REITはなぜ物件を売却するのか 2025年の譲渡額8246億円が過去最高になった理由編

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REITは投資家から資金を集めて不動産を購入し、賃料収入を得る金融商品です。

そのため、REITはできるだけ多くの不動産を持ち続けた方がよいように思えるかもしれません。

しかし、実際にはREITは物件を購入するだけでなく、保有している物件を積極的に売却することがあります。

不動産価格が上昇している現在は、特にその動きが目立っています。

不動産証券化協会によると、2025年のJ REITによる物件譲渡額は8246億円となり、2024年より2割増えて過去最高となりました。

なぜ不動産を持つことが本業のREITが、これほど多くの物件を売却しているのでしょうか。

REITは不動産を持ち続けるだけではない

REITの基本的な収益源は不動産から得られる賃料です。

しかし、一度取得した不動産を永久に保有する必要はありません。

不動産にも競争力の変化があります。

建物は古くなります。

周辺地域の状況も変わります。

テナント需要も変化します。

取得した当時は優良物件でも、10年後や20年後に同じ競争力を維持しているとは限りません。

そこでREITは、保有する不動産を定期的に見直します。

資産の入れ替えとは何か

収益性の低下した物件を売却し、より成長が期待できる物件へ資金を振り向けることを資産の入れ替えと考えることができます。

例えば、年間3億円の収益しか生まなくなった物件を100億円で売却できるとします。

売却した100億円を使って、より高い収益を期待できる不動産を取得できれば、REIT全体の収益力を高められる可能性があります。

単に保有不動産の数を増やすのではなく、資産の質を高めるわけです。

REITの成長を見るときには、取得額だけでなく売却にも注目する必要があります。

不動産価格上昇は売却の好機になる

現在のように現物不動産価格が上昇している局面では、REITにとって物件を売却する好機になる場合があります。

過去に安い価格で取得した不動産が大きく値上がりしていれば、売却によって利益を実現できます。

例えば100億円で取得した物件を150億円で売却できれば、単純化すると50億円の値上がりがあります。

不動産を保有しているだけでは、この値上がりは含み益です。

売却すれば実際の利益として実現できます。

現物不動産価格が高い現在だからこそ、保有物件を売却する意味が大きくなっています。

低利回り物件を売る

不動産価格が大きく上昇すると、物件の利回りが低下することがあります。

例えば年間5億円の収益を生む物件が100億円なら、単純な利回りは5パーセントです。

同じ物件の価格が200億円まで上昇しても収益が5億円のままなら、利回りは2.5パーセントになります。

REITから見れば、200億円もの価値がある資産を保有し続けているのに、年間5億円しか収益を得ていない状態です。

それなら物件を売却して200億円を回収し、別の用途へ使った方が効率的な場合があります。

不動産価格上昇局面では、この判断が重要になります。

売却代金で借入金を返せる

REITは借入金を使って不動産を取得しています。

金利が低い時代には、借入金を積極的に利用することが合理的な場合がありました。

しかし、金利が上昇すると状況が変わります。

借換え時の金利が高くなれば、利払い負担が増える可能性があります。

そこで、物件を売却して得た資金を借入金の返済へ使う方法があります。

借入金を減らせば、将来の利払い負担を抑えられます。

長期金利が3パーセント台へ上昇した環境では、不動産を増やすことだけでなく負債を減らすことも重要な経営判断になります。

売却益を投資主へ還元できる

物件売却によって利益が出た場合、その利益を投資主へ還元することもできます。

REITは利益の多くを分配する仕組みです。

物件の値上がり益を実現し、その一部を分配金などとして投資主へ還元すれば、保有不動産の含み益を投資家へ届けることができます。

NAV倍率1倍割れが続いている場合には、この意味が特に大きくなります。

市場が保有不動産の価値を十分評価していないなら、実際に物件を売却して価値を現金化することで、市場に資産価値を示すことができるからです。

NAV倍率1倍割れと物件売却

例えば、REITが1000億円相当の純資産を持っているのに、市場では700億円程度の価値しか付いていないとします。

