インボイス制度の2割特例が終了した後、一定の個人事業者については2027年分と2028年分の消費税で3割特例を利用できます。
3割特例を使えば、売上にかかる消費税額の7割を仕入控除税額とみなし、基本的に残りの3割を納付すればよいため、本則課税に比べて計算を簡素化できます。
ただし、個人事業者で売上が1000万円以下なら、誰でも利用できるわけではありません。
元の記事では、基準期間や特定期間の課税売上高等だけでなく、高額特定資産の仕入れ、相続、課税期間の短縮などについても適用条件が設けられていることが示されています。
3割特例を利用できるか判断するには、単純に現在の年間売上だけを見るのではなく、なぜ自分が課税事業者になっているのかまで確認する必要があります。
3割特例を使える個人事業者とは
3割特例は、2026年度税制改正によって設けられた個人事業者向けの負担軽減措置です。
2割特例を利用していた個人事業者についても、一定の条件を満たせば3割特例へ移行できます。
3割特例では、売上にかかる消費税額の7割を仕入控除税額とみなします。
例えば、売上にかかる消費税額が100万円なら、70万円を仕入控除税額とみなし、納税額は30万円となります。
しかも、2割特例と同じように、3割特例を利用するための事前の届出は必要ありません。
申告書の所定欄に3割特例の適用を受ける旨を記載することで利用できます。
ただし、その前提として一定の適用条件を満たしている必要があります。
基準期間とは何か
3割特例の対象になるかを判断するときに重要になる言葉が基準期間です。
元の記事では、基準期間について適用年の前々年と説明されています。
例えば、2027年に3割特例を利用する場合を考えてみます。
この場合、前々年にあたる2025年が基準期間になります。
2028年に利用するのであれば、2026年が基準期間です。
つまり、3割特例を利用したい年だけの売上を見るわけではありません。
過去の売上まで確認して適用できるか判断することになります。
この仕組みを知らないと、現在の売上が1000万円以下だから3割特例を使えるだろうと判断してしまう可能性があります。
特定期間とは何か
もう一つ確認する必要があるのが特定期間です。
元の記事では、特定期間について前年の1月から6月までとされています。
例えば2027年に3割特例を利用するのであれば、前年である2026年の1月から6月までが特定期間になります。
3割特例では、基準期間だけを確認すればよいわけではありません。
元の記事では、基準期間の課税売上高と特定期間の課税売上高等がいずれも1000万円以下であることが条件として示されています。
つまり、過去の年間売上と直近の一定期間の状況という二つの方向から確認する必要があるわけです。
1000万円基準とは何か
消費税では1000万円という金額が重要な基準になります。
3割特例についても、この1000万円基準が適用条件に関係しています。
例えば2027年分について考えると、基準期間となる2025年の課税売上高等を確認します。
さらに特定期間となる2026年1月から6月までについても確認します。
元の記事で示されている3割特例の条件では、これらがいずれも1000万円以下であることが求められています。
ここで重要なのは、単純に2027年の売上が1000万円以下かどうかだけで判断する制度ではないということです。
3割特例を使いたい年の売上が小さくても、過去の状況などによって適用できない場合があります。
反対に、現在の売上だけを見て判断するのではなく、制度上どの期間を確認するのかを理解する必要があります。
売上1000万円以下でも対象外になることがある
3割特例には、1000万円基準以外にも条件があります。
その代表例が、高額特定資産の仕入れなどによって課税事業者となっている場合です。
元の記事では、3割特例を適用する条件の一つとして、高額特定資産の仕入れ等によって課税事業者となる課税期間ではないことが示されています。
つまり、売上が小さい事業者だから必ず3割特例を使えるわけではありません。
消費税では、売上だけでなく、一定の資産を取得したことなどによって課税事業者として扱われる場合があります。
このようなケースでは、3割特例の対象から外れる可能性があります。
そのため、1000万円という数字だけで適用の可否を判断するのは危険です。
