認知症になる前に作っておきたい財産一覧

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認知症への備えというと、家族信託や任意後見などの制度を思い浮かべる人が多いでしょう。

しかし、その前にやっておきたいことがあります。

自分の財産を一覧にすることです。

本人が元気な間は、どの銀行に口座があるのか、どの証券会社を利用しているのか、自宅の権利証はどこにあるのかを自分で把握しています。

ところが認知症によって記憶や判断能力が低下すると、家族が本人の財産を探すことになります。

財産そのものがなくなるわけではありません。

家族から見えなくなるのです。

人生100年時代の財産管理では、財産を増やすことだけではなく、家族が財産の存在を確認できる状態にしておくことも重要になります。

最初に銀行口座を書き出す

まず確認したいのが銀行口座です。

銀行名。

支店名。

口座の種類。

口座の用途。

給与や年金の受取口座。

公共料金などの引落口座。

定期預金の有無。

こうした情報を整理します。

残高は日々変わるため、財産一覧に常に正確な金額を書く必要はありません。

重要なのは、どの金融機関に口座があるのか家族が分かることです。

本人が利用している金融機関そのものが分からなければ、将来の財産管理は非常に難しくなります。

使っていない口座は整理する

財産一覧を作ると、長期間使っていない銀行口座が見つかることがあります。

転勤先で作った口座。

住宅ローンのために作った口座。

昔の勤務先で給与振込に使っていた口座。

ほとんど残高のない口座。

元気なうちは複数の口座を管理できても、判断能力が低下した後は家族の管理負担になります。

必要性の低い口座を整理し、金融機関の数を減らしておくことも認知症対策になります。

財産管理では、増やすことだけでなく減らすことも重要です。

証券口座も忘れない

株式や投資信託を保有している人は証券口座も一覧にします。

証券会社名。

口座の種類。

主な保有商品の種類。

NISA口座の有無。

特定口座や一般口座の状況。

ネット証券を利用している場合には、家族がその証券会社を利用していることすら知らない可能性があります。

紙の取引報告書が届かない設定にしていれば、郵便物から口座の存在を発見することも難しくなります。

資産運用のデジタル化が進むほど、財産の所在を別の方法で残しておく重要性が高まります。

自宅や不動産は名義を確認する

不動産については、単に自宅があると書くだけでは十分ではありません。

誰の名義なのかを確認します。

父親の単独所有なのか。

夫婦共有なのか。

土地と建物の所有者は同じなのか。

賃貸不動産や土地をほかにも所有していないか。

抵当権などが設定されていないか。

長年住んでいる自宅では、家族が認識している所有関係と実際の登記が異なっていることがあります。

将来の売却や家族信託を考える場合にも、まず現在の権利関係を確認することが出発点になります。

生命保険も財産一覧に入れる

生命保険についても整理しておきます。

保険会社名。

保険の種類。

保険証券などの保管場所。

死亡保険金だけではなく、医療保険や介護保険なども確認します。

認知症になった本人が入院した場合、家族が保険契約の存在を知らなければ、本来受け取れる可能性がある給付金の手続きに気づかないことがあります。

保険は加入した時点で安心するのではなく、必要になったときに契約の存在を確認できる状態にしておくことが重要です。

借金も財産一覧に含める

財産一覧というと預金や不動産などのプラスの財産だけを書きたくなります。

しかし借入金も重要です。

住宅ローン。

不動産投資ローン。

カードローン。

事業上の借入金。

保証債務。

本人の判断能力が低下しても返済義務がなくなるわけではありません。

毎月どの口座から返済しているのかも含めて整理しておけば、家族が資金管理を引き継ぐ場合に役立ちます。

財産管理では資産と負債の両方を見る必要があります。

毎月の収入と支出も確認する

財産残高だけでなく、毎月のお金の流れも整理します。

年金。

家賃収入。

給与。

配当金。

一方で支出には、

介護保険料。

健康保険料。

税金。

公共料金。

マンション管理費。

生命保険料。

通信費。

各種サービスの利用料。

などがあります。

本人が認知症になった後も、これらの入出金は続きます。

毎月どの口座にいくら入り、どの口座から何が引き落とされているのかを整理しておけば、将来の管理が大幅に楽になります。

クレジットカードや電子決済も対象になる

現代の財産管理では銀行口座だけを見ていてはいけません。

クレジットカード。

電子マネー。

スマートフォン決済。

