インボイス制度をきっかけに免税事業者から課税事業者になった小規模事業者の負担を軽減してきたのが2割特例です。
2割特例を利用すると、消費税の納税額を基本的に売上税額の2割に抑えることができます。
しかし、2割特例は2026年9月30日までの日の属する課税期間をもって終了します。
その後、一定の個人事業者について2027年分と2028年分に利用できるのが3割特例です。
名前はよく似ていますが、2割特例から3割特例へ移ることで納税額は増えます。一方、実際の仕入税額を細かく計算しなくてもよいという大きな特徴は引き継がれています。
売上税額の2割と3割
2割特例と3割特例の最も分かりやすい違いは、納付する消費税額です。
2割特例では、売上にかかる消費税額の8割を仕入控除税額とみなします。
そのため、納税額は残った2割となります。
これに対して3割特例では、売上にかかる消費税額の7割を仕入控除税額とみなします。
その結果、納税額は残った3割になります。
例えば、1年間の売上にかかる消費税額が100万円だったとします。
2割特例なら、100万円の8割である80万円を控除するため、納税額は20万円です。
3割特例では70万円を控除するため、納税額は30万円となります。
同じ売上税額でも、2割特例から3割特例へ移ることで納税額が10万円増えるわけです。
納税額がどれくらい増えるのか
2割から3割になると聞くと、納税額が1割増えるように感じるかもしれません。
しかし、実際にはそうではありません。
先ほどの例では、納税額は20万円から30万円になります。
増加額は10万円ですが、もともとの納税額20万円を基準にすると50パーセントの増加です。
売上税額が200万円なら、2割特例では40万円ですが、3割特例では60万円になります。
売上税額が300万円なら、60万円から90万円になります。
つまり、3割特例への移行によって納税額は2割特例の1.5倍になる計算です。
売上規模が大きい事業者ほど金額としての影響も大きくなるため、制度変更後の納税資金をあらかじめ考えておく必要があります。
元の記事でも、2割特例の終了によって、それまで2割特例を利用していた事業者の消費税納税額が増加すると説明されています。
仕入税額を計算しなくてよい仕組み
2割特例と3割特例には共通する大きな特徴があります。
それが、実際の仕入税額を一つずつ計算しなくても納税額を計算できることです。
通常の本則課税では、売上時に受け取った消費税から、仕入れや経費などで支払った消費税を差し引きます。
そのため、仕入れや経費に含まれる消費税を把握しなければなりません。
さらにインボイス制度では、取引相手がインボイス発行事業者であるかどうかによって、控除できる仕入税額が変わる場合があります。
元の記事でも、本則課税では仕入先がインボイス発行事業者かどうかを区別して集計する必要があり、事務負担が大きくなると説明されています。
2割特例では、こうした実際の仕入税額を基礎とせず、売上税額の8割を控除するものとして計算します。
3割特例でも基本的な考え方は同じです。
売上税額の7割を控除するものとして計算するため、納税額は売上税額の3割となります。
そのため、2割から3割へ負担割合は増えても、計算方法の簡便さは維持されます。
売上税額だけを把握すれば計算しやすい
例えば、売上税額が年間150万円だったとします。
2割特例なら、
150万円の2割で30万円
が基本的な納税額になります。
3割特例なら、
150万円の3割で45万円
となります。
本則課税のように、実際にいくら仕入れを行ったのか、経費としていくら消費税を支払ったのかを一つずつ積み上げて納税額を計算する仕組みとは異なります。
特にフリーランスなど、取引件数が多い小規模事業者にとって、消費税計算を簡素化できる意味は小さくありません。
元の記事でも、3割特例は事前の届出を必要とせず、申告書の所定欄に適用を受ける旨を記載することで利用できると説明されています。
2割特例から3割特例へ段階的に負担が増える
2割特例と3割特例の関係を見ると、インボイス制度導入後の負担を段階的に通常の制度へ近づけていく仕組みが見えてきます。
個人事業者の場合、2割特例は2026年分まで利用できます。
その後、一定の要件を満たす場合には、2027年分と2028年分について3割特例を利用できます。
したがって、
2026年分までは売上税額の2割
2027年分は売上税額の3割
2028年分も売上税額の3割
