2027年4月から、軽減税率の対象となる飲食料品の消費税率を8パーセントから1パーセントへ引き下げることが予定されています。
原則として、税率変更後に販売される対象飲食料品には1パーセントの税率が適用されます。
ところが、2027年4月以降に届けられる食品であっても、一定の場合には従来の8パーセントが適用される可能性があります。
その代表的なものが、税率変更をまたぐ定期供給契約です。
毎月届く食品の定期便など、契約から商品の引渡しまでが長期間にわたる取引では、単純に2027年4月1日だけで税率を切り替えることが難しいためです。
定期供給契約とは何か
定期供給契約とは、一定の期間にわたって商品を継続的に供給する契約です。
例えば、毎月決まった食品を届ける定期便を考えると分かりやすくなります。
米や飲料、健康食品、コーヒー、菓子などを半年分や1年分まとめて契約し、その後毎月商品が送られてくる販売方法があります。
契約は最初に一度結びますが、商品の引渡しは数カ月にわたって続きます。
このような取引では、契約日と実際の商品引渡日が大きく離れることがあります。
税率変更をまたぐと、この時間差が問題になります。
通常なら引渡し時点の税率が重要になる
消費税では、原則として商品の譲渡などを行った時点の税率が問題になります。
そのため、2027年4月1日以降に対象となる飲食料品を販売すれば、新しい1パーセントの税率が適用されるのが基本的な考え方です。
例えば2027年5月にスーパーで食品を購入すれば、原則として1パーセントです。
しかし定期供給契約では、税率変更前に契約や代金決済がすでに行われているケースがあります。
ここに通常の小売販売とは異なる問題があります。
契約時には8パーセントを前提に価格が決まっている
例えば2026年12月に、2027年1月から12月まで毎月食品を届ける1年間の定期便を契約したとします。
契約時点では飲食料品の税率は8パーセントです。
年間の販売価格も8パーセントを前提として決められ、代金をまとめて受け取っている場合があります。
ところが契約期間の途中である2027年4月から税率が1パーセントへ下がります。
もし4月以降の配送分だけを1パーセントへ変更するなら、すでに受け取った年間代金の一部を再計算する必要が生じることがあります。
顧客への返金や請求額の修正、会計処理の変更なども必要になりかねません。
そこで経過措置が設けられる
こうした問題に対応するため、今回の税率引下げでは一定の予約販売や定期供給契約について経過措置を設ける案が示されています。
重要になるのが、2027年1月1日の指定日です。
税率変更日は2027年4月1日ですが、その3カ月前を指定日として、一定の条件を満たす契約を経過措置の対象とします。
指定日前に締結された一定の契約で、税率変更前に代金を受領するなど所定の要件を満たす場合には、2027年4月以降に商品を引き渡しても旧税率8パーセントを適用できる仕組みです。
2027年4月以降も8パーセントが残る
この経過措置によって、2027年4月以降には1パーセントと8パーセントの取引が併存する可能性があります。
例えば同じ食品であっても、2027年5月に新たに購入した商品には1パーセントが適用される一方、経過措置の要件を満たした定期供給契約によって5月に届けられた商品には8パーセントが適用されることがあります。
商品が同じでも税率が違うという状況です。
違いを生むのは商品そのものではなく、契約を結んだ時期や代金を受領した時期などです。
税率変更時の実務が複雑になる理由の一つです。
前払いが重要なポイントになる
今回示されている経過措置では、契約時期だけではなく、代金をいつ受け取ったのかも重要になります。
指定日前に契約したというだけで、すべての定期供給契約に旧税率8パーセントが適用されるわけではありません。
税率変更前に代金を受領していることなど、所定の要件を満たす必要があります。
したがって事業者は、契約書だけを確認すればよいわけではありません。
契約日と入金日、商品を引き渡す日を一体として管理する必要があります。
定期便のシステム対応も必要になる
定期供給契約を大量に扱う企業では、経過措置への対応がシステム上の課題になります。
例えば顧客が1万人いる定期便サービスを考えてみます。
2027年4月以降、新規契約には1パーセントを適用しながら、一定の既存契約については8パーセントを継続しなければならない可能性があります。
同じ商品コードだから同じ税率という単純な設定では対応できなくなります。
契約ごとに適用税率を判定する必要があるからです。
販売管理システム、請求システム、会計システムなどを連携させる必要も出てきます。
インボイスの税率にも影響する
適用税率が異なれば、請求書やインボイスの処理にも影響します。
2027年4月以降だからすべて1パーセントと考えてしまうと、経過措置が適用される取引について誤った税率を記載する可能性があります。
特に法人向けに食品を定期供給している事業者では、購入側の仕入税額控除にも関係します。
販売側だけではなく、購入側でもその取引に何パーセントが適用されているのかを正しく確認する必要があります。
経過措置は減税を遅らせるためではない
経過措置によって8パーセントが残ると、なぜすぐ1パーセントにしないのかと疑問に感じるかもしれません。
しかし経過措置は、すでに成立している一定の契約を税率変更の途中で組み替えることによる実務上の混乱を避けるための仕組みです。
税率変更前に契約や代金の受領まで完了した取引について、途中から税率だけを変更すれば、返金や契約変更など大量の事務が発生する可能性があります。
そこで一定の取引について旧税率を残し、新税率への移行を円滑にするわけです。
事業者は2027年1月1日前後の契約を分けて管理する
定期供給契約を扱う事業者にとって重要なのは、2027年4月1日だけではありません。
その3カ月前となる2027年1月1日の指定日が重要です。
指定日前に締結された契約なのか。
代金はいつ受領したのか。
商品はいつ引き渡すのか。
経過措置の要件を満たしているのか。
こうした情報を契約単位で確認する必要があります。
税率変更日になってから過去の契約を調べ始めるのではなく、指定日前後から整理しておくことが重要になります。
結論
定期供給契約とは、一定期間にわたって商品を継続的に供給する契約です。
食品の定期便のように、契約や代金の受領は税率変更前でも、商品の引渡しが2027年4月以降まで続く取引があります。
今回の飲食料品の消費税率引下げでは、こうした一定の取引について経過措置を設ける案が示されています。
2027年1月1日の指定日前に締結された一定の契約で、税率変更前に代金を受領するなど所定の要件を満たせば、2027年4月以降の商品引渡しについても旧税率8パーセントが適用される場合があります。
その結果、税率変更後には同じ食品であっても1パーセントと8パーセントが併存する可能性があります。
事業者にとって重要なのは商品だけで税率を判断せず、契約日、代金受領日、引渡日を確認することです。
税率変更をまたぐ定期供給契約では、いつ売ったのかだけではなく、いつ契約し、いつ代金を受け取ったのかまで管理する必要があるのです。
参考
税のしるべ 2026年8月28日 令和8年8月31日号 自民税調が消費税率引下げに伴う税制上の課題対応を議論、中間申告制度の特例案など示す
税のしるべ 2026年9月4日 令和8年9月7日号 自民税調で消費税率引下げ時の特例案を提示、簡易課税制度の特例など3案