することです。

すべての利用者宅を二人体制にするという意味ではありません。

利用者の身体状況やサービス内容、安全上のリスクなどに応じて複数人で対応します。

介助内容によっては、一人では安全にサービスを提供することが難しい場合があります。

さらに近年では、利用者や家族による暴力やカスタマーハラスメントへの対策という意味でも複数人訪問が注目されています。

一人で対応するには危険性が高いケースについて、組織として複数人で対応する考え方です。

なぜ一人での訪問にはリスクがあるのか

介護施設や事業所では、何か問題が起きた場合に周囲の職員へ助けを求めることができます。

しかし、利用者の自宅では事情が異なります。

ケアマネジャーや訪問介護員と利用者、家族だけになることがあります。

暴言を受けても、その場から簡単に離れられないことがあります。

長時間にわたって要求を続けられたり、威圧的な態度を取られたりする可能性もあります。

身体的な暴力へ発展すれば、さらに深刻です。

利用者宅という閉鎖された空間で一人で対応することには、施設内の仕事とは異なるリスクがあるのです。

二人で訪問すると何が変わるのか

複数人訪問には、まず職員の安全性を高める効果が期待できます。

問題が起きたとき、一人ではなくもう一人の職員がいれば、状況を客観的に確認できます。

一人が利用者や家族に対応し、もう一人が事業所へ連絡するといった役割分担もできます。

さらに、第三者がいること自体が、暴言や威圧的な言動を抑える効果を持つ場合もあります。

後になって利用者側と職員側で説明が食い違った場合にも、複数の職員が状況を確認していることは重要です。

複数人訪問は単純に人数を増やすだけではなく、職員を孤立させない仕組みと考えることができます。

公費による支援も進められている

複数人訪問には当然、人件費がかかります。

一人で行っていた訪問を二人にすれば、同じ時間帯に必要となる人員が増えるからです。

特に小規模な介護事業所にとっては大きな負担になることがあります。

そこで公的な支援も進められています。

厚生労働省は、カスハラなどへの対策として複数人で利用者宅を訪問する場合の経費について、補助事業の対象となることを自治体に示しています。

東京都では一定の条件を満たす複数人訪問について、給与相当額を補助する仕組みがあります。

安全対策を事業者だけの負担にするのではなく、公的に支える考え方が広がっているのです。

最大の壁は人手不足

ただし、複数人訪問を増やすうえで大きな問題があります。

介護現場そのものが人手不足だということです。

一人で訪問できるところを二人で訪問すれば、それだけ多くの人員が必要になります。

安全対策として二人体制が望ましくても、そもそも二人目を確保できない事業所も考えられます。

だからといって、すべての訪問を一律に複数人にすることも現実的ではありません。

重要なのは、危険性に応じて限られた人員を重点的に配置することです。

リスクを事前に共有する仕組みが必要

複数人訪問を効果的に利用するには、どの利用者宅にリスクがあるのかを事業所が把握する必要があります。

過去に暴言があったのか、職員への威圧的な言動があったのか、長時間拘束されたことがあるのか、身体的な危険を感じたことがあるのかなどを記録して共有します。

重要なのは、担当者一人の経験で終わらせないことです。

ある職員が危険な経験をしても、その情報が共有されなければ、次の職員が同じ状況に置かれる可能性があります。

一定以上のリスクが確認された場合には複数人訪問へ切り替えるなど、あらかじめ事業所として基準を設けておくことが重要です。

複数人訪問だけですべて解決するわけではない

もちろん、二人で訪問すればカスハラがなくなるわけではありません。

危険性が高いケースでは、訪問方法を変更するだけでは十分ではない場合があります。

事業所の管理者が対応したり、自治体などに相談したりする必要があります。

暴力や脅迫などに発展すれば、警察との連携を検討する場面もあります。

防犯ブザーやICレコーダーなどの機器を活用する方法もあります。

複数人訪問は、こうした安全対策の中の一つとして位置づけることが重要です。

結論

介護の複数人訪問は、一人では安全に対応することが難しい利用者宅に複数の職員で訪問する仕組みです。

特に訪問型の介護サービスでは、利用者宅という第三者の目が届きにくい場所で職員が働きます。

暴言や威圧的な言動などのカスハラが発生した場合、一人で対応させることには限界があります。

一方、介護現場は深刻な人手不足に直面しているため、すべての訪問を二人体制にすることも現実的ではありません。

だからこそ、過去のトラブルなどからリスクを事前に把握し、本当に必要なケースへ人員を重点的に配置することが重要です。

介護サービスを支える人の安全を個人の我慢に任せるのではなく、組織と社会の仕組みで守る。

複数人訪問は、そのための重要な選択肢の一つなのです。

参考

日本経済新聞 2026年9月10日 朝刊 ケアマネ8割に「カスハラ」

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