という流れになります。
2割特例が終了した瞬間に負担軽減措置をすべてなくすのではなく、個人事業者については3割特例という次の段階を設けているわけです。
3割特例は法人にはない
2割特例と3割特例には、対象者についても大きな違いがあります。
2割特例は、要件を満たせば個人事業者だけでなく法人も利用できます。
一方、3割特例は個人事業者に限定された制度です。
元の記事でも、3割特例は個人事業者限定の措置であり、法人は2割特例が終了した後、本則課税か簡易課税のいずれかによって仕入税額を計算する必要があると説明されています。
そのため、2割特例終了後の影響は個人事業者と法人で異なります。
個人事業者には3割特例という橋渡しがありますが、法人にはありません。
法人の場合は、2割特例終了後を見据えて、本則課税と簡易課税のどちらを利用するのかを検討することが重要になります。
3割特例終了後に何が起きるのか
3割特例も永久に続く制度ではありません。
利用できるのは2027年分と2028年分です。
したがって、2029年分になると3割特例は利用できなくなります。
そこで重要になるのが、その後の消費税の計算方法です。
基本的には、本則課税または簡易課税によって申告することになります。
本則課税では、実際の仕入税額を把握して納税額を計算します。
一方、簡易課税では、業種ごとに決められたみなし仕入率を使って納税額を計算します。
元の記事では、簡易課税制度によって仕入税額を計算できるのは、基準期間の課税売上高が5000万円以下である課税期間と説明されています。
つまり、2028年までは3割特例を利用できるからといって、その先を考えなくてもよいわけではありません。
業種によっては簡易課税の方が有利になる
さらに注意したいのが、3割特例が必ず最も有利とは限らないことです。
簡易課税では業種によってみなし仕入率が異なります。
元の記事では、主たる事業が卸売業でみなし仕入率が90パーセント、小売業で80パーセントとなる事業者などについて、3割特例より簡易課税制度を利用する方が有利になる場合があると説明されています。
例えば、みなし仕入率が90パーセントなら、売上税額の90パーセントを仕入税額として計算するため、単純化すると残る負担割合は10パーセントです。
3割特例の30パーセントより小さくなります。
そのため、3割特例を利用できるから自動的に選択するのではなく、自分の業種では簡易課税とどちらが有利なのかを比較することも重要です。
3割特例終了後を見据えて準備する
2割特例から3割特例への移行は、単なる税率の変更ではありません。
小規模な個人事業者が通常の消費税制度へ移っていく途中の段階と考えると分かりやすくなります。
2割特例では売上税額の2割を負担します。
3割特例では3割になります。
そして3割特例が終了すれば、本則課税や簡易課税による計算へ移行します。
そのため、2027年や2028年になってから考えるのではなく、売上や仕入れの状況、業種、将来の設備投資などを踏まえて、その後どの計算方法を利用するのかを考えておくことが重要です。
特に簡易課税では、実際に支払った仕入消費税額が納税額の計算上そのまま反映されないため、大規模な設備投資を予定している場合には注意が必要です。元の記事でも、設備投資を予定する事業者は実行時期を慎重に検討する必要があると指摘されています。
結論
2割特例と3割特例の最大の違いは、消費税の納税額です。
2割特例では売上税額の8割を仕入控除税額とみなすため、納税額は売上税額の2割です。
3割特例では7割を仕入控除税額とみなすため、納税額は売上税額の3割になります。
したがって、同じ売上税額で比較すると、3割特例の納税額は2割特例の1.5倍になります。
一方、実際の仕入税額を細かく計算しなくてもよいという簡便な仕組みは共通しています。
個人事業者については、2026年分までの2割特例から、2027年分と2028年分の3割特例へと段階的に負担が増えていきます。
そして2029年分以降は3割特例も利用できなくなり、本則課税や簡易課税などによる申告へ移行することになります。
2割特例から3割特例への変更は、単に納税額が2割から3割に増えるだけではありません。
インボイス制度導入時に設けられた負担軽減措置から、通常の消費税制度へ少しずつ移行していく過程と考えることが重要です。
参考
企業実務 2026年9月号 インボイス制度の2割特例終了に伴う実務対応