マンションを購入して値上がりした後に売却すると、利益に対して税金がかかることがあります。
ここで大きなポイントになるのが、マンションをどれくらいの期間所有していたかです。
不動産の譲渡所得では、所有期間によって長期譲渡所得と短期譲渡所得に分けられ、適用される税率が大きく異なります。
新築マンションの短期売買への対策が議論されるなか、まず現在の税制がどのような仕組みになっているのかを理解しておく必要があります。
マンションを売った金額すべてに税金がかかるわけではない
マンションを売却した場合、原則として売却代金そのものに所得税がかかるわけではありません。
基本的には、売却によって生じた利益である譲渡所得に対して課税されます。
譲渡所得を考えるときは、売却価格から、そのマンションを取得するためにかかった取得費や売却するためにかかった譲渡費用などを差し引きます。
例えば5,000万円で取得したマンションを6,000万円で売ったからといって、単純に1,000万円すべてが課税対象になるとは限りません。
購入時や売却時の費用なども関係するためです。
建物部分については所有期間中の減価償却相当額も取得費の計算に影響します。
マンション売却の税金を考えるときには、売却価格だけを見るのではなく、最終的な譲渡所得を確認することが重要です。
短期譲渡所得とは何か
不動産の譲渡所得には、短期譲渡所得と長期譲渡所得があります。
重要なのは、単純に購入日から売却日までの日数で判定するわけではないことです。
売却した年の1月1日時点で所有期間が5年を超えているかどうかで判断します。
売却した年の1月1日時点で所有期間が5年以下であれば、原則として短期譲渡所得になります。
5年を超えていれば長期譲渡所得です。
この判定方法を知らないと、実際には5年以上所有している感覚があるのに、税務上はまだ短期譲渡所得になるということが起こり得ます。
5年間持てば必ず長期になるわけではない
ここは特に注意したいところです。
例えば2022年4月に購入したマンションを2027年5月に売却したとします。
実際の所有期間は5年を超えています。
しかし、2027年1月1日時点ではまだ所有期間が5年を超えていません。
そのため、この場合は原則として短期譲渡所得になります。
長期譲渡所得になるかどうかを考える場合には、売却日まで何年間所有したかだけではなく、売却する年の1月1日時点で判定するというルールを理解しておく必要があります。
売却時期が数カ月違うだけで税率が大きく変わる場合があります。
短期譲渡所得の税率は39%
短期譲渡所得には、所得税30%と住民税9%が課され、合計税率は39%です。
さらに所得税には復興特別所得税が加わります。
一方、長期譲渡所得では所得税15%と住民税5%で、合計20%です。こちらも別途、復興特別所得税が加わります。
短期39%に対して長期20%ですから、その差は19ポイントあります。
不動産の売却益が大きい場合、この税率差によって手元に残る金額が大きく変わります。
1,000万円の譲渡所得ならどれくらい違うのか
仕組みを単純化して、課税される譲渡所得が1,000万円だったとします。
復興特別所得税を除いて考えると、短期譲渡所得なら税額は約390万円です。
長期譲渡所得なら約200万円です。
その差は約190万円になります。
同じマンションを同じ金額で売却したとしても、所有期間の判定によってこれだけ税負担が違う可能性があります。
不動産売却では、売却価格だけではなく、いつ売却するのかも重要になります。
なぜ短期売却の税率は高いのか
短期譲渡所得に高い税率が設定されている背景には、土地や建物を短期間で売買して利益を得る取引への対応があります。
不動産価格が急速に上昇する局面では、値上がりを期待した短期的な売買が増える可能性があります。
短期売却に高い税率を設定すれば、短期間で売却して利益を得る取引の税引き後利益は小さくなります。
つまり税制には、短期的な不動産取引に対して一定の抑制効果を持たせる仕組みがすでに存在しているわけです。
国交省が問題視する短期売買とは意味が違う
ここで今回の新築マンション価格高騰対策との違いを整理しておく必要があります。
国土交通省が新築マンションの取引状況を調査した際には、購入後1年以内の売買を短期売買として分析しています。
一方、所得税の短期譲渡所得は5年を基準としています。
つまり、同じ短期という言葉でも意味が違います。
税制上は5年以下の売却を広く短期として扱っていますが、マンション価格高騰対策で注目されているのは、その中でも購入後1年以内といった極めて短期間の取引です。
この違いは、今後の税制改正を考えるうえで重要になります。
現行制度だけで十分なのかが今後の論点
現在でも短期譲渡所得には39%という高い税率が設定されています。
それにもかかわらず、都心部では購入後1年以内に売買される新築マンションが一定割合存在しています。
そこで今後問題になるのが、現在の短期譲渡所得課税だけで投機的な取引への対応として十分なのかという点です。
仮に購入後1年以内などの極めて短期間の転売を政策的に抑制するのであれば、現在の5年という区分とは別の仕組みを検討する考え方もあります。
ただし、短期間で売却されたマンションがすべて投機目的とは限りません。
転勤や家族構成の変化など、やむを得ない事情による売却もあります。
税制を使って短期売買を抑えるのであれば、こうした実需による売却との線引きも大きな課題になります。
結論
マンションなどの不動産を売却した場合、所有期間によって短期譲渡所得と長期譲渡所得に分かれます。
売却した年の1月1日時点で所有期間が5年以下なら原則として短期譲渡所得となり、所得税30%と住民税9%を合わせて39%の税率が適用されます。
5年を超える長期譲渡所得の20%と比べると、その差は19ポイントあります。
ただし、現在マンション価格高騰対策として注目されている短期売買は、購入後1年以内といったさらに短い期間の取引です。
税法上の5年という短期と、マンション市場で問題になっている1年という短期は同じではありません。
今後、新築マンションの短期転売対策が具体化するのであれば、この2つをどのように整理するのかが重要な論点になりそうです。
参考
税のしるべ 2026年9月14日 国交省が新築マンション高騰対応で税制措置を要望、主に短期売買を問題視か