研究開発費を減らすと税額控除が0%になるのか 2027年度からインセンティブが強まる理由編

税理士
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研究開発税制は、企業が研究開発費を使えば一定割合の税額控除を受けられる制度です。

しかし、2026年度税制改正では、研究開発費を増やす企業と減らす企業との差をこれまで以上に大きくする方向が示されています。

資料では、2027年4月1日以後に開始する事業年度から、一般型の控除率や控除上限の仕組みを見直し、試験研究費の増減割合がマイナス10%以下となった場合には、控除率を0%とすることが示されています。

つまり、研究開発費を大幅に減らした企業については、一般型による税額控除を受けられなくなる可能性があります。

研究開発税制が、単に研究費を支出した企業を優遇する制度から、研究開発投資を継続的に増やす企業をより強く後押しする制度へ変化していることが分かります。

研究開発税制では研究費の増減も重要になる

研究開発税制を考えるとき、多くの企業が最初に見るのは、その年度にいくら試験研究費を使ったのかという金額でしょう。

しかし、一般型ではそれだけではありません。

研究開発費が前の期間と比べて増えているのか、減っているのかという増減割合も税額控除に関係します。

資料では、一般型について、試験研究費の増減割合に応じた控除率の仕組みが設けられていることが示されています。

つまり、同じ金額の試験研究費を使っている企業でも、研究開発投資を増やしている企業と減らしている企業では、税制上の扱いが異なる可能性があります。

研究開発投資を増やす方向へ企業を誘導する仕組みです。

2027年度から仕組みがさらに変わる

2026年度税制改正では、この増減割合に応じた仕組みがさらに見直されます。

資料では、2027年4月1日以後に開始する事業年度から、一般型の控除率についてカーブを見直すことが示されています。

さらに、控除上限についても見直しが行われます。

この改正で特に注目されるのが、研究開発費を大幅に減らした場合の取り扱いです。

試験研究費の増減割合がマイナス10%以下になると、控除率が0%になります。

研究開発費を減らした場合でも一定の税額控除を受けられるという考え方から、一定以上減少させた企業には一般型の税額控除を認めない方向へ制度が変わるわけです。

マイナス10%以下なら控除率が0%になる

例えば、比較の基礎となる試験研究費が1億円だった企業を考えてみます。

その後、試験研究費が大きく減少し、増減割合がマイナス10%以下になったとします。

2027年4月1日以後に開始する事業年度では、資料に示された改正後の仕組みによれば、一般型の控除率は0%となります。

試験研究そのものを行っていても、研究開発費の減少幅が一定水準以上になれば一般型の税額控除が生じないことになります。

ここが今回の改正の重要なポイントです。

「研究開発費を支出しているか」だけでなく、「研究開発投資を維持または拡大しているか」という視点がより強くなります。

研究開発投資を増やす企業へのインセンティブを強める

なぜこのような仕組みにするのでしょうか。

研究開発税制の目的を考えると分かりやすくなります。

研究開発税制は、企業がすでに行った研究に対して単純に税金を安くするだけの制度ではありません。

税額控除というインセンティブを設けることで、企業の研究開発投資を促す政策的な意味があります。

研究開発費を増やす企業をより優遇し、大幅に減らす企業については優遇を縮小することで、企業に継続的な研究開発投資を促す仕組みになります。

研究開発費の増減が税額控除率に直接影響することによって、企業の投資判断にも税制が関係してくることになります。

控除率だけでなく控除上限も見直される

2027年度からの改正では、控除率だけに注目するのでは不十分です。

資料では、一般型の控除上限についても見直すことが示されています。

具体的には、控除上限について3%ずつ変動させる仕組みが示されています。

研究開発税制では、試験研究費に一定の控除率を掛けて税額控除額を計算するだけではなく、法人税額に対する控除上限もあります。

したがって、制度改正の影響を見る場合には、控除率と控除上限の両方を確認する必要があります。

研究開発費をどれだけ増減させたかによって、税額控除の効果が変わる仕組みが一段と強まります。

研究開発費を毎年管理する重要性が高まる

今回の改正によって、企業の管理実務にも変化が求められます。

研究開発税制を決算時だけ確認するのでは遅い場合があります。

年度の途中で研究開発費がどの程度発生しているのか。

前年などと比較して増えているのか、減っているのか。

年度末までにどの程度の研究開発費になる見込みなのか。

こうした情報を継続的に把握する重要性が高まります。

特に研究開発予算を大幅に削減する場合には、研究部門の予算だけではなく、研究開発税制への影響についても確認する必要が出てきます。

税務部門と研究開発部門、経営企画部門との連携がこれまで以上に重要になると考えられます。

単年度だけではなく継続的な研究投資を見る必要がある

研究開発には時間がかかります。

ある年度だけ研究費を大幅に増やし、翌年度に大きく減らすという投資の仕方も考えられます。

しかし、研究開発税制の控除率が試験研究費の増減と連動する仕組みでは、単年度の研究費だけを見ていては税制効果を把握できません。

企業としては、数年間の研究開発計画と税制を結び付けて考えることが重要になります。

どの年度に研究を開始するのか。

研究者をどの程度配置するのか。

外部への委託研究をいつ実施するのか。

設備や原材料にどの程度支出するのか。

こうした研究開発計画が、結果として試験研究費の増減にもつながります。

研究開発税制が企業の中長期的な研究投資計画と密接に関係するようになるわけです。

2029年3月31日まで延長される措置もある

資料では、一般型に関する一定の時限措置について、2029年3月31日まで延長することも示されています。

研究開発税制は、一度制度を理解すれば長期間同じ計算を続けられるとは限りません。

控除率、控除上限、適用期間などが税制改正によって変わることがあります。

特に今回のように研究開発費の増減によって控除率が0%になる仕組みが導入される場合には、改正の適用開始時期を正確に把握することが重要です。

研究開発予算を決める段階から、いつの事業年度にどの制度が適用されるのかを確認する必要があります。

研究開発税制は企業行動を変えるための税制でもある

今回の改正を見ると、研究開発税制の政策的な役割がよく分かります。

税額控除は、単に企業の税負担を軽くすることだけを目的としているわけではありません。

研究開発費を増やす企業には税制上のメリットを与え、大幅に減らす企業にはメリットを小さくすることで、企業の研究開発投資を促そうとしています。

前回まで見てきた戦略技術領域型では、AI、量子、半導体など特定の重要技術への投資を重点的に支援します。

今回の一般型の見直しでは、研究開発投資そのものを維持し、増加させる方向へのインセンティブが強化されます。

研究開発税制は、企業の研究テーマだけでなく、研究投資の金額や継続性にも影響を与える制度になっているのです。

結論

2026年度税制改正では、研究開発税制の一般型について、研究開発投資を増やす企業と減らす企業との差をこれまで以上に大きくする方向が示されています。

資料では、2027年4月1日以後に開始する事業年度から、試験研究費の増減割合がマイナス10%以下となった場合、控除率を0%とすることが示されています。

つまり、試験研究を続けていても、研究開発費を一定以上減らせば、一般型による税額控除を受けられなくなる可能性があります。

さらに、控除率だけでなく控除上限についても見直しが行われます。

これからの研究開発税制では、その年度にいくら研究費を使ったかだけを見るのでは十分ではありません。

研究開発費が前年などと比較してどのように増減しているのかを継続的に管理し、中長期的な研究開発計画と税制を結び付けて考えることが重要になります。

参考

第33回青山学院大学同窓祭公開講座 2026年9月23日 R&D税制とイノベーションボックス税制 会計プロフェッショナルによるイノベーション・コンサルテーション

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