新築マンション価格の高騰を考えるうえで、注目されている数字があります。
国土交通省の調査によると、令和6年1月から6月の新築マンションでは、購入後1年以内に売買された割合が東京圏で6.3%、東京都で8.5%、東京23区で9.3%、都心6区では12.2%となっていました。
都心に近づくほど短期売買の割合が高くなっています。
なかでも都心6区の12.2%は、単純計算すると新築マンションのおよそ8戸に1戸に相当します。
なぜ都心部では短期間で売買されるマンションが多いのでしょうか。
国交省は購入後1年以内を短期売買として調査した
国土交通省は、不動産登記情報を活用して新築マンションの取引状況を調査しています。
この調査では、購入後1年以内に売買された物件を短期売買として分析しました。
ここでいう短期売買は、所得税の短期譲渡所得とは異なります。
税法では、売却した年の1月1日時点の所有期間が5年以下であれば、原則として短期譲渡所得になります。
一方、国土交通省の調査では1年以内です。
つまり今回注目されているのは、5年以内の売却全般ではなく、購入してからかなり早い段階で再び市場に出てくるマンションです。
東京圏では6.3%だった
令和6年1月から6月の実績を見ると、東京圏の新築マンションにおける短期売買の割合は6.3%でした。
これが東京都になると8.5%へ上昇します。
さらに東京23区では9.3%です。
そして都心6区では12.2%まで上昇します。
地域を都心部へ絞り込むほど短期売買の割合が高くなる傾向が見られます。
新築マンションの短期売買という現象が、すべての地域で同じように起きているわけではないことが分かります。
都心6区ではおよそ8戸に1戸
12.2%という数字は、少しイメージしにくいかもしれません。
100戸の新築マンションがあったとすると、単純計算では約12戸に相当します。
およそ8戸に1戸です。
もちろん、一つのマンションで8戸に1戸が必ず転売されているという意味ではありません。
あくまで調査対象となった取引全体についての割合です。
それでも、購入後1年以内という非常に短い期間で再び売買される物件が一定程度存在することは、住宅市場を考えるうえで無視しにくい数字です。
なぜ都心ほど短期売買が多くなりやすいのか
一つの背景として考えられるのが、都心マンションの資産性です。
都心部のマンションは交通利便性が高く、土地の供給にも限りがあります。
住宅としての需要だけでなく、資産として保有したいという需要も集まりやすくなります。
さらに新築マンションの販売価格と、完成後の中古市場での価格に差が生じれば、短期間で売却して利益を得られる可能性が生まれます。
値上がりへの期待が強くなれば、自分で長期間住むことを前提としない購入者が市場に参加する可能性もあります。
こうした特徴が、都心部で短期売買が増える背景の一つとして考えられます。
新築マンション特有の価格差も重要になる
新築マンションでは、物件が完成するかなり前から販売されるケースがあります。
契約から引き渡しまで時間があるため、その間に周辺のマンション価格が上昇することがあります。
例えば契約時点では1億円だった物件について、引き渡しを受けるころには周辺の同等物件が1億2,000万円程度で取引されているような状況です。
このような価格差が生じれば、購入者にとって売却を検討する動機になります。
特に不動産価格の上昇局面では、完成前に購入した物件に含み益が発生するケースも考えられます。
新築マンションの短期売買を考える場合には、単純な所有期間だけでなく、契約から引き渡しまでの時間にも目を向ける必要があります。
短期売買が多いと実需層にどんな影響があるのか
政策上問題になるのは、実際に住みたい人への影響です。
新築マンションの販売戸数には限りがあります。
そこへ値上がり益を目的とした購入需要が加われば、購入希望者が増えます。
需要が供給を上回れば、価格には上昇圧力がかかります。
人気物件では抽選倍率が高くなり、本当にそのマンションへ住みたい人が購入できないケースも考えられます。
そのため国土交通省は、実需に基づかない投機的取引が新築マンション価格高騰の一因になっているとの指摘に注目しています。
12.2%すべてが投機とは限らない
ただし、ここは慎重に考える必要があります。
購入後1年以内に売却したからといって、すべて投機目的だったとは限りません。
マンションを購入した後に転勤が決まることもあります。
結婚や離婚、出産、介護などによって必要な住宅の広さや場所が変わることもあります。
収入の減少などによって住宅ローンの返済が難しくなり、売却を選択するケースも考えられます。
したがって、短期売買の割合と投機的取引の割合は同じではありません。
12.2%という数字だけから、都心6区の新築マンションの約8戸に1戸が投機目的だったと判断することはできません。
税制をつくるなら線引きが難しくなる
ここが今後の税制改正の難しいところです。
購入後1年以内の売却に一律で重い税負担を課せば、投機的な転売を抑える効果は期待できます。
しかし、転勤などの事情でやむを得ず売却する人まで同じ扱いになる可能性があります。
反対に例外を増やしすぎれば、制度が複雑になり、投機抑制の効果も弱くなります。
さらに、1年以内を対象にすれば1年を少し超えてから売却するという行動が増える可能性もあります。
税制によって取引行動そのものが変わることも考えておかなければなりません。
地域差を見ることが重要
もう一つ重要なのは、全国一律で考えないことです。
新築マンション価格や短期売買の状況は地域によって大きく異なります。
都心部で短期売買が問題になっているからといって、住宅需要が弱い地方都市まで同じ問題を抱えているとは限りません。
投機対策を全国一律で導入すると、短期売買が問題になっていない地域の不動産流通まで抑えてしまう可能性があります。
どの地域の、どのようなマンション取引を政策対象とするのかも、今後の重要な論点になります。
結論
国土交通省の調査では、令和6年1月から6月の新築マンションについて、購入後1年以内の短期売買割合は東京圏6.3%、東京都8.5%、東京23区9.3%、都心6区12.2%でした。
都心6区では単純計算するとおよそ8戸に1戸に相当します。
都心マンションは住宅としてだけでなく資産としての需要も強く、価格上昇局面では短期間で売却して利益を得ようとする取引が生じやすくなります。
一方、購入後1年以内に売却された物件がすべて投機目的だったわけではありません。
転勤や家族事情などによる売却も含まれるため、短期売買と投機的取引を同じものとして扱うことはできません。
新築マンション高騰対策として税制を使うのであれば、単に短期売買を規制するだけではなく、投機と実需をどのように区別するのかが大きな課題になります。
参考
税のしるべ 2026年9月14日 国交省が新築マンション高騰対応で税制措置を要望、主に短期売買を問題視か