非上場株式の評価方法には、「類似業種比準価額方式」と並ぶ重要な方法として「純資産価額方式」があります。
前回ご紹介した類似業種比準価額方式は、同業種の上場企業と比較して株価を求める方法でした。
一方、純資産価額方式は、会社が保有する財産そのものに着目して株価を評価します。
言い換えれば、「もし会社を今すべて清算したら、一株当たりどれだけの価値があるのか」という考え方に近い評価方法です。
今回は、純資産価額方式の基本的な仕組みと、どのような会社で重視されるのかを解説します。
純資産とは何か
まず、「純資産」という言葉を整理しておきましょう。
会社には、
- 現金や預金
- 土地や建物
- 有価証券
- 売掛金
- 機械設備
など、多くの資産があります。
一方で、
- 借入金
- 買掛金
- 未払金
などの負債もあります。
純資産とは、
資産から負債を差し引いた会社の正味の財産
を意味します。
つまり、会社が本当に持っている財産の価値を表す数字です。
なぜ資産を重視するのか
会社によって価値の源泉は異なります。
例えば、
毎年大きな利益を生み出している会社では、利益を重視した評価が適しています。
一方で、
- 多額の現金を保有している会社
- 不動産を数多く所有している会社
- 投資有価証券を保有する資産管理会社
では、会社の価値は資産そのものに大きく左右されます。
このような会社では、利益だけを見るよりも、資産を基準に評価した方が実態に近い株価になります。
そこで採用されるのが純資産価額方式です。
帳簿価格ではなく時価で考える
純資産価額方式で重要なのは、
帳簿価格ではなく時価を基準に考える
という点です。
例えば、
何十年も前に購入した土地は、帳簿では安い金額になっていても、現在では大きく値上がりしていることがあります。
逆に、価値が下落している資産もあります。
税務では、こうした資産を現在の価値に置き換えながら会社全体の純資産を求め、その金額を基に株価を評価します。
講義資料でも、純資産価額方式では会社の資産・負債を時価ベースで把握し、会社の実態を反映した評価を行う考え方が示されています。
小会社で重視される理由
純資産価額方式は、特に小会社で重要になります。
小規模な会社では、
- オーナーが長年保有してきた土地
- 賃貸用不動産
- 多額の内部留保
- 現預金
などが会社価値の中心になっていることが少なくありません。
そのため、利益だけを比較するよりも、会社が実際に持っている財産を評価した方が、より実態に近い株価になります。
講義資料でも、小会社は純資産価額方式を基本として評価する仕組みが採用されています。
類似業種比準価額方式との違い
ここまで学んだ二つの評価方法を比べると、その違いがよく分かります。
類似業種比準価額方式は、
「将来どれだけ利益を生み出せる会社なのか」
という視点を重視します。
一方、純資産価額方式は、
「現在どれだけの財産を持っている会社なのか」
という視点を重視します。
つまり、
収益力を見る方法と、
財産を見る方法の違いといえます。
会社の実態に応じて、この二つを使い分けたり組み合わせたりすることで、より適正な株価を求める仕組みになっています。
不動産会社では評価額が高くなることもある
純資産価額方式では、不動産を多く保有する会社の評価額が高くなることがあります。
例えば、
創業時に購入した土地が大幅に値上がりしている場合、その含み益も株価に反映されることがあります。
経営者自身は「利益はそれほど出ていない会社」と考えていても、税務上は高い株価になることがあります。
そのため、相続や事業承継の直前になって初めて株価を計算し、高額な評価額に驚くケースも少なくありません。
日頃から自社の資産状況を把握しておくことが重要です。
事業承継では早めの確認が重要
純資産価額方式は、会社の資産が増えるほど評価額も高くなりやすい特徴があります。
そのため、
「まだ事業承継は先だから大丈夫」
と思っている間にも、自社株の評価額が上昇していることがあります。
特に、
- 不動産価格の上昇
- 利益の内部留保
- 投資資産の値上がり
などは、将来の相続税や贈与税に大きな影響を与える可能性があります。
事業承継を考える経営者であれば、一度は自社株の評価額を把握しておくことが望ましいでしょう。
結論
純資産価額方式とは、会社が保有する資産と負債を時価で評価し、その正味の財産を基に株価を算定する方法です。
利益よりも会社の財産そのものを重視する評価方法であり、特に資産を多く保有する会社や小会社では重要な役割を果たしています。
非上場株式の評価は、一つの方法だけで決まるものではありません。類似業種比準価額方式と純資産価額方式は、それぞれ異なる角度から会社の価値を測るものであり、両者を理解することで非上場株式評価の全体像が見えてきます。
次回は、「非上場株式を譲渡するとどんな税金がかかるのか」をテーマに、売買したときに生じる税務上の基本的な考え方について解説します。
参考
東京地方税理士会「非上場株式を譲渡・移転する場合の税務 自己株式を買取る場合の課税上の注意点」講義資料 江本尚浩税理士・東京国際大学非常勤講師