NAV倍率は単純化すると0.7倍です。

市場は保有資産の価値を十分評価していないことになります。

このときREITが保有物件を実際に高い価格で売却できれば、帳簿上や鑑定上だけではなく、市場でその不動産に価値があることを示せます。

売却代金を投資主へ還元すれば、割安な状態を修正するきっかけになる可能性もあります。

物件売却は資産価値を市場へ証明する手段にもなるのです。

2025年の譲渡額は8246億円

不動産証券化協会によると、2025年のJ REITによる物件譲渡額は8246億円でした。

2024年から2割増え、過去最高です。

この数字は、J REITが単に不動産を買って持ち続ける経営から変わりつつあることを示しています。

不動産価格が高い局面を利用して物件を売却します。

収益性の低い資産を整理します。

売却益を投資主へ還元します。

そして必要に応じて新しい成長資産へ資金を振り向けます。

資産を動かす経営が重要になっています。

物件を売ると賃料収入は減る

もちろん、物件売却にはデメリットもあります。

不動産を売れば、その物件から得ていた賃料収入はなくなります。

売却益によって一時的に分配金が増えても、翌年以降の賃料収入が減る可能性があります。

そのため、物件を高く売却できたというだけで判断することはできません。

売却した物件が年間どの程度の収益を生んでいたのか。

売却代金を何に使うのか。

新しい物件を取得するのか。

借入金を返済するのか。

投資主へ還元するのか。

売却後の資金の使い方まで見る必要があります。

売却益だけに頼ることはできない

REITの本来の収益基盤は、継続的な賃料収入です。

物件を売却すれば利益が出ることがありますが、保有物件を無限に売ることはできません。

毎年物件売却益を出さなければ分配金を維持できないREITであれば、収益の持続性には注意が必要です。

重要なのは、売却によってポートフォリオの質を改善し、将来の賃料収入を成長させることです。

売却そのものが目的ではありません。

より強い不動産ポートフォリオをつくるための手段として考える必要があります。

資本効率という考え方が重要になる

これからのREITでは、どれだけ多くの不動産を持っているかだけではなく、保有資産をどれだけ効率的に使っているかが重要になります。

200億円の価値がある物件からわずかな収益しか得られないなら、保有し続けることが最善とは限りません。

売却して資金を回収し、より収益性の高い資産へ振り向ける方法があります。

借入金を減らす方法もあります。

投資主へ還元する方法もあります。

資産を固定したままにせず、最も価値を生む場所へ資金を移すことが資本効率の改善につながります。

不動産を買う力だけでなく売る力を見る

REITの成長力というと、どれだけ新しい物件を取得できるかが注目されがちです。

しかし、不動産価格が高騰し金利も上昇する時代には、買う力だけでは十分ではありません。

高値で売れるときに売る判断も必要です。

競争力が低下する前に物件を入れ替える必要もあります。

売却した資金を成長分野へ再投資する必要もあります。

優れたREITとは、不動産をたくさん集めるREITではなく、買う、保有する、売るという判断を適切に繰り返せるREITだと考えることができます。

結論

REITが物件を売却するのは、不動産投資をやめるためではありません。

保有資産を入れ替え、REIT全体の収益力や資本効率を高めるためです。

不動産価格が上昇している現在は、過去に取得した物件の含み益を実現する好機にもなっています。

低利回りの物件を売却し、借入金を返済することもできます。

売却益を投資主へ還元することもできます。

より成長性の高い不動産へ資金を振り向けることもできます。

2025年のJ REITによる物件譲渡額が8246億円と過去最高になったことは、REIT経営が変化していることを示しています。

長期金利が上昇し、NAV倍率1倍割れが常態化する時代には、不動産をただ持ち続けるだけでは十分ではありません。

どの物件を残し、どの物件を売り、回収した資金をどこへ振り向けるのか。

これからのREITを見るうえでは、物件を買う力と同じくらい、物件を売る力が重要になります。

参考

日本経済新聞 2026年9月15日 朝刊 不動産高騰でもREIT低迷

日本経済新聞 2026年9月15日 朝刊 よろい脱ぎ、時代に合った変革を

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