地震や豪雨などの災害では、建物が壊れるだけでなく、土地そのものに大きな被害が生じることがあります。
地震による地割れや地盤沈下、液状化、豪雨による崖崩れ、土砂の流入、浸水などです。
企業が所有する土地にこうした被害が発生すると、以前と同じ用途で使用することが難しくなり、土地の時価が大きく下落することがあります。
法人税では固定資産の評価損は原則として損金になりません。
しかし、災害によって著しく損傷したことなど一定の事実があり、それによって土地の時価が帳簿価額を下回った場合には、評価損を損金算入できる可能性があります。
具体的にどのような土地被害が問題になるのでしょうか。
地割れで土地の利用価値が低下する
大規模な地震では、土地に大きな亀裂が入ることがあります。
例えば工場の敷地に地割れが発生し、そのままでは大型機械や倉庫を安全に設置できなくなったとします。
土地を再び使用するには、大規模な地盤改良工事が必要になるかもしれません。
このような物理的な損傷によって土地の利用価値が低下し、その結果として時価が帳簿価額を下回れば、災害による評価損を検討することになります。
単に地割れがあるかどうかではなく、その地割れが土地の利用や市場価値にどの程度影響しているかが重要です。
地盤沈下で建物を建てにくくなる場合もある
地震などによって地盤沈下が発生することもあります。
例えば工場用地の一部が大きく沈下し、敷地全体に高低差が生じたとします。
そのままでは建物を安全に使用できず、土地を再利用するために造成工事や地盤改良が必要になることがあります。
土地自体は存在していても、従来と同じ状態では利用できません。
こうした事情が市場価値に反映され、土地の時価が大きく低下する可能性があります。
液状化でも土地の価値が変わる
地震の際には液状化が発生することがあります。
液状化とは、水分を多く含む地盤が地震の揺れによって一時的に液体のような状態になる現象です。
地盤が沈下したり、建物が傾いたり、道路や配管などに被害が発生したりすることがあります。
企業の所有地で液状化が発生し、将来も地盤改良などの対策が必要になるのであれば、土地の利用価値や市場価値に影響する可能性があります。
この場合も、液状化が発生したという事実だけではなく、それによって時価がどの程度下落したのかを確認する必要があります。
崖崩れでは土地の一部が使えなくなることもある
豪雨や地震によって崖崩れが発生するケースもあります。
例えば事業所の敷地の一部が崩落し、安全確保のためその部分を使用できなくなったとします。
さらに、再び崩落する危険があるため、擁壁工事など大規模な対策が必要になることもあります。
従来は敷地全体を事業に利用できたのに、災害後は一部しか利用できなくなれば、土地全体の価値にも影響する可能性があります。
土地の面積が変わっていなくても、実際に利用できる範囲や用途が変わることによって市場価値が低下することがあります。
土砂の流入も土地の価値に影響する
豪雨による土砂災害では、山や斜面から大量の土砂が事業用地へ流れ込むことがあります。
土地を再利用するためには、土砂を撤去し、地盤を整備しなければなりません。
場合によっては、今後も同じような災害が発生する危険性が意識され、その土地に対する市場の評価が変化することも考えられます。
単純に土砂撤去費用が発生したという問題だけではありません。
災害後に土地そのものの時価が帳簿価額を下回ったかどうかも確認する必要があります。
浸水しただけで評価損になるとは限らない
豪雨や河川の氾濫による浸水も重要です。
ただし、一時的に土地が浸水したからといって、直ちに評価損を計上できるわけではありません。
水が引いた後、特別な復旧工事をしなくても従来と同じように使用でき、土地の市場価値にもほとんど影響がなければ、評価損を計上する根拠は乏しくなります。
一方、浸水によって地盤が大きく損傷したり、周辺環境が著しく変化したりして、市場価値が低下した場合には事情が異なります。
重要なのは被災したという事実ではなく、その結果として土地の価値がどのように変化したのかです。
帳簿価額1億円の土地で考えてみる
具体例で考えてみましょう。
会社が帳簿価額1億円の工場用地を所有していたとします。
大規模な地震によって地割れと液状化が発生し、大規模な地盤改良をしなければ従来と同じように利用できなくなりました。
災害後の土地の時価を適切に評価したところ、7,000万円になったとします。
災害による著しい損傷と3,000万円の価値下落との因果関係が認められ、その他の要件も満たすのであれば、帳簿価額と時価との差額に達するまでの金額について評価損を検討することになります。
一方、同じ土地の時価が災害前からすでに7,000万円まで下落していたのであれば、話は変わります。
3,000万円の下落すべてを災害によるものとすることはできないからです。
災害前の時価も重要になる
災害後の時価だけを確認すればよいとは限りません。
災害と価格下落との因果関係を確認するには、災害前の土地の状態や市場価値も重要です。
例えば帳簿価額1億円、災害直前の時価8,000万円、災害後の時価6,000万円だったとします。
帳簿価額から見ると4,000万円下落しています。
しかし、そのうち2,000万円は災害前から生じていた一般的な価格下落です。
災害を理由とする評価損を検討する場合には、こうした事情を無視することはできません。
災害による下落と、それ以前からの市場要因による下落を区別する視点が必要です。
写真だけでなく時価の根拠も残す
土地の被害状況を写真や動画で記録することは重要です。
しかし、評価損を計上するのであれば、それだけでは十分とは限りません。
評価損は土地の時価が帳簿価額を下回ったことを前提とするため、時価の根拠も必要になります。
周辺の取引事例や不動産鑑定など、災害後の土地の価値を客観的に説明できる資料を確保することが重要です。
また、地盤調査の結果、復旧工事の見積書、自治体が公表した被災状況なども、災害と土地価値の低下との関係を説明する資料になり得ます。
復旧費用と評価損は分けて考える
土地が被災すると、土砂の撤去、地盤改良、擁壁の修復などさまざまな支出が発生します。
ここで注意したいのは、復旧のために支出した金額と土地の評価損は同じものではないという点です。
例えば地盤改良に2,000万円かかったからといって、土地の評価損が自動的に2,000万円になるわけではありません。
復旧費用は支出した費用の税務処理の問題です。
評価損は災害によって固定資産の価額が帳簿価額を下回った場合の評価の問題です。
両者を区別して検討する必要があります。
結論
地震や豪雨によって土地に地割れ、地盤沈下、液状化、崖崩れ、土砂の流入、浸水などが発生した場合、法人税上の評価損を検討できる可能性があります。
ただし、土地が被災しただけで評価損が認められるわけではありません。
災害による著しい損傷や所在地の状況の著しい変化などがあり、その結果として土地の時価が帳簿価額を下回ったことが必要です。
特に重要なのが、災害と価格下落との因果関係です。
災害前から生じていた一般的な地価下落まで、災害による評価損に含めることはできません。
土地の災害損失を考えるときには、被害状況を記録するとともに、災害前後の時価や価格下落の原因を客観的に説明できる資料を残すことが重要です。
参考
税のしるべ 2026年9月21日 特集 災害発生 そのとき法人税務はどうなる? 災害に伴う支援と損失処理
法人税法 第33条
法人税法施行令 第68条
法人税基本通達 9-1-3