働く場所や時間を自由にすれば、社員は自分の生活に合わせて働きやすくなります。
しかし、会社側から見ると新しい問題が生まれます。
社員が何時から働いているのか。
何時に仕事を終えたのか。
勤務途中で仕事を抜けているのか。
実際に何時間働いたのか。
全員が同じオフィスに集まり、同じ時間帯に働いていれば比較的把握しやすかった情報が、柔軟な働き方では見えにくくなります。
元記事で紹介されているカオナビでは、ハイブリッド勤務やスイッチワーク、フレックスプラス20時間、スーパーフレックスという複数の働き方を用意しています。
社員の自由度が高まる一方、勤怠管理は複雑になります。
そこで同社では、自社の勤怠システムを活用して管理しています。
柔軟な働き方を支えているのは、自由な制度だけではありません。
その裏側にある勤怠管理も重要なのです。
勤怠管理とは何か
勤怠管理とは、社員がいつ、どのように勤務したのかを会社が把握することです。
元記事では、カオナビが自社の勤怠システムを使い、社員ごとに異なる働き方を管理していることが紹介されています。
従来型の勤務であれば、働き方は比較的単純です。
決められた時刻に出社する。
決められた時刻まで働く。
仕事が終われば退社する。
多くの社員が同じような勤務パターンで働いていれば、勤務状況も把握しやすくなります。
ところが、社員ごとに勤務場所や勤務時間が違う会社ではそうはいきません。
誰がいつ働いているのかを、それぞれの勤務実態に合わせて把握する必要があります。
始業と終業の記録が重要になる
柔軟な働き方でも、仕事を始めた時刻と終えた時刻を把握することは重要です。
特にスーパーフレックスでは、社員によって働く時間帯が変わります。
元記事で紹介されているカオナビのスーパーフレックスではコアタイムを廃止し、朝5時から夜10時までの間で任意の時間帯を選択して働けます。
ある社員は朝早くから働くかもしれません。
別の社員は遅い時間から仕事を始めるかもしれません。
全員が同じ時刻に仕事を開始するわけではありません。
そのため、会社が一律の勤務時間を前提として管理することが難しくなります。
働く時間を社員自身が選択できるからこそ、実際に何時から何時まで働いたのかを記録する必要性が高まります。
中抜け時間の管理も必要になる
さらに勤怠管理を複雑にするのが、勤務途中で仕事を抜けられる働き方です。
カオナビでは、スイッチワークという仕組みを導入しています。
勤務時間中でも、家事や育児などのために一時的に仕事を抜けることができます。
元記事では、仕事をしている状態と仕事を抜けている状態を切り替え、社員自身が勤務状況を入力する仕組みが紹介されています。
たとえば朝から2時間働いた後、家庭の用事で仕事を抜ける。
その後、再び仕事を始める。
この場合、単純に始業時刻から終業時刻までを勤務時間とすることはできません。
途中に仕事をしていない時間があるからです。
柔軟な働き方では、仕事を始めた時刻と終えた時刻だけではなく、途中の勤務状況まで把握する必要が出てきます。
社員自身が勤務状況を入力する
働く場所や時間がバラバラになると、上司が社員一人ひとりの勤務状況を目で見て確認することは難しくなります。
そこで重要になるのが、社員自身による情報の入力です。
元記事では、カオナビでは社員が自分の勤務スケジュールや勤務状況を勤怠システムに入力していることが紹介されています。
また、社員間のコミュニケーションは主にチャットアプリを利用し、仕事を抜けていることや休暇の取得予定日などについても社員が自発的に発信しています。
柔軟な働き方では、会社が社員を常に監視することで勤務状況を把握するのではありません。
社員自身が自分の状況を記録し、周囲にも必要な情報を共有することによって制度を運用しています。
自由度が高い働き方ほど、社員側にも自分の勤務状況を明確にすることが求められるわけです。
リモートワークで勤怠管理はさらに重要になる
出社勤務であれば、社員が会社にいるかどうかを周囲から確認できます。
しかし、リモートワークではそうはいきません。
元記事では、カオナビの全社員のリモートワーク率は78.7%と紹介されています。
多くの社員がオフィス以外の場所でも働いています。
自宅でパソコンを開いているからといって、実際に勤務しているのかどうかを会社が外から確認することはできません。
反対に、仕事を終えた後も働き続けている社員がいても、周囲が気づかない可能性があります。