高額特定資産とは何か
元の記事では3割特例の適用条件として高額特定資産の仕入れ等が挙げられていますが、高額特定資産そのものについての詳しい定義や金額基準までは説明されていません。
今回の記事では元の記事を基礎としているため、ここでは、高額特定資産の仕入れ等によって課税事業者となる課税期間では3割特例を利用できない場合がある、という点を押さえておけばよいでしょう。
設備投資などを行った事業者については、自分がどの規定によって課税事業者になっているのかを確認することが重要になります。
単にインボイス発行事業者として登録したから課税事業者になったのか、それ以外の理由によって課税事業者になっているのかによって、3割特例の扱いが変わる可能性があるからです。
相続によって課税事業者になる場合にも注意する
3割特例の適用条件には、相続も関係します。
元の記事では、相続による納税義務の免除の特例によって課税事業者となる課税期間ではないことが条件として挙げられています。
例えば、事業を営んでいた人が亡くなり、その事業を相続によって引き継いだ場合などには、通常とは異なる消費税の判定が関係することがあります。
この場合にも、単純に自分の売上が1000万円以下だから3割特例を利用できるとは限りません。
どのような理由で消費税の納税義務が生じているのかを確認する必要があります。
課税期間を短縮している場合にも利用できない
さらに元の記事では、課税期間の短縮を行っていないことも3割特例の条件として挙げられています。
通常、個人事業者の消費税の課税期間は1月1日から12月31日までです。
しかし、一定の手続きを行うことで課税期間を短縮している場合があります。
3割特例では、このようなケースについても適用制限があります。
したがって、自分の消費税申告が通常の1年間を課税期間として行われているのかという点も確認しておく必要があります。
なぜ条件が細かく決められているのか
3割特例は、通常の消費税計算そのものを変更する制度ではありません。
インボイス制度への対応によって負担が増えた小規模な個人事業者を対象とする経過的な負担軽減措置です。
そのため、どのような理由で課税事業者になった場合でも一律に利用できる制度にはなっていません。
基準期間や特定期間の売上、高額特定資産の仕入れ、相続、課税期間の短縮などを確認する必要があるのはそのためです。
元の記事でも、3割特例への移行については事業者の特性を問わず計算そのものは手間がかからない一方、適用にあたっては一定の条件を満たす必要があると整理されています。
計算が簡単であることと、適用判定が簡単であることは別の問題なのです。
2027年と2028年でそれぞれ確認する
3割特例は2027年分と2028年分の2年間に利用できる制度です。
ここで注意したいのは、基準期間が毎年変わることです。
2027年分なら前々年の2025年、2028年分なら前々年の2026年を確認することになります。
特定期間についても、それぞれ前年の状況を確認することになります。
したがって、2027年に3割特例を利用できたからといって、何も確認せず2028年も同じように利用できると考えるべきではありません。
それぞれの年について適用条件を確認することが重要です。
結論
3割特例は、2割特例終了後の2027年分と2028年分について、一定の個人事業者の消費税負担を軽減する制度です。
売上にかかる消費税額の7割を仕入控除税額とみなし、基本的に残る3割を納付するため、本則課税に比べて計算を簡素化できます。
しかし、個人事業者で売上が1000万円以下なら、必ず利用できるわけではありません。
基準期間となる前々年や、特定期間となる前年の一定期間について確認する必要があります。
さらに、高額特定資産の仕入れ等によって課税事業者になっている場合、相続に関する特例によって課税事業者になっている場合、課税期間を短縮している場合などには、3割特例を利用できないことがあります。
大切なのは、現在の売上だけで判断しないことです。
3割特例は計算方法そのものは簡単ですが、適用できるかどうかの判定には複数の条件があります。
自分がなぜ課税事業者になっているのか、どの期間の売上を確認する必要があるのかまで含めて考えることが、3割特例を正しく利用するためのポイントになります。
参考
企業実務 2026年9月号 インボイス制度の2割特例終了に伴う実務対応