2027年1月から始まる「こどもNISA」は、0歳から長期、積み立て、分散投資に取り組める制度です。
子ども向けの資産形成制度として注目したいのが、資金をいつ使えるのかという点です。
以前のジュニアNISAでは、原則として18歳まで資金を払い出せないことが使いにくさの1つとなっていました。
こどもNISAでは、この点が見直され、一定の条件のもとで12歳から引き出せる仕組みになります。
子どものために積み立てたお金を、実際に教育費が増えてくる時期に利用しやすくするわけです。
投資では「いくら増えるか」だけでなく、「いつ使えるか」も重要です。
なぜ12歳という年齢なのか
子どもの教育費は、大学入学時に突然発生するわけではありません。
小学校から中学校、高校、大学へと進むにつれて、教育に関する支出が増える家庭もあります。
特に12歳前後は、小学校から中学校へ進学する時期です。
私立中学校への進学を選択する家庭もあります。
学校への納付金だけでなく、塾、教材、部活動、通学などの費用が増える場合もあります。
さらに高校進学、大学受験へ進むにつれて、まとまった支出が発生する可能性があります。
教育資金として積み立てたお金を18歳まで使えないと、こうした途中の資金需要に対応できません。
一定の条件のもとで12歳から引き出せる仕組みには、実際の教育費負担に対応しやすくする意味があります。
ジュニアNISAでは払出制限が大きな壁だった
以前のジュニアNISAにも、子どもの将来に向けて非課税で資産形成できるというメリットがありました。
しかし、大きな問題の1つが払出制限でした。
原則として18歳になるまで資金を払い出せない仕組みだったため、家計にとって柔軟性に欠ける面がありました。
子どものために貯めたお金であっても、中学校や高校の教育費に使いにくかったわけです。
長期間資金を動かせないとなれば、家計に十分な余裕がない家庭ほど利用しにくくなります。
結果として、非課税というメリットだけでは制度の利用を十分に広げることができませんでした。
こどもNISAでは、この経験を踏まえて使い勝手を改善することになります。
引き出せることと自由に使うことは分けて考える
ここで注意したいのは、12歳になれば何の制約もなく自由に引き出せるという単純な話ではないことです。
こどもNISAは、子どもの長期的な資産形成を支援するための制度です。
そのため、一定の条件のもとでの払出しという考え方になります。
制度を利用する際には、実際の払出条件や手続きについて金融機関などで確認する必要があります。
また、引き出せるようになったからといって、必要のない資金まで取り崩す必要はありません。
長期投資では、運用期間を確保すること自体に意味があります。
教育費として必要な部分だけを使い、残りは運用を続けるという考え方も重要になります。
教育費が必要になれば一部を取り崩す
例えば、こどもNISAに300万円の資産があったとします。
高校進学などに伴って50万円が必要になった場合、制度上の条件を満たすのであれば、必要な分を取り崩すという使い方が考えられます。
300万円すべてを売却する必要はありません。
必要な金額だけを現金化し、残りの資産については運用を続けることができます。
教育費は一度にすべて発生するわけではありません。
中学校、高校、大学と段階的に必要になります。
資産形成と取り崩しを組み合わせることで、それぞれの時期の教育費に対応することができます。
引き出す直前の相場下落には注意する
12歳から引き出せるようになっても、投資商品の価格が安定するわけではありません。
教育費が必要になった時期に金融市場が下落している可能性があります。
例えば100万円必要なのに、保有していた投資信託が直前に大きく値下がりしていれば、不利な価格で売却しなければならなくなるかもしれません。
そのため、資金を使う時期が分かっている場合には、直前まで投資を続けることだけが選択肢ではありません。
数年以内に必要になる資金については、相場が安定している時期などに少しずつ売却し、現預金として確保しておく方法もあります。
払出制度が柔軟になっても、投資そのものの価格変動リスクは残ります。
12歳で必ず引き出す必要はない
12歳から引き出せることは、12歳になったら引き出した方がよいという意味ではありません。
家計の預貯金で中学校や高校の教育費を賄えるのであれば、こどもNISAの資産をそのまま運用する方法もあります。
大学進学時まで運用することもできます。
さらに教育費として使う必要がなければ、18歳以降の資産形成へつなげることもできます。
投資期間が長くなれば、その分だけ運用を続ける時間を確保できます。
「引き出せること」と「引き出すべきこと」は別なのです。
教育資金の選択肢が増える
こどもNISAの払出ルールが柔軟になることで、教育資金の準備方法にも選択肢が増えます。
例えば中学校や高校までの教育費は預貯金で準備し、大学資金をこどもNISAで運用する方法があります。
反対に、中学校や高校でまとまった資金が必要になれば、こどもNISAの一部を取り崩す方法もあります。
祖父母から贈与された資金をこどもNISAで運用し、将来の教育費に使うことも考えられます。
家庭ごとに子どもの進路や家計状況は異なります。
資金を長期間拘束するのではなく、必要に応じて利用できる仕組みは、教育資金づくりとの相性を高めることになります。
払出ルールは金融教育にもつながる
子どもが12歳になれば、自分のお金について考えることもできる年齢になってきます。
例えば教育費としてこどもNISAの一部を取り崩す際に、親子で話をすることができます。
これまで毎月いくら積み立ててきたのか。
投資したお金が現在いくらになっているのか。
なぜ今、一部を売却するのか。
残った資産はなぜ運用を続けるのか。
こうした話をすることで、投資と生活のお金がつながります。
単に投資信託の仕組みを教えるだけではなく、実際に貯めた資産を何のために使うのかを考えることも金融教育です。
こどもNISAの払出しは、そのきっかけにもなり得ます。
結論
こどもNISAでは、一定の条件のもとで12歳から資金を引き出せる仕組みになります。
これは、原則18歳まで払い出せなかったジュニアNISAとの大きな違いです。
子どもの教育費は大学入学時だけに必要になるわけではありません。
中学校や高校への進学、塾や教材など、12歳以降に支出が増える家庭もあります。
必要な時期に資金を利用できることは、教育資金づくりにとって重要です。
一方、12歳から引き出せるからといって、すぐに取り崩す必要はありません。
家計に余裕があれば運用を続け、18歳以降の資産形成につなげることもできます。
重要なのは、資金を長期間拘束することでも、早く取り崩すことでもありません。
子どもの進路と家計の状況を見ながら、必要な時期に必要な金額だけを使えることです。
こどもNISAの新しい払出ルールは、長期投資と現実の教育費負担を両立させるための仕組みと考えることができます。
参考
日本経済新聞 2026年9月29日 朝刊 「こどもNISA」を経済活性化の契機に