アクセス通知書とは何か 総会資料を送らずURLだけを郵送する仕組み編

経営

株主総会が近づくと、企業から株主へさまざまな書類が送られてきます。

かつては、事業報告や計算書類、監査報告、株主総会の議案などをまとめた分厚い資料を郵送する方法が一般的でした。

しかし現在は、株主総会資料をインターネット上で提供する電子提供制度が導入されています。

企業は100ページを超えることもある資料そのものを全株主へ送るのではなく、インターネット上の資料を見てもらうことができます。

そこで重要になるのがアクセス通知書です。

アクセス通知書は総会資料そのものではありません。

株主に対して、総会資料をどこで確認できるのかを知らせる案内です。

アクセス通知書とは何か

アクセス通知書とは、株主総会資料をインターネットで確認するために必要な情報などを株主へ知らせる書面です。

電子提供制度では、企業は株主総会資料を自社のウェブサイトなどに掲載します。

しかし、ウェブサイトに掲載しただけでは株主は、

株主総会がいつ開かれるのか

総会資料がどこにあるのか

どのウェブサイトを見ればよいのか

といったことが分かりません。

そこで企業は株主に対して書面で案内を送ります。

株主はその案内を受け取り、記載された情報を使ってインターネット上の総会資料を確認します。

総会資料そのものを送る仕組みではない

アクセス通知書の最大の特徴は、詳しい総会資料そのものを郵送するわけではないことです。

従来の総会資料には、

事業報告

計算書類

監査報告

株主総会の議案

取締役候補者に関する情報

など多くの内容が含まれていました。

企業規模によっては100ページを超える場合もあります。

アクセス通知書では、こうした大量の情報をすべて紙に印刷して送るのではありません。

詳しい内容はインターネット上に置き、その場所を株主へ知らせます。

紙で情報そのものを届ける方法から、情報への入口を届ける方法へ変わったわけです。

URLにはどんな役割があるのか

アクセス通知書に記載される重要な情報の一つが、株主総会資料を閲覧するためのウェブサイトに関する情報です。

株主はスマートフォンやパソコンなどを使い、案内されたウェブサイトへアクセスします。

そこで総会資料を確認します。

たとえば取締役選任議案があれば、候補者の経歴などを電子提供されている資料で確認できます。

会社の業績を知りたければ、事業報告や計算書類などを確認できます。

アクセス通知書は、株主を電子化された総会資料へ案内する入口として機能します。

議決権行使書とは役割が違う

アクセス通知書と一緒に理解しておきたいのが議決権行使書です。

両者は似た時期に株主の手元へ届きますが、役割は違います。

アクセス通知書は、株主総会資料を見るための案内です。

一方、議決権行使書は、株主が株主総会の議案について賛成や反対の意思を示すために使います。

株主はまず総会資料を確認します。

その内容を踏まえて議案について判断し、議決権を行使します。

つまり、

アクセス通知書で情報を確認する

議決権行使書などで意思を示す

という関係になります。

なぜ通知書まで電子化しないのか

ここで疑問が生じます。

総会資料をインターネットで提供するのであれば、アクセス通知書も電子メールなどで送ればよいのではないかという疑問です。

しかし、現在の制度では一定の事項を記載した書面を株主へ交付する仕組みになっています。

株主全員が企業へ電子メールアドレスを登録しているとは限りません。

また、株主が企業のウェブサイトを日常的に確認しているとも限りません。

株主総会は取締役の選任など会社経営に関する重要な意思決定を行う場です。

株主が総会の存在そのものに気づかなければ、議決権を行使する機会を失う可能性があります。

そのため、総会資料を電子化しても、株主に総会開催などを確実に知らせるための書面は残っています。

書面交付請求がなくなってもアクセス通知書は残る

政府は2027年にも会社法を改正し、株主が総会資料を紙で交付するよう企業に求める書面交付請求制度を廃止する方向で検討しています。

しかし、書面交付請求制度が廃止されても、アクセス通知書までなくす予定ではありません。

企業が株主総会の2週間前までに、総会資料をインターネット上で閲覧するための情報などを記載した通知書を株主へ郵送する措置は残す方向です。

つまり制度改正後も、

詳しい総会資料はインターネット

総会資料を見るための案内は郵送

という形が基本になります。

なぜ完全ペーパーレスにならないのか

総会資料の電子化という言葉から、紙が完全になくなるように思うかもしれません。

