地震や豪雨などの災害では、建物や設備だけでなく土地そのものが大きな被害を受けることがあります。
地震による地割れや地盤沈下、液状化、豪雨による崖崩れや土砂の流入、河川の氾濫による浸水などです。
こうした被害を受ければ、その土地を以前と同じように利用できなくなり、土地の価値が大きく下落することがあります。
企業が所有する土地の価値が帳簿価額を下回った場合、その差額を法人税の計算上、評価損として損金にできるのでしょうか。
固定資産の評価損は原則として損金になりませんが、災害など一定の事実が生じた場合には例外があります。
固定資産の値下がりだけでは損金にならない
企業が所有する土地について考えてみます。
10年前に1億円で購入した土地の現在の時価が8,000万円まで下落したとしても、原則として2,000万円を評価損として自由に損金算入することはできません。
法人税では、法人が固定資産について評価換えを行い、帳簿価額を減額した場合、その減額した部分の金額は原則として損金の額に算入できないこととされています。
土地価格は景気や不動産市況によって変動します。
単純な値下がりだけで損金を認めれば、企業が評価時期を選ぶことによって課税所得を調整できる可能性があります。
そのため、固定資産の評価損は限定された場合に認められる仕組みになっています。
災害による著しい損傷は例外になる
一方、通常の価格変動とは明らかに異なる事情によって資産価値が低下することがあります。
その代表例が災害です。
法人税では、固定資産について一定の事実が生じた場合、損金経理によって帳簿価額を減額すれば、一定の評価損を損金算入できる仕組みがあります。
その一つが、災害によって著しく損傷した場合です。
地震や豪雨によって土地そのものの状態が大きく変わった場合には、この規定の適用を検討することになります。
土地でも災害による損傷は起こる
建物や機械であれば、災害によって壊れたことが比較的分かりやすいでしょう。
一方、土地はなくならないため、災害による損傷というイメージを持ちにくいかもしれません。
しかし、土地にもさまざまな被害が発生します。
地震によって大きな地割れが発生したり、地盤が沈下したりすることがあります。
液状化によって地盤が不安定になることもあります。
豪雨では崖崩れが起きたり、大量の土砂が土地に流入したりすることがあります。
こうした被害によって従来の用途で使用することが難しくなれば、土地の市場価値にも影響します。
所在する場所の状況が著しく変化した場合もある
評価損を検討できるのは、資産そのものが直接損傷したケースだけではありません。
固定資産が所在する場所の状況が著しく変化した場合も、一定の要件のもとで評価損を検討できます。
例えば災害によって周辺の状況が大きく変わり、その土地の利用価値や市場価値が低下するようなケースです。
災害による土地の評価損を考える場合には、土地そのものの物理的な損傷だけでなく、所在地を取り巻く状況の変化にも目を向ける必要があります。
災害が起きただけでは評価損にならない
ここが最も重要なポイントです。
災害が発生し、土地が被害を受けたというだけで評価損を計上できるわけではありません。
災害による損傷などが原因となって、その固定資産の価額が帳簿価額を下回ったことが必要です。
つまり、災害と価値の下落との間に因果関係が求められます。
例えば帳簿価額1億円の土地が被災したとしても、被害が軽微で時価が1億円以上あるのであれば、評価損を計上する余地はありません。
災害という事実と、資産価値の低下という事実の両方を確認する必要があります。
一般的な地価下落とは区別する
土地の評価損では、価値が下がった原因を確認することが特に重要です。
例えば災害後に土地の時価が帳簿価額を下回っていたとしても、その値下がりが以前から続いていた一般的な不動産市況の悪化によるものかもしれません。
その場合、災害を理由とした評価損とは別の問題になります。
実際に過去の裁決でも、土地が1年以上遊休状態にあったという事実は認められたものの、土地価格が帳簿価額を下回った原因が遊休状態ではなく一般的な土地相場の下落だったことから、評価損が認められなかった事例があります。
評価損の要件となる事実と価格下落との因果関係が重要であることが分かります。
評価損は帳簿価額と時価との差額が基本になる
例えば帳簿価額1億円の土地が地震によって大きく損傷し、災害後の時価が6,000万円になったとします。
災害による損傷と4,000万円の価値下落との因果関係が認められ、その他の要件も満たすのであれば、帳簿価額と時価との差額に達するまでの金額について評価損を検討することになります。
評価損を自由な金額で計上できるわけではありません。
災害後の資産価値を適切に把握することが必要になります。
災害後の時価をどう把握するかが重要になる
固定資産について評価損を計上する場合の時価は、その固定資産が使用収益されるものとして、その時点で譲渡される場合に通常付される価額とされています。
土地の場合には、災害後の状態を反映した時価を把握する必要があります。
しかし、大規模災害の直後には不動産取引そのものが少なくなり、比較できる取引事例を見つけにくいことがあります。
被害の程度によって土地ごとの差も大きくなります。
そのため、必要に応じて不動産鑑定など客観的な資料を利用することも考えられます。
被害状況を写真などで残しておく
災害直後には、人命確保や事業再開が最優先になります。
しかし、土地の評価損を検討する可能性がある場合には、被害状況を可能な範囲で記録しておくことも重要です。
地割れ、地盤沈下、液状化、土砂流入などの状況を写真や動画で残します。
自治体などが作成した被害に関する資料、復旧工事の見積書や請求書なども保存しておくとよいでしょう。
後になって土地の時価が下落した原因を説明するとき、災害直後の記録が重要な証拠になる可能性があります。
結論
法人税では、固定資産の帳簿価額を企業の判断だけで引き下げ、その差額を評価損として損金算入することは原則として認められていません。
しかし、災害によって固定資産が著しく損傷した場合や、その固定資産が所在する場所の状況が著しく変化した場合などには、一定の要件を満たせば評価損を損金算入できる可能性があります。
土地についても、地割れ、地盤沈下、液状化、崖崩れ、土砂の流入、浸水などによって価値が低下することがあります。
ただし、災害が発生したという事実だけでは十分ではありません。
災害による損傷などが原因となって土地の時価が帳簿価額を下回ったという因果関係が必要です。
災害時の土地評価では、被害の有無だけでなく、その被害が資産価値をどれだけ低下させたのかを客観的に確認することが重要になります。
参考
税のしるべ 2026年9月21日 特集 災害発生 そのとき法人税務はどうなる? 災害に伴う支援と損失処理
法人税法 第33条
法人税法施行令 第68条
法人税基本通達 9-1-3