自己株式取得でみなし配当額はどのように計算するのか 計算の基本編

税理士
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これまでのシリーズでは、「みなし配当とは何か」「資本金等の額とは何か」「利益積立金額とは何か」を順番に学んできました。

今回は、それらの知識をつなげて、「みなし配当額はどのように計算されるのか」という基本的な考え方を解説します。

「計算」と聞くと難しそうに感じるかもしれません。

しかし、一般の読者が理解しておきたいのは、細かな計算式ではなく、「なぜその金額がみなし配当になるのか」という考え方です。

その仕組みが分かれば、自己株式取得の税務がぐっと理解しやすくなります。


まず受け取った金額を確認する

自己株式を取得すると、会社は株主へ株式の対価を支払います。

税務では、まず、

会社から支払われた金額

を出発点として考えます。

例えば、

会社が5,000万円を支払って自己株式を取得したとします。

この5,000万円が、そのまますべて配当になるわけではありません。

ここから、

資本の払い戻しと利益の分配を区別していきます。


資本の払い戻し部分を区分する

次に考えるのが、

株主が会社へ出資した資本がどれだけ戻ってきたのかという点です。

前回学んだように、

この判断の基準になるのが

資本金等の額

です。

会社から支払われた金額のうち、

資本金等の額に対応する部分は、

株主が出資した資本の払い戻しと考えられます。

この部分は、

利益の分配ではありません。

したがって、

みなし配当にはなりません。


残った部分が利益の分配になる

資本の払い戻し部分を除くと、

残りは会社が積み上げてきた利益から支払われたものと考えます。

この利益部分が、

税務上の

みなし配当

になります。

つまり、

会社から支払われた金額を、

  • 出資の返還
  • 利益の分配

の二つに分けるという考え方です。

講義資料でも、自己株式取得に伴う支払額は、資本金等の額に対応する部分と、それを超える利益の分配部分に区分して課税関係を整理する仕組みが示されています。


具体的なイメージで考える

例えば、

会社が自己株式を6,000万円で取得したとします。

このうち、

税務上、

2,000万円が資本の払い戻しに当たるとすれば、

残る4,000万円は利益の分配という考え方になります。

この4,000万円が、

みなし配当として扱われるイメージです。

実際の計算は税法に基づいて行われますが、

基本的な考え方は非常にシンプルです。


すべてが配当になるわけではない

自己株式取得を初めて学ぶ人が誤解しやすいのが、

「会社から受け取るお金は全部配当になる」

という考え方です。

しかし、

実際には違います。

株主が会社へ出資した資本が戻るだけであれば、

利益を受け取ったわけではありません。

だからこそ、

税務では資本の返還部分を除いて、

利益部分だけを配当として扱います。

この考え方が、

みなし配当制度の基本です。


株価が高くても低くても計算は必要

自己株式の取得価格が、

適正な時価だったとしても、

みなし配当の計算は必要です。

また、

高額取得や低額取得の問題がある場合には、

さらに別の税務上の検討も加わります。

つまり、

取得価格が適正かどうかと、

みなし配当の計算は、

それぞれ別の論点として考える必要があります。


実務では会社の数字を基に計算する

実際の実務では、

決算書や税務申告書などを基に、

資本金等の額や利益積立金額を確認し、

税法のルールに従ってみなし配当額を計算します。

そのため、

外から会社を見ただけでは、

みなし配当額を判断することはできません。

会社の財務内容や税務上の数値を正確に把握することが前提になります。


一般の読者は考え方を理解すれば十分

一般の読者が、

税理士と同じレベルで計算式を覚える必要はありません。

大切なのは、

会社から支払われたお金には、

「出資の返還」と

「利益の分配」

という二つの性質があり、

利益部分だけがみなし配当になるという仕組みを理解することです。

この基本が分かれば、

自己株式取得に関する税務の全体像が見えてきます。


結論

自己株式取得におけるみなし配当額は、会社から支払われた金額を「資本の払い戻し」と「利益の分配」に分けて考えることで算定されます。

資本金等の額に対応する部分は出資の返還であり、それを超える部分が利益の分配として、みなし配当の対象となります。

計算自体は税法に基づく専門的なものですが、その根底にある考え方は「出資したお金が戻る部分」と「会社が稼いだ利益を受け取る部分」を区別することです。

この考え方を理解することが、自己株式取得の税務を正しく理解するための最も重要なポイントといえるでしょう。

次回は、「自己株式取得で譲渡所得はどのように計算するのか 売却益の考え方編」をテーマに、みなし配当とは別に計算される譲渡所得の仕組みについて解説します。


参考

東京地方税理士会「非上場株式を譲渡・移転する場合の税務 自己株式を買取る場合の課税上の注意点」講義資料 江本尚浩税理士・東京国際大学非常勤講師

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