かつては「会社員か経営者か」という二者択一が当たり前でした。
会社に勤めるなら会社員として生きる。独立するなら会社を辞めて起業する。そのような人生設計が一般的だったのです。
しかし現在は状況が大きく変わりつつあります。
副業解禁の流れ、デジタル技術の進化、生成AIの普及などによって、会社員として働きながら自ら法人を持つ人が少しずつ増えています。
今後は「会社員兼経営者」という働き方が特別ではなくなるかもしれません。
今回はパラレルキャリア時代の新しい働き方について考えてみます。
一つの会社に人生を預ける時代の終わり
高度経済成長期から平成初期まで、多くの人は一つの会社で定年まで働くことを前提としていました。
給与は毎年上がり、退職金や年金も充実していました。
しかし現在は、
・終身雇用の弱体化
・成果主義の浸透
・物価上昇
・年金不安
・定年延長
などによって環境が大きく変化しています。
会社だけに依存する働き方に不安を感じる人も増えています。
その結果、本業以外の収入源を持とうとする動きが広がっているのです。
副業から法人へ発展する人が増えている
現在は個人でも事業を始めやすい時代です。
パソコン一台で、
・コンサルティング
・オンライン講座
・コンテンツ販売
・動画配信
・システム開発
・デザイン業務
などができます。
最初は副業として始めた事業が成長し、年間数百万円から数千万円の収益を生み出すケースもあります。
その結果、
「個人事業のまま続けるか」
「法人化するか」
という選択が生まれます。
独立しなくても法人を持つ人が増えている背景には、このような事情があります。
AIが一人社長を増やす
生成AIの登場は大きな転換点です。
これまで従業員が必要だった業務の多くをAIが補助できるようになりました。
資料作成
文章作成
画像制作
市場調査
顧客対応
データ分析
などが短時間で行えるようになっています。
つまり、一人でも法人経営がしやすくなったのです。
今後は社員ゼロの法人や、自宅で運営する法人がさらに増えるでしょう。
会社員を続けながら法人を経営するハードルは確実に下がっています。
法人は独立のためだけのものではない
従来は法人設立といえば独立開業の象徴でした。
しかし今後は考え方が変わります。
法人は「独立の証」ではなく、「事業を管理する器」になっていくでしょう。
例えば、
本業は会社員
副業は法人
資産管理も法人
という形です。
収入源を複数持ち、それぞれを適切に管理するために法人を活用する考え方です。
個人と法人を組み合わせて活用する時代が始まっています。
定年後の独立準備としても有効
50代以降の会社員にとって、この働き方は特に魅力があります。
定年後に突然独立するのではなく、
会社員時代に副業を始める
法人を設立する
顧客を増やす
サービスを磨く
という準備ができます。
その結果、退職後には既に事業基盤が整っている状態になります。
第二の人生のスタートが格段にスムーズになるのです。
人生100年時代には、退職後の20年から30年を見据えた準備が重要になります。
リスク分散の効果も大きい
会社員だけの場合、収入源は給与一つです。
しかし法人を持てば、
給与収入
事業収入
配当収入
将来の事業売却益
など複数の収入源を持つことができます。
これは資産運用における分散投資と同じ考え方です。
一つの収入源に依存しないことで、人生の安定性が高まります。
今後は収入の分散が重要な時代になるでしょう。
税理士の役割も変わる
こうした時代になると税理士の役割も変化します。
従来は、
個人事業か法人か
という単純な選択肢でした。
しかし今後は、
会社員
個人事業
法人
資産管理
年金
相続
を一体的に考える必要があります。
税理士には税金計算だけでなく、人生設計やキャリア設計を支援する能力が求められるようになるでしょう。
パラレルキャリアが当たり前になる未来
将来の名刺には、
会社員
講師
コンサルタント
経営者
投資家
という複数の肩書が並ぶかもしれません。
一人が複数の役割を持つことが自然な社会になるでしょう。
会社員か経営者かという時代から、
会社員でもあり経営者でもある時代へ。
働き方そのものが大きく変わろうとしています。
結論
会社員を続けながら法人を持つ働き方は、今後ますます広がる可能性があります。
副業の拡大、生成AIの普及、人生100年時代の到来によって、複数の収入源を持つことが重要になっているからです。
法人は独立のためだけのものではなく、自らの事業や資産を管理する器へと変化しつつあります。
これからの時代は「会社員か経営者か」を選ぶのではなく、「会社員でありながら経営者でもある」というパラレルキャリアが新しい働き方のスタンダードになるのかもしれません。
参考
税のしるべ 2026年6月22日
個人事業税の見直し機運高まる、都税調が事業形態の多様化による事業性認定の課題を挙げる