飲食料品の消費税が8パーセントから1パーセントへ 初の税率引下げで事業者に何が起きるのか

税理士
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2027年4月1日から2年間、飲食料品にかかる消費税率を現在の8パーセントから1パーセントへ引き下げる制度が動き始めます。

消費者から見れば、食料品の価格に含まれる消費税負担が軽くなるという比較的分かりやすい制度です。

しかし、事業者側から見ると話はかなり複雑です。

日本では消費税が導入されて以降、本格的な税率の引下げは初めてです。これまで税率を上げるためにつくられてきた実務の仕組みを、今度は税率を下げる方向へ動かさなければなりません。

そのため、簡易課税、中間申告、本則課税への変更、総額表示、予約販売、通信販売など、さまざまな分野で特例が必要になります。

消費税率1パーセントは2年間の時限措置

今回の制度では、軽減税率の対象となっている飲食料品について、2027年4月1日から2029年3月31日までの2年間、消費税率を8パーセントから1パーセントへ引き下げます。

外食などは現在と同じ10パーセントであり、すべての商品やサービスの消費税率が1パーセントになるわけではありません。

さらに2029年度からは所得に連動した給付制度を本格導入し、飲食料品については8パーセントへ戻すことが予定されています。

つまり企業にとっては、2027年に8パーセントから1パーセントへ変更し、その2年後には再び1パーセントから8パーセントへ変更する対応が必要になります。

なぜ簡易課税に特例が必要なのか

大きな問題の一つが簡易課税です。

簡易課税では、実際に支払った仕入税額を一つずつ計算するのではなく、売上税額に業種ごとのみなし仕入率を使って納付税額を計算します。

ところが飲食料品の売上税率が1パーセントになると、本則課税を採用している事業者では、仕入れの際に支払った消費税額の方が売上時に受け取った消費税額より大きくなるケースが増えると考えられます。

その場合、本則課税なら消費税の還付につながる可能性があります。

一方、簡易課税では実際の仕入税額を使わないため、1パーセントになった後でも納税額が発生する可能性があります。

そこで特例として、簡易課税を利用する事業者が1パーセントの対象となる飲食料品を販売した場合、事業の種類にかかわらず、売上税額と同額を仕入税額として控除できる仕組みが設けられます。

結果として、その部分については納付税額を生じさせない仕組みです。

本則課税へ変更しやすくする

簡易課税事業者や免税事業者が本則課税へ移り、還付を受けたいと考えるケースも想定されます。

しかし通常、本則課税への変更には事前の届出が必要です。

法人の場合、2027年4月1日の税率変更時点ですでに課税期間が始まっているケースもあります。

これでは新制度が決まってから対応しようとしても、通常の届出期限に間に合わない事業者が出てきます。

そこで特例として、2027年4月1日を含む課税期間の末日までに必要な届出を行えば、その課税期間から本則課税へ移行できる仕組みが設けられます。

さらに、簡易課税を選択すると原則として一定期間変更できない、いわゆる2年縛りについても、今回の税率引下げに伴って本則課税へ移る場合には解除する措置が盛り込まれます。

中間申告の税額が大きすぎる問題

もう一つ重要なのが中間申告です。

消費税では、前年の納付税額が48万円を超える事業者について、前年の税額などを基準として中間申告と納付を行う制度があります。

ところが2027年4月から飲食料品の税率が8パーセントから1パーセントへ下がれば、飲食料品を多く販売する企業では実際の納付税額が大きく減る可能性があります。

それにもかかわらず前年の税額をそのまま基準にすると、中間納付額だけが大きくなってしまいます。

そこで、新しい1パーセントの税率が前年にも適用されていたものとして税額を再計算し、それを基準として中間申告税額を算出できる特例が設けられます。

税率引下げによって生じる資金繰りへの影響を抑えるための仕組みといえます。

予約販売や通信販売では8パーセントが残る場合がある

税率変更の境目では、さらに難しい問題が発生します。

例えば1年分の代金を先に支払い、毎月旬の食品が送られてくるサービスを考えてみます。

契約と代金の受領は税率引下げ前ですが、実際の商品発送は2027年4月以降になるケースです。

こうした取引についてすべて1パーセントへ変更すると、すでに成立している契約やシステムを修正しなければならない可能性があります。

そこで定期供給契約による予約販売や、あらかじめ提示された条件に従って行われる一定の通信販売については、税率変更の3か月前を指定日として経過措置を設けます。

一定の条件を満たした取引については、商品が税率引下げ後に販売されても従来の8パーセントを適用する仕組みです。

値札を一晩で全部変更できない問題

小売店にとって非常に現実的なのが値札の問題です。

スーパーやコンビニなどには膨大な数の商品があります。

2027年4月1日になった瞬間に、それらすべての税込価格表示を8パーセントから1パーセントへ変更するのは大きな作業です。

カタログや商品パッケージそのものに価格が印刷されている商品では、さらに対応が難しくなります。

そこで総額表示義務についても特例が設けられます。

税率変更に直ちに対応することが困難な事情がある場合、税率変更前後の2か月間について、消費者が実際の支払額と誤認しないための措置を講じることを条件に、変更前または変更後の税込価格を表示できるようにします。

ただし、税抜価格だけを表示したり、税抜価格に税を加えるという表示だけにしたりする方法まで自由になるわけではありません。

消費者が最終的に支払う金額を把握できるという総額表示の基本的な考え方は維持されます。

消費税減税は消費者だけの問題ではない

飲食料品の消費税率を8パーセントから1パーセントへ下げるというと、家計の負担軽減ばかりに目が向きがちです。

しかし税務の世界から見ると、これは単なる7ポイントの税率変更ではありません。

売上税額と仕入税額の関係が変わり、簡易課税と本則課税の有利不利が変わり、中間納付額にも影響し、値札やレジ、会計システム、契約書、請求書などの変更も必要になります。

しかも2年間の時限措置であるため、2029年には逆方向の対応が必要になります。

税率を下げること自体よりも、税率を下げたことによって企業の実務にどのようなひずみが生じるのかが、今回の制度を理解する重要なポイントです。

結論

2027年4月から予定されている飲食料品の消費税率1パーセントへの引下げは、日本の消費税制度にとって初めて経験する大規模な税率引下げです。

そのため、簡易課税では飲食料品の売上税額と同額を控除する特例、本則課税へ移行しやすくする特例、中間申告額を新税率ベースで計算する特例、予約販売や通信販売に対する経過措置、総額表示義務の特例などが必要になります。

消費者にとっては税率が8パーセントから1パーセントへ下がる比較的単純な変化に見えますが、企業側では税務、経理、価格表示、システム、契約など広い範囲への対応が必要です。

今回の消費税減税は、税率そのものだけではなく、税率変更によって生じる実務上の問題と、それを解消するためにつくられる特例まで含めて理解することが重要です。

参考

税のしるべ 2026年8月28日 令和8年8月31日号 自民税調が消費税率引下げに伴う税制上の課題対応を議論、中間申告制度の特例案など示す

税のしるべ 2026年9月4日 令和8年9月7日号 自民税調で消費税率引下げ時の特例案を提示、簡易課税制度の特例など3案

内閣官房 2026年9月15日 飲食料品消費税率の臨時的な引下げ及び就業者負担軽減支援金の導入に関する大綱

財務省 2026年9月15日 片山財務大臣兼内閣府特命担当大臣臨時閣議後記者会見

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