しかし実際には、完全なペーパーレス化とは異なります。

株主に対して株主総会が開催されることや、資料をどこで確認できるのかを確実に知らせる必要があるからです。

そのため、分厚い資料は電子化しても、比較的少量の通知書は紙で残すという考え方になります。

100ページの資料を100万人へ送る場合と、数ページ程度の案内を送る場合では、必要となる紙の量や郵便物の重量が大きく違います。

すべての紙をなくすのではなく、紙を使う部分を必要最小限にする考え方です。

紙の総会資料には大きなコストがかかる

アクセス通知書だけに切り替える意味は、企業のコストを考えると分かりやすくなります。

東京証券取引所の2024年時点の調査によると、上場企業全体の株主総会書類などの郵送物は年間約2.2億件ありました。

重量では約1万4000トンに達していました。

郵便料金だけでも約300億円のコストがかかっていました。

紙の資料を減らせば、

印刷費

紙代

封入費

郵便料金

発送作業

などの負担を軽減できます。

アクセス通知書は郵送するとしても、分厚い資料一式を郵送する場合に比べれば負担を小さくできます。

アクセス通知書だけにした企業はまだ少ない

電子提供制度が導入されていても、実際には紙の総会資料を送る企業が多く残っています。

東京証券取引所によると、2026年6月の株主総会でアクセス通知書のみの送付に切り替えた企業は、全上場企業の8.6%にとどまりました。

一方、事業報告や計算書類、監査報告など資料一式を送った企業は47.4%でした。

アクセス通知書とサマリー資料を送った企業も44.0%でした。

制度として電子化されても、企業の実務が一気に完全な電子提供へ移行したわけではありません。

書面交付請求の存在が紙を残す一因だった

現在は株主が書面交付請求をすれば、企業が総会資料を紙で提供する仕組みがあります。

そのため企業は、一部の株主のために紙の資料を準備する体制を維持する必要があります。

個別に対応するよりも、最初からすべての株主に紙の資料を送ったほうが事務処理しやすいと判断する企業もあります。

政府が書面交付請求制度の廃止を検討しているのは、この状況を変えるためです。

制度が廃止されれば、アクセス通知書を送り、詳しい資料はインターネットで見てもらう方式へ移行する企業が増える可能性があります。

アクセス通知書は単元株撤廃にも関係する

アクセス通知書の問題は、単なる株主総会のデジタル化だけではありません。

今後、単元株制度が撤廃されて1株から日本株を購入できるようになれば、個人株主が大幅に増える可能性があります。

株主が増えるたびに分厚い総会資料を郵送すれば、企業の負担は急増します。

一方、総会資料を電子化し、株主にはアクセス通知書だけを送る仕組みにすれば、株主1人あたりの管理コストを抑えやすくなります。

つまり、

総会資料を電子化する

アクセス通知書で資料の場所を知らせる

株主管理コストを下げる

個人株主が増えても対応できるようにする

という流れです。

アクセス通知書は、個人株主が増える時代の情報提供を支える重要な仕組みでもあります。

結論

アクセス通知書とは、株主総会資料そのものを株主へ送る代わりに、インターネット上の総会資料を確認するために必要な情報などを知らせる書面です。

電子提供制度では、事業報告や計算書類、監査報告、株主総会の議案などの詳しい情報をインターネット上で提供します。

アクセス通知書は、その情報へ株主を案内する入口です。

一方、議決権行使書は議案について株主が賛否の意思を示すためのものであり、アクセス通知書とは役割が異なります。

政府が2027年にも書面交付請求制度を廃止したとしても、アクセス通知書を郵送する仕組みは残る方向です。

そのため株主総会が完全なペーパーレスになるわけではありません。

重要なのは、紙を完全になくすことではなく、100ページを超えることもある大量の資料を全株主へ郵送する仕組みから、必要最小限の通知だけを郵送する仕組みへ変えることです。

そして株主管理コストを下げることができれば、将来1株投資によって個人株主が大幅に増えた場合にも企業が対応しやすくなります。

アクセス通知書は単なるURLの案内ではありません。

紙中心だった株主総会と、これからのデジタル株主管理をつなぐ役割を持つ書類なのです。

参考

日本経済新聞 2026年8月25日 朝刊 総会資料の書面交付を廃止 企業の負担軽く

日本経済新聞 2026年8月25日 朝刊 総会デジタル化、少額投資後押し

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