2027年1月から始まる「こどもNISA」によって、0歳から長期の資産形成に取り組めるようになります。
大学進学まで約18年間あることを考えれば、教育資金の準備に投資を活用する意味は大きいでしょう。
しかし、ここで注意したいことがあります。
教育資金のすべてをこどもNISAで運用することが、必ずしも適切とは限らないことです。
教育資金には、老後資金などとは異なる特徴があります。
必要になる時期がある程度決まっていることです。
投資には価格変動があります。必要な時期と相場下落が重なった場合にどうするのかまで考えておく必要があります。
教育資金には期限がある
老後資金であれば、資産の一部を使う時期を調整できる場合があります。
相場が大きく下落しているときには、投資資産の売却を減らし、預貯金から生活費を出すといった対応も考えられます。
しかし、教育資金は事情が異なります。
高校や大学への入学時期は基本的に決まっています。
入学金や授業料の支払期限もあります。
「今年は相場が悪いので、大学入学を3年間延期する」という対応は現実的ではありません。
使う時期を変更しにくいお金ほど、価格変動リスクへの備えが重要になります。
大学入学直前に暴落する可能性もある
0歳から18年間投資すれば、長期投資ができます。
しかし、18年間投資すれば18歳の時点で必ず利益が出ているという保証はありません。
例えば17歳の時点まで順調に資産が増えていても、大学入学直前に金融市場が大きく下落する可能性があります。
そのとき教育資金の全額を投資信託で保有していれば、値下がりした状態で売却しなければならなくなるかもしれません。
相場が回復するまで待てれば問題は小さくできます。
しかし、教育資金には支払期限があります。
長期投資では入口だけでなく、いつ資金を使うのかという出口も重要なのです。
長期投資でも元本保証はない
長期、積み立て、分散投資は、投資のリスクを抑えるための基本的な方法です。
ただし、リスクをなくす方法ではありません。
長期間投資すれば必ず元本割れしないという意味でもありません。
株式や投資信託の価格は、景気、企業業績、金利、為替、国際情勢などさまざまな要因によって変動します。
世界的な金融危機が発生すれば、幅広く分散された投資信託でも大きく値下がりすることがあります。
したがって、絶対に必要になる教育資金まで投資に回す場合には慎重な判断が必要です。
預貯金と投資にはそれぞれ役割がある
インフレが続く環境では、預貯金だけで長期間資産を持つことにもリスクがあります。
物価が上昇すれば、同じ100万円でも将来購入できる商品やサービスが少なくなる可能性があります。
一方、投資には価格変動があります。
つまり、預貯金と投資にはそれぞれ異なるリスクがあります。
どちらか一方だけを選ぶのではなく、役割を分けることが重要です。
近い将来使うお金は預貯金で確保する。
長期間使わないお金は投資を活用する。
こうした使い分けをすれば、安全性を確保しながら長期的な資産形成にも取り組めます。
必要最低限の教育資金は現金で確保する
教育資金を準備する場合、まず考えたいのが「最低限いくら必要なのか」です。
例えば大学進学時には、入学金だけではなく、授業料、教材費、引っ越し費用、一人暮らしを始めるための費用などが発生する可能性があります。
こうした支出のうち、確実に必要になると考えられる部分については、進学時期が近づいた段階で現預金として確保する方法があります。
そのうえで、余裕資金については投資を続けることができます。
教育資金をすべて現金にする必要もなければ、すべて投資する必要もありません。
安全性が必要な資金と、運用できる資金を分けることがポイントになります。
子どもの年齢に応じて運用方法を変える
教育資金の運用では、子どもの年齢によってリスクの取り方を変える考え方も重要です。
例えば子どもが0歳であれば、大学進学まで約18年間あります。
短期的に市場が下落しても、その後の回復を待つ時間があります。
しかし15歳になれば、大学進学まで残り3年程度です。
同じ投資方法を続ける必要はありません。
子どもが成長するにつれて、教育資金として使う予定の部分を少しずつ売却し、現預金へ移していく方法があります。
資産形成では、年齢が上がるにつれて「増やす」から「守る」へ徐々に重点を移すことが重要になります。
利益が出ているうちに必要額を確保する考え方もある
教育資金として500万円必要だと考えていたとします。
こどもNISAの資産が大学入学の数年前に600万円まで増えていた場合、必要な500万円の一部または全部を早めに現金化する方法もあります。
その後さらに相場が上昇すれば、売却を早まったように感じるかもしれません。
しかし、教育資金の目的は投資利益を最大化することではありません。
必要な時期に必要な金額を準備することです。
目標金額に達したら、必要な資金を確保することも立派な資産管理です。
「もっと上がるかもしれない」と考えて投資を続けた結果、直前の下落で教育資金が不足することは避けたいところです。
生活予備資金まで投資しない
こどもNISAの非課税制度を最大限利用しようとして、家計の現預金を過度に投資へ回すことにも注意が必要です。
子育て中には予想外の支出が発生します。
病気、家電の故障、住宅の修繕、収入の減少などが起こる可能性があります。
こうした支出に対応する生活予備資金まで投資してしまうと、必要なときに金融商品を売却しなければならなくなります。
相場が下落していれば、不利な価格で売却することになります。
こどもNISAの年間投資上限60万円は、投資しなければならない金額ではありません。
家計全体の安全性を確保したうえで、余裕資金を投資することが基本になります。
教育資金と子どもの資産形成を分ける
こどもNISAでは、教育資金と成人後の資産形成を分けて考える方法もあります。
例えば、大学進学に必要な最低限の資金は親の預貯金で準備します。
一方、こどもNISAの資産は可能な限り18歳以降も運用を続けます。
こうすれば、大学進学時の相場状況に左右されにくくなります。
こどもNISAの資産を教育費として使わなければ、18歳以降の通常のNISAにつなげることができます。
将来の住宅購入、子育て、老後など、さらに長期の資産形成に活用することも可能です。
こどもNISAだからといって、必ず教育費に使わなければならないわけではありません。
結論
こどもNISAは教育資金づくりに活用できますが、教育資金のすべてを投資することが最適とは限りません。
最大の理由は、教育資金には使う時期が決まっているからです。
大学入学直前に市場が大きく下落しても、相場の回復を何年も待つことは難しいでしょう。
そのため、子どもが小さい時期には長期投資を活用し、進学時期が近づいたら必要な資金を徐々に現預金へ移していく方法が考えられます。
預貯金には元本を守る役割があります。
投資には長期間かけて資産を育てる役割があります。
どちらか一方を選ぶのではなく、それぞれの役割を組み合わせることが重要です。
教育資金づくりの目的は、投資収益を最大化することではありません。
子どもが進学するときに、必要なお金を必要な形で準備しておくことなのです。
参考
日本経済新聞 2026年9月29日 朝刊 「こどもNISA」を経済活性化の契機に