労務の対症療法とは何か 残業が増えたから人を異動させるだけでは問題が解決しない理由編

経営

企業で労務問題が発生すると、まず目の前の問題を解消しようとすることがあります。

残業が多い社員がいれば、仕事をほかの社員へ移す。

忙しい部署があれば、別の部署から人を異動させる。

こうした対応が必要な場面はあります。

しかし、それだけで根本的な原因が解消されるとは限りません。

参考記事では、経営者に十分な危機意識がなければ、非常に短絡的な対症療法を取ってしまい、抜本的な対策を取ることが難しくなると指摘されています。

労務問題を経営課題として考えるためには、目の前の症状だけではなく、その症状を生み出している原因まで見る必要があります。

対症療法とは何か

対症療法とは、表面に現れている問題に対して、その問題を一時的に解消するための対応を行うことです。

たとえば、ある部署で残業時間が増えているとします。

そこで別の部署から社員を一人異動させれば、一時的に残業時間が減るかもしれません。

しかし、そもそもその部署の業務量が恒常的に増えているのであれば、一人を異動させただけでは問題が再び起こる可能性があります。

仕事の進め方そのものに問題がある場合もあります。

必要な能力を持つ人材が不足していることも考えられます。

表面に現れた問題を消すことと、問題の原因を解決することは同じではありません。

残業が増えた原因を考える

残業時間の増加には、さまざまな原因があります。

単純に仕事量が増えたのかもしれません。

人が辞めて人員が不足している可能性もあります。

特定の社員に仕事が集中していることも考えられます。

新しい仕事が増えたにもかかわらず、以前と同じ人員体制を続けているのかもしれません。

このように考えると、

残業時間が増えたから残業を減らす

という対応だけでは不十分なことが分かります。

なぜ残業が増えているのかを調べ、その原因に応じて対応する必要があります。

人を異動させれば解決するとは限らない

人員配置の変更は、労務問題を解決する有力な方法の一つです。

しかし、人を異動させることにも限界があります。

忙しい部署へ別の部署から人を移せば、今度は人を送り出した部署の人員が不足するかもしれません。

会社全体の人員に余裕がなければ、負担する場所を移しただけになる可能性があります。

重要なのは、一つの部署だけを見るのではなく、組織全体の状態を見ることです。

会社に十分な人員がいるのか。

仕事量と人員配置が合っているのか。

現在の組織にはどれくらい余力があるのか。

こうした視点から考える必要があります。

現場だけでは解決できない問題がある

労務問題の中には、現場の担当者だけでは解決できないものがあります。

参考記事では、担当者レベルで根本的な課題の所在が分かっていても、経営者に危機意識がなければ抜本的な対策を打つことができないと指摘されています。

たとえば根本原因が人員不足であれば、新たな採用が必要になるかもしれません。

採用条件を変更する必要が生じることもあります。

組織体制を変更するのであれば、さらに大きな判断になります。

こうした対応は、労務担当者だけで決められるものではありません。

経営者の判断が必要になります。

経営者が問題の意味を理解する

経営者が残業時間について、

上限を超えているから問題なのだ

とだけ理解していると、数字を上限以内に戻すことが目的になってしまう可能性があります。

しかし、本当に考えるべきなのは、その数字がなぜ増えたのかです。

参考記事では、残業時間の上限規制が設けられている背景への理解がなければ、問題の重大さを判断しにくいことが示されています。

長時間労働によって人の心身に弊害が生じる可能性があり、場合によっては訴訟リスクにもつながります。

背景まで理解すれば、単に数字を下げればよい問題ではないことが分かります。

労務担当者にも伝え方が求められる

一方で、経営者だけに理解を求めればよいわけではありません。

労務担当者の伝え方も重要です。

残業時間が増えています。

上限規制に抵触する可能性があります。

という説明だけでは、経営者が問題を法令順守だけの話として捉えてしまうことがあります。

そこで、

現在の人員では業務量を処理しきれない状態です。

この状態が続けば組織の余力がさらに小さくなります。

新しい仕事を増やすのであれば、人員体制を見直す必要があります。

というように、経営判断につながる形で伝えます。

労務の専門情報を経営の言葉へ翻訳することが必要なのです。

抜本的な対策とは何か

抜本的な対策は、すべての会社で同じではありません。

会社が置かれている状況によって変わります。

人員不足が原因なら、採用を強化するという方法があります。

必要な能力を持つ人が不足しているのであれば、社員を育成する方法もあります。

仕事の配分に問題があれば、人員配置を見直すことも考えられます。

参考記事では、新しい事業に必要な人材について、外部から即戦力を採用する方法、社内の人材に能力を身につけてもらう方法、外部企業との連携など、複数の選択肢が示されています。

大切なのは、目の前の症状だけを消すのではなく、会社の状況に合わせて原因そのものへ対応することです。

労務問題を経営会議で考える

労務問題が現場だけで処理されていると、経営者が組織の変化に気づかないことがあります。

残業時間が増えている。

人材の定着が難しくなっている。

現場に余力がなくなっている。

こうした情報は、新規事業や事業拡大などの経営判断にも関係します。

だからこそ、重要な労務問題は人事部門だけで完結させず、経営課題として議論する必要があります。

参考記事でも、労務を全社的な経営戦略なしに解決することは難しく、労務を経営戦略の一環として捉える必要性が示されています。

結論

労務問題が発生したとき、目の前の症状に対応することは必要です。

しかし、それだけでは同じ問題が繰り返される可能性があります。

残業が増えたのであれば、なぜ増えたのか。

人員不足なのか。

仕事量が多すぎるのか。

人員配置に問題があるのか。

組織そのものに余力がなくなっているのか。

原因まで掘り下げることが重要です。

そして、現場だけでは解決できない問題については、経営者が判断しなければなりません。

労務の対症療法から抜け出すということは、残業時間などの表面的な数字だけを直すのではなく、その数字を生み出している組織の問題を直すことです。

労務問題を人事部門だけの問題ではなく経営課題として扱うことが、抜本的な解決への第一歩になるのです。

参考

企業実務 2026年9月号 経営を縛るのではなく経営判断に資する労務を目指せ

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