日本企業の親子上場は大きく減少しています。
日本経済新聞によると、上場子会社は現在139社となり、1年前から2割弱減りました。
2007年3月期には417社ありましたから、ピーク時の3分の1まで減ったことになります。
企業統治改革、少数株主保護、アクティビストからの要求、上場維持コストなど、複数の要因が親子上場の見直しを促しています。
さらに2027年からは、一般株主による取締役選任議案への賛否も見えやすくなります。
このまま親子上場はなくなっていくのでしょうか。
417社から139社まで減った
親子上場の減少を考えるうえで、まず確認したいのがその規模です。
2007年3月期には417社の上場子会社がありました。
現在は139社です。
約20年間で3分の1まで減ったことになります。
一時的な動きというより、日本企業の資本政策が長期的に変化していると見ることができます。
親会社と子会社がともに上場することの合理性が、以前より厳しく問われるようになったからです。
第1の転換点は2000年代後半だった
親子上場見直しの最初の大きな流れは、2000年代後半から2010年代前半に起きました。
東京証券取引所は2007年、親子上場について資本政策として必ずしも望ましいとはいえないとの考え方を示しました。
親会社が強い立場を利用して子会社の経営に過度に介入したり、親会社の利益を優先したりすれば、子会社の一般株主が不利益を受ける可能性があるためです。
海外投資家からも親子上場への問題提起が行われるようになりました。
企業統治という視点から親子上場を見る動きが本格化した時期です。
大企業も親子上場を見直してきた
実際に大企業でも上場子会社の整理が進みました。
日立製作所は2009年、日立情報システムズなど上場子会社5社をTOBによって完全子会社化すると発表しました。
トヨタ自動車も2011年、関東自動車工業やトヨタ車体の完全子会社化を進めました。
こうした動きは単なる上場廃止ではありません。
企業グループの中にある事業、人材、資金、技術などをどのように配置するのかという資本政策の見直しです。
親子上場解消は企業グループ再編の一つの手段になってきました。
第2の転換点は2021年だった
親子上場の見直しをさらに進めたのが、2021年のコーポレートガバナンス・コード改訂です。
支配株主を持つ上場会社について、少数株主保護が一段と重視されるようになりました。
上場子会社では、独立社外取締役の確保や、利益相反を審議する独立性の高い特別委員会などが重要になります。
親会社から派遣された取締役で人数をそろえればよいわけではありません。
親会社から実質的に独立した立場で一般株主の利益にも配慮できる企業統治体制が求められます。
親子上場を維持するハードルが上がった
企業統治を強化すること自体は、一般株主を守るために重要です。
一方、企業側から見ると親子上場を維持する負担は大きくなります。
独立社外取締役を探す必要があります。
利益相反の大きな取引では特別委員会を設けることがあります。
監査、情報開示、IR、株主総会など通常の上場維持業務も必要です。
子会社を上場させておくメリットがそれほど大きくなければ、完全子会社化して上場を廃止するという選択肢が浮上します。
完全子会社化にもコストがある
ただし、親子上場を解消すれば必ず企業価値が高まるわけではありません。
完全子会社化するためには、一般株主が持つ株式を取得する必要があります。
子会社の時価総額が大きければ、数千億円規模の買収資金が必要になることも考えられます。
借入金を使えば利息負担が増えます。
さらに、子会社が上場することで得ていた知名度、信用力、独自の資金調達手段などを失う可能性もあります。
親会社は上場維持コストと完全子会社化コストを比較する必要があります。
すべての親子上場が不合理とは限らない
親子上場が減っているからといって、残っているすべての親子上場に問題があるという意味ではありません。
子会社が独自に資金調達する必要性が高い場合があります。
上場会社としての知名度が採用や営業に役立つこともあります。
親会社とは異なる事業を行い、独立した経営を続けることに合理性がある会社も考えられます。
重要なのは、親子上場という形そのものではありません。
なぜその資本関係を維持する必要があるのかを企業が説明できるかどうかです。
アクティビストからの圧力も続く
親子上場企業には、アクティビストからも資本関係の見直しを求める声があります。
日本経済新聞の記事では、大阪製鉄の株主総会でストラテジックキャピタルが資本関係の見直しにつながる株主提案を行った事例が紹介されています。
提案は可決されませんでしたが、賛成率は63%に達しました。
企業統治改革だけでなく、株主側からも親子上場の合理性を問い直す動きが続いていることが分かります。
企業側は単に制度上の条件を満たすだけでなく、株主に対して資本政策の合理性を説明する必要があります。
2027年が次の転換点になる可能性がある
今後注目されるのが2027年です。
東京証券取引所のルール変更により、取締役選任議案について一般株主の賛否状況がこれまで以上に見えやすくなる予定です。
親会社の大きな議決権によって全体の賛成率が高く見えていても、一般株主だけでは支持率が低い取締役が明らかになる可能性があります。
親子上場企業にとって、一般株主からどの程度信頼されているのかが一段と可視化されることになります。
これが親子上場を維持するかどうかを改めて考えるきっかけになる可能性があります。
親子上場はゼロになるとは限らない
親子上場は今後も減少する可能性があります。
しかし、最終的にゼロになると決まっているわけではありません。
親子上場を維持する経済的な合理性があり、少数株主を十分に保護できる企業統治体制を整えられるのであれば、上場を続ける選択肢もあります。
反対に、上場のメリットが小さく、企業統治や上場維持の負担が大きいのであれば、完全子会社化を選ぶ合理性が高まります。
企業ごとに最適な答えは異なります。
問われているのは資本政策そのもの
親子上場の問題を「上場を続けるか、廃止するか」だけで考えると本質を見失います。
本当に問われているのは、企業グループの資本をどのように使うのかという問題です。
子会社を独立した上場会社として成長させるのか。
完全子会社化してグループ経営を一体化するのか。
あるいは親会社が保有株式を売却して子会社の独立性を高めるのか。
どの方法を選ぶとしても、その資本関係が企業価値向上につながる理由を説明する必要があります。
結論
日本の親子上場は、2007年3月期の417社から現在の139社まで減少しました。
背景には、少数株主保護の強化、企業統治改革、独立社外取締役や特別委員会の重要性の高まり、アクティビストからの要求、上場維持コストなどがあります。
さらに2027年から一般株主の賛否が見えやすくなれば、親子上場を維持する合理性はこれまで以上に問われる可能性があります。
一方、親子上場そのものが直ちに問題というわけではありません。
独自の資金調達や知名度、経営の独立性など、子会社上場に合理的な理由がある企業も考えられます。
重要なのは、親子上場を続けることでも、完全子会社化することでもありません。
なぜその資本構成が親会社、子会社、一般株主にとって合理的なのかを説明できることです。
417社から139社への減少は、日本企業が単に上場子会社を減らしているという話ではありません。
企業グループの資本を誰のために、どのように使うのかという考え方そのものが変化していることを示しています。
参考
日本経済新聞 2026年9月21日 朝刊 親子上場、狭まる包囲網