そのため、リモートワークでは社員を目で見ることではなく、勤務記録によって実態を把握することが重要になります。
月単位の勤務時間も社員によって変わる
カオナビでは、一日の勤務時間帯だけでなく、月間の勤務時間についても柔軟性を持たせています。
元記事で紹介されているフレックスプラス20時間では、月間の所定労働時間をプラスマイナス20時間の幅で調整できます。
これによって、社員は仕事量や生活の状況などに合わせて勤務時間を調整しやすくなります。
一方、社員ごとの勤務時間が異なれば、勤怠管理はさらに複雑になります。
全員について同じ月間勤務時間を前提にして管理することができないからです。
誰がどのような勤務スケジュールを選択しているのか。
実際にどの程度働いているのか。
こうした情報を社員ごとに管理する必要があります。
元記事では、具体的な時間の精算方法などまでは説明されていませんが、複数の働き方によって複雑になる勤怠管理を自社システムで対応していることが紹介されています。
自由な働き方ほど働きすぎにも注意する
勤怠管理には、社員が決められた時間だけ働いていることを確認するという役割だけがあるわけではありません。
働きすぎを把握するためにも重要です。
元記事では、カオナビの2025年度の一日平均勤務時間は8時間46分で、最近は勤務時間がやや長くなる傾向があると紹介されています。
さらに、柔軟な勤務制度によって仕事と生活の境界が曖昧になり、深夜勤務が増える健康リスクも懸念されています。
働く時間を社員自身が選べることには大きなメリットがあります。
しかし、いつでも働ける環境では、仕事を終える時刻も曖昧になりやすくなります。
会社から社員の姿が見えないからこそ、勤務時間というデータを把握する意味が大きくなります。
勤怠管理と健康管理はつながっている
元記事では、健康リスクへの対応として、パルスチェックなどによって社員の健康面を早期に確認していることも紹介されています。
ここから分かるのは、勤怠管理と健康管理を切り離して考えることが難しくなっているということです。
勤務時間が長くなっていないか。
遅い時間の勤務が増えていないか。
社員の状態に変化が起きていないか。
勤務実態を把握しながら、社員の健康状態についても確認していく必要があります。
柔軟な勤務制度の目的は、社員を長時間働かせることではありません。
社員が自分に合った環境で高いパフォーマンスを発揮できるようにすることです。
そのためには、自由度を高めるだけでなく、その働き方が社員に過度な負担を与えていないかを確認する仕組みも必要になります。
自由と管理は反対ではない
働き方を自由にすることと、会社が勤務時間を管理することは、一見すると反対のように見えます。
しかし、実際にはそうではありません。
会社が一律に働く場所や時間を決めないからこそ、実際に社員がどのように働いているのかを正確に把握する必要があります。
カオナビの事例でも、社員ごとに異なる働き方を自社の勤怠システムによって管理しています。
自由に働けるから管理しないのではありません。
自由に働けるようにするために、管理の仕組みを整えるという考え方です。
柔軟な働き方が広がれば広がるほど、勤怠管理の重要性も高まると考えられます。
結論
勤怠管理とは、社員がいつ、どのように勤務したのかを把握するための仕組みです。
全員が同じ場所で同じ時間に働くのであれば、勤務状況は比較的分かりやすくなります。
しかし、カオナビのようにハイブリッド勤務やスイッチワーク、フレックスプラス20時間、スーパーフレックスなどを組み合わせると、社員ごとに働く場所や時間が異なります。
始業時刻と終業時刻だけではなく、勤務途中で仕事を抜けた時間なども把握する必要があります。
さらに、元記事では平均勤務時間が最近やや長くなる傾向や、深夜勤務による健康リスクも指摘されています。
柔軟な働き方では、社員の姿が会社から見えにくくなるからこそ、勤務時間を正確に把握することが重要になります。
自由な働き方と勤怠管理は対立するものではありません。
むしろ、社員が安心して自由な働き方を選択できるようにするために、正確な勤怠管理が必要です。
働く場所と時間の自由度が高くなるほど、その自由を支える管理の仕組みも重要になるといえるでしょう。
参考
企業実務 2026年9月号 場所と時間に縛られない働き方で生産性向上を目指す