ネット通販。

定額制サービス。

さまざまな決済手段があります。

本人が認知症になった後も、利用していないサービスの料金が毎月引き落とされ続ける可能性があります。

特に定額制サービスは少額のため見落とされやすく、複数あれば年間ではそれなりの金額になります。

どの決済手段を使っているのかも一覧にしておくとよいでしょう。

デジタル資産は存在そのものが見えにくい

今後さらに重要になるのがデジタル資産です。

ネット銀行。

ネット証券。

暗号資産。

電子マネー。

インターネット上だけで契約している金融サービス。

紙の通帳や郵便物がなければ、家族が存在に気づかないことがあります。

高齢者の資産管理も急速にデジタル化しています。

財産一覧には、オンラインで管理している財産についても記録しておく必要があります。

パスワードそのものを一覧にする必要はない

財産一覧を作るときに注意したいのが、暗証番号やパスワードの扱いです。

銀行口座の暗証番号やインターネットバンキングのパスワードを、財産一覧と一緒に誰でも見られる場所へ保管するのは危険です。

重要なのは、家族が勝手に本人のIDやパスワードを使って取引できる状態を作ることではありません。

どの金融機関やサービスを利用しているのかが分かり、必要になったときに適切な手続きを取れるようにしておくことです。

財産情報と認証情報は分けて管理するという考え方が重要です。

重要書類の保管場所も記録する

財産一覧には書類の保管場所も記録しておくと便利です。

不動産関係の書類。

保険証券。

公正証書。

遺言書に関する情報。

家族信託の契約書。

任意後見契約の書類。

税務関係書類。

財産の存在が分かっていても、必要な書類が見つからなければ手続きに時間がかかります。

書類そのものを1カ所へ集める方法もありますが、少なくとも何をどこに保管しているのか分かる状態にしておきたいところです。

財産一覧は定期的に更新する

財産一覧は一度作れば終わりではありません。

銀行口座を解約することがあります。

新しい証券会社を利用することもあります。

不動産を売却することもあります。

生命保険を見直すこともあります。

古い情報のままでは、かえって家族を混乱させる可能性があります。

例えば年に1回、誕生日や年末など時期を決めて確認する方法があります。

正確な残高を毎月更新する必要はありません。

財産の所在と大きな変更を反映させることが重要です。

財産一覧を誰に伝えるかも決める

一覧を作っても、誰にも存在を知らせていなければ意味がありません。

信頼できる家族などに、

財産一覧を作っていること。

どこに保管しているのか。

判断能力が低下した場合に誰に確認してほしいのか。

を伝えておきます。

ただし財産情報は重要な個人情報でもあります。

家族全員へ詳細を公開する必要はありません。

自分の家族関係に応じて、誰にどこまで伝えるのかを考える必要があります。

財産一覧が制度選びの出発点になる

財産一覧を作る最大のメリットは、家族が財産を見つけやすくなることだけではありません。

自分にどのような認知症対策が必要なのかが見えてきます。

預金中心なら金融機関の代理人サービスで対応できるかもしれません。

自宅を将来売却する予定なら、家族信託などを検討する余地があります。

賃貸不動産が複数あれば、より本格的な管理体制が必要でしょう。

将来の生活上の契約まで任せたいなら任意後見を考えることができます。

財産構成が分からなければ、必要な制度も分かりません。

結論

認知症になる前に行う財産管理対策として、最も基本的でありながら重要なのが財産一覧の作成です。

銀行口座。

証券口座。

不動産。

生命保険。

借入金。

毎月の収入と支出。

クレジットカードや電子決済。

デジタル資産。

こうした情報を整理し、家族が必要になったときに財産の所在を確認できる状態にしておきます。

重要なのは財産額を細かく記録することではありません。

何を持っていて、どこにあり、誰がどのように管理するのかを見えるようにすることです。

認知症によって失われる可能性があるのは、財産そのものではありません。

その財産へたどり着くための情報です。

人生100年時代の財産管理では、資産を増やすことと同じくらい、自分が管理できなくなった後でも家族が資産を把握できる仕組みを残しておくことが重要なのではないでしょうか。

参考

日本経済新聞 2026年9月30日夕刊 マネー相談 黄金堂パーラー 認知症と財産管理 上 変わる法定後見 必要なとき利用 解任も可能

日本経済新聞 2026年9月30日夕刊 改正法待たず早めに準備を

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