外形標準課税の付加価値割を学ぶと、多くの人が「なぜ利息まで課税対象になるのか」と疑問を持ちます。
給与や家賃であれば事業規模との関係をイメージしやすいかもしれません。
しかし借入金利息や預金利息が付加価値額の計算に関係すると聞くと、不思議に感じる方も少なくありません。
実は外形標準課税では、企業が資金をどのように活用しているかも事業活動の一部として捉えています。
今回は付加価値割の構成要素である「純支払利子」について解説します。
純支払利子とは何か
純支払利子とは、その名のとおり支払利子から受取利子を差し引いた金額です。
単純に借入金利息だけを見るわけではありません。
企業は銀行から借入を行う一方で、預金や貸付金から利息収入を得ることもあります。
そこで制度上は、
支払利子
マイナス
受取利子
という考え方を採用しています。
実際に企業が負担した金融コストを把握するためです。
なぜ支払利子だけではないのか
もし支払利子だけを対象にするとどうなるでしょうか。
例えば多額の借入金がある企業は大きな金額になります。
一方で、その企業が多額の預金や貸付金を保有していて利息収入を得ていても考慮されません。
これでは実際の資金運用の状況を正しく反映できません。
そこで受取利子を控除することによって、実質的な資金調達コストを算定しているのです。
外形標準課税は単なる数字の集計ではなく、企業活動の実態を捉えようとする制度なのです。
支払利子には何が含まれるのか
支払利子には借入金利息が含まれます。
講義資料の事例では、
借入金利息600万円
借入金利息400万円
が対象となっています。
さらに特徴的なのが手形売却損です。
事例では手形売却損80万円も支払利子として取り扱われています。
手形売却損は会計上は利息とは異なる勘定科目で処理される場合があります。
しかし実質的には資金調達コストと考えられるため、外形標準課税では支払利子に含まれるのです。
受取利子には何が含まれるのか
受取利子の範囲は意外に広くなっています。
講義資料では、
預金利息
国債利息
地方債利息
貸付金利息
が含まれています。
企業によってはグループ会社への貸付金利息が大きな金額になることがあります。
また資金運用のために国債や地方債を保有しているケースもあります。
こうした利息収入は純支払利子を減少させる要素となります。
講義資料の計算例
講義資料の事例では、
支払利子合計1,080万円
受取利子合計593万5,000円
となっています。
その結果、
1,080万円-593万5,000円
=486万5,000円
が純支払利子として計算されています。
この486万5,000円が付加価値額計算の構成要素となります。
数字だけを見ると小さく感じるかもしれませんが、大企業では数億円規模になることもあります。
税務調査で注意されるポイント
純支払利子で問題になるのは科目の見落としです。
借入金利息は把握しやすい項目です。
しかし手形売却損やグループ会社との貸付金利息などは見落とされることがあります。
また受取利子についても、預金利息だけを集計して国債や地方債の利息を漏らしてしまうケースがあります。
決算書だけでなく総勘定元帳まで確認することが重要です。
税務調査でも計算根拠の確認が行われるポイントです。
外形標準課税が見ている資金調達力
純支払利子という項目から分かるのは、外形標準課税が企業の資金調達活動にも着目しているということです。
企業は人だけで事業を行うわけではありません。
資金も必要です。
借入によって資金を調達し、それを活用して事業活動を行っています。
そのため金融コストも事業規模を示す一つの指標として位置付けられているのです。
報酬給与額が「人」の指標であるなら、純支払利子は「資金」の指標といえるでしょう。
結論
純支払利子は支払利子から受取利子を差し引いて計算します。
借入金利息だけでなく手形売却損も対象となり、受取利子には預金利息や貸付金利息、国債利息なども含まれます。
外形標準課税では企業の資金調達活動も事業規模の一部として評価されています。
税理士には会計上の勘定科目だけでなく、その経済的実態を理解した計算が求められます。
次回は、もう一つの重要項目である「純支払賃借料」について解説します。
参考
近畿税理士会「税法実務講座(法人税)事業税の外形標準課税対象法人の申告の基礎③ 外形標準課税対象法人の申告書作成の基礎」