なぜ災害時は中間申告でも法人税の還付を受けられるのか 復旧資金を早く確保する仕組み編

税理士
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地震や豪雨などによって企業が大きな被害を受けると、復旧のために多額の資金が必要になります。

工場や店舗を修理し、失った商品や原材料を再調達し、機械設備を復旧させなければなりません。

ところが、災害が事業年度の前半に発生すると、通常の確定申告まで長い期間待たなければならないことがあります。

そこで重要になるのが、災害損失欠損金額について一定の場合に中間申告の段階でも繰戻還付を請求できる仕組みです。

災害によって資金を必要としている企業に、できるだけ早く過去に納付した法人税を戻すという意味があります。

通常は事業年度が終わってから法人税を確定する

法人税は、原則として事業年度が終了した後に所得金額や法人税額を計算します。

例えば3月決算の会社であれば、4月から翌年3月までの1年間の所得を計算し、その事業年度について確定申告を行います。

欠損金が発生したかどうかも、通常は事業年度終了後に確定します。

そのため、繰戻還付についても確定申告の段階で検討するというイメージを持ちやすいでしょう。

しかし、災害時にはそれでは遅い場合があります。

災害は決算日の直前に起きるとは限らない

例えば3月決算の会社が4月に大規模な地震に遭ったとします。

新しい事業年度が始まった直後です。

工場や商品に巨額の被害が発生しても、次の決算は翌年3月です。

確定申告まで待つと、災害発生から1年近く経過することになります。

しかし企業が復旧資金を必要とするのは災害直後です。

この時間差を小さくするために、災害損失については中間申告の段階で還付を受けられる仕組みが重要になります。

仮決算による中間申告という方法がある

法人税の中間申告には、前年度の法人税額を基礎として計算する方法のほか、事業年度開始の日から6カ月間を一つの期間として仮決算を行う方法があります。

仮決算では、その6カ月間について実際の収益や費用などを集計します。

災害によって大きな損失が発生していれば、その損失も反映されることになります。

災害損失欠損金額について一定の要件を満たす場合には、この中間申告の段階で繰戻還付を請求できる可能性があります。

6カ月以内に終了する中間期間が重要になる

災害損失欠損金額の繰戻還付では、災害が発生した日から6カ月以内に終了する中間期間について一定の取扱いがあります。

例えば3月決算の会社であれば、通常は4月から9月までが事業年度開始後6カ月の期間になります。

この期間に大規模災害が発生し、棚卸資産や固定資産などに多額の損失が生じた場合には、仮決算による中間申告を行って繰戻還付を検討することになります。

災害発生日と中間期間の終了日との関係を確認することが重要です。

確定申告まで待たずに還付を請求できる

中間申告で災害損失の繰戻還付を利用する最大の意味は、還付請求を前倒しできることです。

例えば前年に会社が利益を計上し、法人税を納付していたとします。

その翌年度の前半に大規模災害が発生し、仮決算をすると多額の災害損失欠損金額が生じていました。

一定の要件を満たせば、翌年の確定申告まで待つのではなく、中間申告の段階で過去に納付した法人税について還付を請求できる可能性があります。

税金の還付を復旧資金として早期に活用できるわけです。

中間申告なら自動的に還付されるわけではない

ただし、中間申告をすれば自動的に法人税が戻ってくるわけではありません。

災害損失欠損金額を適切に計算し、還付請求のための手続きを行う必要があります。

また、中間期間に赤字が生じているというだけで、すべてが災害損失欠損金額になるわけではありません。

通常の営業活動による損失と、災害によって棚卸資産や固定資産などに生じた損失を区分する必要があります。

災害損失を早い段階で集計する必要がある

中間申告で還付を請求するためには、確定申告より早い段階で被害額を把握しなければなりません。

例えば倉庫にあった商品のうち、いくら分が浸水して廃棄されたのかを確認します。

工場の機械設備が損壊したのであれば、固定資産台帳と照合します。

建物についても、被害状況や帳簿価額などを確認します。

災害直後から経理部門が情報収集を始めることが、中間申告による還付を利用するためにも重要になります。

保険金の見込みも確認する

被害額だけではなく、保険金などによる補填についても確認する必要があります。

例えば災害によって1億円の商品に損失が発生していても、その大部分について保険金を受け取れる場合があります。

中間申告の時点では、保険会社による査定が終わっていないこともあるでしょう。

そのため、保険会社との交渉状況や保険金の見込みなども整理しておく必要があります。

災害損失を早く計算することと、正確に計算することの両方が求められます。

前年度に法人税を納めているかも重要になる

繰戻還付は、災害損失そのものを国が補償する制度ではありません。

過去の所得に欠損金を繰り戻し、すでに納付した法人税について還付を受ける制度です。

したがって、過去に還付対象となる法人税を納付していることが重要になります。

災害によって1億円の損失が発生しても、過去に納付した法人税がなければ、同額の資金が還付されるわけではありません。

被害額だけでなく、過去の所得金額や法人税額も確認する必要があります。

通常の中間納付とは目的が違う

法人税の中間申告というと、年度途中で法人税を前払いする制度という印象があります。

実際、通常は前年度の法人税額などを基礎に中間納付を行うケースが多くあります。

しかし、災害時に仮決算を行う場合には、中間期間の実際の経営状況を税務に反映できます。

さらに一定の災害損失欠損金額が生じていれば、過去の法人税の繰戻還付を検討できる場合があります。

中間申告が単なる税金の前払い手続きではなく、災害時には資金確保にも関係することになります。

災害発生直後から決算を意識する

通常であれば、中間決算や年度決算が近づいてから税務処理を始める企業もあるでしょう。

しかし、災害時にはそれでは間に合わない可能性があります。

被災した商品を廃棄した後では、数量や状態を確認できません。

損壊した設備を撤去した後では、被害状況を写真に残せないこともあります。

災害損失欠損金額の繰戻還付を利用する可能性を考え、災害発生直後から被害記録を残しておくことが重要です。

税務制度が復旧スピードにも影響する

災害後の企業にとって最も重要なのは、事業をできるだけ早く再開することです。

そのためには資金が必要です。

損害保険金、金融機関からの融資、企業自身の手元資金などとともに、法人税の還付も資金確保の一つになり得ます。

中間申告で災害損失の繰戻還付を利用できれば、確定申告まで待つ場合より早く資金を確保できる可能性があります。

税務制度を知っているかどうかが、災害後の資金繰りにも影響することになります。

結論

災害損失欠損金額の繰戻還付には、一定の場合に仮決算による中間申告の段階でも還付を請求できるという特徴があります。

災害が事業年度の前半に発生した場合、確定申告まで待っていては還付を受けるまで長い時間がかかることがあります。

しかし企業が復旧資金を必要とするのは災害直後です。

中間申告で還付を請求できる仕組みには、この時間差を縮める意味があります。

ただし、中間期間が赤字だから自動的に還付されるわけではありません。

災害によって棚卸資産や固定資産などに生じた損失を把握し、通常の営業損失と区分し、保険金などによる補填についても確認する必要があります。

災害発生後は確定申告だけを見るのではなく、中間申告の段階で繰戻還付を利用できないかを早期に確認することが、復旧資金を確保するうえで重要です。

参考

税のしるべ 2026年9月21日 特集 災害発生 そのとき法人税務はどうなる? 災害に伴う支援と損失処理

法人税法 第80条

法人税法施行令 第155条の2

租税特別措置法 第66条の12

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